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世界最強の魔女、始めました 〜私だけ『攻略サイト』を見れる世界で自由に生きます〜(Web版)  作者: 坂木持丸
第11章 地底王国に行ってみた

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99話 おすそわけしてみた②


 そんなこんなで、王都の知り合いたちへのおすそわけも済み――。

 次は、光の女神ラフィエールのお供えにやって来た。



「――我が使徒ローナ・ハーミットよ。よく聞くのです。世界にふたたび危機が迫っ……」



「あっ、ラフィエールさん。今回のお供え物は、“ばーべきゅぅ”とうちで採れた野菜……あっ、ごめんなさい。声がかぶって――」



「――うほっ、肉ですか! いいですねぇ!」



 というわけで、さっそくいつものお茶会タイムとなった。


「かぁ~~ッ! 肉! 食わずにはいられないっ! あと、この“焼き肉のタレ”はよき! とてもよきです! 焼き肉ニンニク増し増ししか勝たん! キンキンに冷えたビール飲みたい! 豪遊したい!」


 ラフィエールはいつも甘いものばかり食べている印象があったし、肉は重いかなとも思ったが……野菜よりも肉のほうが好評だった。


「……っ! ち、違うのです、我が使徒ローナよ……よく聞くのです。肉とニンニクが嫌いな女子なんて存在しません。あと甘いものばかり食べてると、反動でしょっぱい系を体が求めるのです」


「なるほど」


「ふぅ、ただ最近、脂っこいものを食べてると胃腸が拒否反応を示すんですよね。無性にさっぱりした野菜も食べたくなって――んッ!? な、なんか今、変な味の草があったんですが」


「あっ、それは“ぱくちー”ですね。“カメムシ草”とも呼ばれていて、カメムシのにおいと同じ成分が含まれてるそうです」


「もうそれ、カメムシの進化前かなにかなのでは?」


「ん……あれ? でも、“ぱくちー”はアンチエイジングに効果があって、若い女神様たちに大人気って聞いてたんですが――」



「――がつがつむしゃむしゃぁあァアアッ!!」



「わぁっ! やっぱり、“ぱくちー”は大人気なんだ!」


 やはり、インターネットに書かれていることに間違いはなかった。


 そんなこんなで、お供えも済み。

 そろそろお告げの制限時間というところで、ラフィエールがふと思い出したように尋ねてきた。


「そういえば……最近、テーラを見ませんでした? さっさと地の女神の仕事に戻ってもらいたいんですが」


「あっ、テーラさんなら、今は“肘をつかさどる女神”になったそうです」


「……なにがあったら、そうなるんですか?」


「えっと、最近、“恐怖の館テラーハウス”をクリアしたんですが、そのときにテーラさんの肘が覚醒して」


「いや……えっ!? あのダンジョンクリアしたの!? またひとつ、わたくしの知らないところで世界の危機が解決されてる!?」


「あっ、そういえば、最初に『世界の危機』って言ってましたが、もしかしてその件でしたか?」


「……へ? あっ……そうだった!? じ、実は、地底王国ドンゴワで――魔人が――神龍が――やべっ、またお告げの制限時間――あぁあっ、なにはともあれ――次のお供え物は、とりあえずビールで――――」


 そんなこんなで、光の女神ラフィエールへのお供えも無事に終わり、次のお供え物の注文も聞いたところで。


「よし! それじゃあ、次は……ファストトラベル――エルフの隠れ里!」


 というわけで、さっそくエルフの隠れ里へと転移したのだった。



         ◇



「――ぽまえたち、“まよねぇず”の準備はよいか?」


「「「おけまる水産!!」」」


「では……いただきマンモス!」


「「「――ごちそうサマンサァァアッ!!」」」


 ローナがエルフの隠れ里にやって来ると、さっそく宴になってしまった。

 というか、エルフたちがとりあえず騒ぎたいだけな気もするが。


「ところで、あの……エルナちゃん? このジョッキに入っているものは?」


「キンキンに冷えた“まよねぇず”です!」


「なぜ、“まよねぇず”がジョッキに?」


「? “まよねぇず”は、飲み物ですよ?」


「なるほど」


 いつの間にか、エルフの食文化に“まよねぇず”が浸蝕していた。


 それはともかく、テーラハウスの庭で採れた野菜を、“ばーべきゅぅ”しながら食べていくエルフたち。


「ほぅ、野菜は生でばかり食べていたが、こういう食べ方もあるのだな。それに見たことのない草だらけで、わらわの口の中が大草原不可避」


「この“ばーべきゅぅまよ”は、“うまC”ですね! ジャングル生えます!」


「あっ、ちなみに、“まよねぇず”と“けちゃっぷ”というのを1対1でまぜて、お好みで塩・砂糖・レモン汁などを入れると、“おーろらソース”というものができるそうです!」


「……っ!? きゅ、救世主様、これは優勝です! “まよ”を超えた可能性が“微レ存”!」


「――む? “まよねぇず”に不純物はいらないのだが? “まよ”の白は、神聖なる色なのだが?」


「……はい? お母様、今なんと?」


 静かに、ばちばちと火花を散らす母娘。


 ちなみに、この火種は……やがて『“まよねぇず”原理主義者』vs『“おーろらソース”学会』vs『“ばーべきゅぅまよ”大好きクラブ』という三つ巴の抗争へと発展するのだが、それはまた別のお話。


 ちなみに、エルフの植物学者のザリチェはというと。


「……はぁ、まったく騒がしいですわね。エルフというのは本来、もっと優雅でノーブルな種族ですのに――らふっ!? メロンを2つ合成すると種を作れる!? 全自動収穫畑!? カミナリーフでも回路とやらが作れるんですの!? 草食ってる場合じゃねぇですわぁッ!!」


 と、大騒ぎしながら柵を飛び越えて、どこかへ行ってしまった。


(よし、これでエルフのみんなにもおすそわけできたし、残るは――)



         ◇



 というわけで、ローナが最後にやって来たのは、海底王国アトランだった。

 ここを後回しにしたのは、ついでに“聖地”という開拓地の手伝いもしようと思ったためだ。


 以前から“聖地”の開拓アドバイザーであるザリチェに『時間があるときに手伝ってほしいですわぁ』と依頼されていたこともあり、先にエルフの隠れ里に寄って土や種を運んできたわけだが――。


「わっ、“聖地”がすごい発展してる!」


 地平線まで続いている広大な水たまりの中、島のように浮かんでいる開拓地。

 そこは、1か月前とは比べ物にならないほど、家や畑が増えていた。


 どうやら、こちらに移住した水竜族も多いらしく、ずいぶんと活気も出ており……。

 と、そんな水竜族の住民の中に、見知った人物を発見した。



「…………げっ。ローナ・ハーミット」



「あっ、マリリリーンさんだ」


「……“リ”が多いわよ」


 浮遊する巨大クラゲに乗った、深海色の魔女。


 ――水月の魔女マリリーン・ティア・ブルームーン。


 ローナがここに来たときには、水竜族に復讐しようとしていた彼女だが……。

 最近はいろいろと心境の変化もあったのか、水竜族と人間との架け橋のような立ち位置に収まったらしい。


「こんにちは――じゃなかった。くららら~☆」


「それは挨拶じゃないんだけど。というか、すっごいぐいぐい来るわね、こいつ……」


「………………」


「いや、なんの無言よ」


「あ、いえ……たしかに、あまり気軽に話すほどの仲じゃなかったなと。まだ数回しか会話してないですし。『くららら~☆』とか変なこと言ってごめんなさい……」


「あたしとの距離感で反復横跳びするのやめて?」


 それはさておき。



「ま、とりあえず、あなたが来ることは、()()()()……いえ、エルフのザリチェから通信水晶で連絡を受けてるわ」



「ザリちー?」


「つ……土とか種とか、いろいろ運んできてくれたんですってね。それと、作物の自動収穫機を発明したとか? ま、一応、この“聖地”の責任者のひとりとして、感謝してあげないこともないわ」


「ザリちー?」


「か、海王とルル姫も、すぐに来るんじゃないかしら。今は『げぼくのエサとってくる!』とか言って行方不明になってるけど」


「ザリちー?」


「う、うっさいわね……っ! あなたの被害者同士、毎晩、愚痴り合ってたら仲良くなったのよ! 悪い!?」


「わ、私の被害者……」


 いつの間にか、“ローナ被害者の会”が結成されていた。


「というかね、水竜族のやつらは……みんな、脳みそが魚レベルなのよ! 町に近づけば釣り針に引っかかりそうになるし、釣りエサのために壺いっぱいの金銀財宝をわたそうとするし! この国でまともなのが、この国滅ぼそうとしてたあたしだけってバカじゃないの!? この状態で人間と交流させるとか正気!?」


「ご、ごめんなさい?」


「そもそも、海王もルル姫も、あたしを放置して魚とりに行くとかなに考えてるのよ! ちょっとは危機感持ちなさいよ! ――って、なんであたしがそこまで心配しなきゃいけないのよ!? い、いえ、べつに心配してるわけじゃないんだけどねっ!」


(あっ、“つんでれ”だ! “つんでれ”は実在したんだ!)


「他にもね――」


 と、ぶつぶつ愚痴りだすマリリーン。

 とはいえ、なんだかんだ言いつつも、彼女は以前よりも生き生きしている気がした。

 復讐に取り憑かれていたときの悪役笑いもなくなり、雰囲気もだいぶやわらかくなった気がする。


「えへへ」


「な、なによ? いきなり笑いだして」


「マリーレンさん、なんだか丸くなりましたね! さては“でれ期”ってやつですね!」


「……さっきから喧嘩売ってるの?」


 そんなこんなで、マリリーンと仲良く交流しつつ。

 アイテムボックスから土や種を出したり、マリリーンに全自動作物収穫装置について教えたり……と、“聖地”の開拓を手伝っていたところで。



「「――げぼく~っ♪」」



 と、“聖地”の入口のほうから、水竜族の姫ルル×2の声が聞こえてきた。



というわけで、次回あたりから本格的に新章スタートします。

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― 新着の感想 ―
[一言] エリミナさんが入ってない被害者の会なんてニセモノだっっ
[一言] そんな何回も名前間違えたら喧嘩売ってると思われても仕方ない
[良い点] 全員集合したときの絵面くっそカオスそう。 封印されしエクスディオスのインパクトにつられて同一人物が二人いるのを見逃しそう。
感想一覧
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