初めての仕事
「これから文化祭の出し物について決めるんだけど今年は去年とちがって一つのクラスにつき出し物を二つするんだ。」
そう話し始めたのは四宮 葵くん。男子からも女子からも信頼があるのでみんなに周知させたりといったことがとても上手だ。
また、声がよく通るので進行を進んでやってくれるのはありがたいと思うのだが……
「なんで出し物を二つ?」
「喫茶店とお化け屋敷とかってこと?」
説明不足だよね……みんなざわつき始めちゃったし……
「今年って開校40周年だから、記念にって始めるらしくて舞台での出し物を一つ、クラスでの出し物を一つ決めなくてはいけなくて……何かやりたいことがある人はいますか?」
普段よりは大きい声を出せたと思うがみんな納得してくれたかが不安。
「葵?舞台ではシンデレラ、クラスではメイド喫茶になったんだけど……大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だよ、ありがとう」
ボーっとしてしまっていた。つい、反射的に答えてしまったが、メイド喫茶か……みんなが楽しめそうなら良いかな。
「それで今、役割りを決めているんだけど誰から決める?」
誰からと聞かれて普通なら主役のシンデレラからかもしれない。
しかし、このクラスの様子を見る限り王子役から決めた方がスムーズに決まるだろう。きっとなるのは推薦で……
「王子役から決めたいと思います。立候補も推薦もありです。やってくれる人はいませんか?」
「はい!四宮くんを推薦したいです!」
予想通りの発言をしてくれたのは四宮くんのファンクラブ、会長の女の子だ。
王子役の四宮くんを見たいがためにシンデレラに決まったような気もするが、確かではないので何も言えない。
「他の人はいない?いなくて、四宮くんが良ければ王子役は決まるけど」
そう言い終わる前にクラスのあちこちから拍手が起こった。女子はどこか嬉しそうに顔を見合わせていて、男子は大変な役は逃れられた、とでも言い出しそうな顔だった。
「四宮くん、じゃあ決まりで大丈夫?いやならば、また考え直すけど……」
「大丈夫だよ、やらせてもらえると嬉しいな」
そう陽夜と四宮くんが話すと拍手は自然と止み、話し声もなくなった。何も言わなくても皆んなが静かになってしまう。美男美女すごいと思う。
「次にシンデレラだけどやってくれる人いる?主役だから他の人より練習時間が多いけど」
少し脅すように話してしまったかなと思いつつ、四宮くんの時は話してなかったなと反省していた。
どこからか「四宮様と隣に並ぶなんて恐れ多い」や、「部活が」「バイトが」と呟いている人が多かった。そんな中とあるこがすっと手を挙げた。
「推薦になってしまうかもしれないですが村雨さんはどうですか?」
「えっ、私?……葵、変わってくれない?王子とシンデレラの次に複雑なセリフのある魔法使いはやるから……」
陽夜が嫌なら無理は言わないが、正直陽夜のドレス姿を見たかったと思うのも、魔法使いの複雑なセリフをしてくれるのもありがたいと思う。
魔法使いは出番は少ないものの魔法の呪文的なセリフを言ったり動きが他と比べて複雑だったりする。
「陽夜が良いなら変わるよ?時間はあるし……」
「ということで良いですか?シンデレラが葵で、魔法使いが私、村雨が担当でも」
そう陽夜が言い終わると拍手が起こった。
王子役とシンデレラ、魔法使いが決まったため残りの役はスムーズに決まった。
「今日の話し合いをまとめると衣装などの材料は実行委員が買ってきて作る、ということで、解散」
と四宮くんが話すと次々に席を立ち帰りの用意を始めた。
「俺らは買いに行く日付けを決めないとね。一番近いのは今週末だけど、予定は大丈夫?」
「私は平気だよ」
「私も!」
全員の予定の入っていなかった今週末、駅に集合して近くのショッピングモールに行くことに決まった。
同じ日の帰り道、陽夜が突然想像をしなかったことを言い始めた。
「シンデレラの役、変わってくれてありがとう」
「大丈夫だよ!でも陽夜の方がドレスは似合いそうだなと思ったけど」
「そう?私は別にやっても良いかなと思ったんだけど……台本を書いてくれた子に借りて最後まで読んでみたの。葵は途中までしか読んでなかったよね?」
「うん、魔法使いが出てくる辺りまでしか……」
「最後にシンデレラと王子のキスシーンがあって……本当にするにしても振りにしても、四宮くんではなくて蒼井さんだったらな、と思ったらやりたくなくなっちゃって……本当にごめんね」
「……キスシーンか……まぁ大丈夫だよ!きっと振りだと思うから!」
「ごめんね……」
大丈夫だと言ったが未だに陽夜は申し訳なさそうにしている。
それにしてもキスシーンか……振りだとは思うが今から緊張してきた。
前回に続き、今回もまた何か起こりそうな気がする……
連投のようになってしまいすみません、
そして今回も読んでいただきありがとうございます。
四宮君と葵、陽夜の三人の関係が近いうちに動き始めるかと思われます。
次回も読んでいただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。