本心
このお話も最後の方に少しいじめに関する事がかかれています。苦手な方は飛ばしていただけると幸いです。
ゆっくり目を開けると真っ白天井が見え、辺りを見回すと白で統一されたベッドや壁、薄い水色のカーテンが見えた。
……保健室か、そう呟くと奥から物音がした。
「四宮さん、気がついた?何があったのかはわからないけど四宮くんが連れてきてくれてたの。後でお礼でも言っておいてね。」
落ち着いた女性の声が聞こえ、窓の外を見ると夕焼けが広がっていた。
「腕、怪我しているかもしれないからこの後病院に行った方が良いと思うよ?」
そう言うと私の荷物を持って近づいてきた。お礼を伝えてから荷物を受け取り、保健室を出ると四宮くんが居た。
「保健室まで連れてきてれたみたいで、ありがとうございます」
そう言って通り過ぎようとした途端に腕を掴まれた。
「待って」
「痛っ……」
「あっ、ごめん……」
終始無言が続いた。お互い向き合っていたが目線だけは合わせられなかった。
「四宮さん、怪我……大丈夫?」
距離を置いた話し方だが今はその優しさが有り難かった。
「あっ、大丈夫です……ありがとうございました。ではまた」
そう言って振り向き歩き出すと背後から声が聞こえてきた。
「あの男子達は今、説教されてるから。しばらくは被害は無いと思う。なんであんな風になったのかはわからないけど……」
そして少し迷いつつも振り返り「ありがとう」と言うと聞こえたのかどうかは分からないが、反対方向に向かって歩いていた。
しかし、「あんな風になったのか」というのは私がいじめられている理由なのか。
それとも男子達が手を出して来たことか。どのことなのだろう。もうすでに、四宮くんは居ないので確かめようがない。
どっちにしても、もう私には関係ない。
────────────────────
〈四宮 葵 (男)目線〉
「緊張した……」
四宮さんと別れてからしばらく歩くと廊下に倒れこんでしまった。誰もいなくなった廊下に自分の声だけが響いていた。「大丈夫って何がだよ……」そう呟くとそれと一緒に、ため息をついてしまった。四宮さんは「大丈夫」と言っていたが少しも大丈夫そうには見えなかった。
なにより、手が痛むのか時々手を押さえ足取りはフラフラとしていた。
四宮さんの関係はクラスメートということだ。四宮さんは今年のクラスが同じになった時に初めて互いを認識したと思っているかもしれないが実のところを言うと違う。
普段は話さないが、同じ名前ということで入学当初から知っていた。
それに新入生代表として挨拶を行っていて、はっきりとしていながらも透き通るような声はとても印象的だった。窓の合間から日があたり、長く綺麗な髪を揺らしながら壇上を降りて行く様子に目が釘付けになった。
一段一段とゆっくり降りて行く姿は一目惚れするのには十分な時間だった。
入学式終了後、クラスのメンバーを改めて見たが、残念ながら同じクラスではなかった。あれほど綺麗な子なら目立つだろう、と思ったがそもそも階数が違うため関わる機会を持てずにいた。
クラスに慣れ、しばらくたったある日とある噂を聞いた。
「氷のクイーン」という二つ名が四宮さんに付いているということだ。
同様の時期に自分も「光の王子」と呼ばれるようになった。四宮さんと対で呼ばれることは嬉しかった。
そして、高校二年生でのクラス替えで奇跡が起きた。あの「四宮 葵」さんと同じクラスだったのだ。
名簿を見た瞬間に叫びたくなるくらいだった。しかし、いきなり叫ぶのはおかしい人になってしまうので堪えていたがニヤつきが止まらなかった。
そして大きな転機が訪れた。
久しぶりに駅まで買い物に行った帰りに四宮さんと会ったのだ。向こうも一人だったということもあり、途中まだだが一緒に帰ることが出来た。
しかし自分から誘ったにもかかわらず、何も話せない時間が続いた。
そのようなことになったにもかかわらず、四宮さんは話しかけてくれ、別れる時には笑顔で「ではまた明日、学校で」と言ってくれた。その場を離れる時の四宮さんは静かに長く綺麗な髪を揺らしていた。
今までは見るだけで関わることは全く無かったが、関わるようになり今まで以上に四宮さんに惹かれていくのが分かった。
しかし、次の日に悲劇が起きた。四宮さんのことを家まで送った事でいじめに発展したのだ。
四宮さんといつも一緒に居た村雨さんもその日は休んでいたようで、四宮さんに誰も手を差し伸べなかった。
情けないことに自分もその一人だった。どこからか「まさに『氷のクイーン』じゃん。自業自得でしょ、『孤独の氷のクイーン』とか笑えるんだけど」という話し声まで聞こえた。
結局は何も出来ず、いじめの傍観者になったのだ。
自分の好きな女子がいじめられていて、止めに入ることも出来ない以上に情けないことはないだろう。助けを呼べないくらい辛い思いをしていたのに。
しかし、日直で体育倉庫を訪れた時にその日初めて四宮さんの声を聞いた。
散々教室で助けることのなかった自分に「助けて」と言ってきたのだ。情けないことに開けた瞬間「お取り込み中だったかな」と言って逃げようとしていた心にその言葉が胸に突き刺さった。
周りを見ると何人もの男子高校生らしき人が転がって居た。そして四宮さんはそのうちの一人に襟を触れられていた。またもや逃げてしまいそうになったがずっと耳に四宮さんの「助けて」という声が繰り返し聞こえていた。
そして気がついた時には動いており、男子高校生らしき人達は地面に伏していた。
足には人を蹴ったのであろう感触がまだ残っていた。その後気を失ってしまった四宮さんを抱き上げ保健室に連れて行った。
保健の先生に始めは怪しい目で見られたもののきちんと手当てをし、荷物を用意してくれていた。
四宮さんが起きてから少しでも話せたらと思い廊下で待っていた。しばらくすると四宮さんがやってきてお礼を伝えてきた。
そしてそのまま帰ろうとしていたが、何も考えずに引き止めてしまった。相変わらず気の利いた言葉はかけられず「しばらく被害は無いと思う」という責任のない言葉も言ってしまった。それでも四宮さんはお礼を言った。
引き止めた時に触れた四宮さんの手は細くか弱く見えた。その時に改めて思い知らされた。
弱く繊細で触れたら折れてしまいそうなくらいの彼女に手を差し伸べる事さえ出来なかったのかと。
それと同時に彼女を守ると決めた。
クラスメイトとして、出来れば恋人として守りたいと……
最後まで読んでいただきありがとうございます。
前回の投稿より間が空いてしまいました。
次回の投稿は今回と同様に間が空いてしまうかもしれません。次回も読んでいただけると幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




