第26話:魔法の練習だよ?
背もたれのない状態でマリーにもたれ掛かられていた僕は、やがて腹筋の限界を感じた。
さりげなく体を倒し、ベッドに寝転がる体勢に変えて、添い寝をするように背中を優しく叩いていく。するとマリーからは嗚咽の声が薄れていき、次第にすやすやと穏やかな寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃったみたい」
泣き疲れたんだろう。
わざわざ寝巻きに着替えなきゃいけない訳じゃないし、今日はこのまま寝かせといてあげよう。
「さてシルビア。なんで同じ部屋にしたか、分かるよね?」
僕はそう言いながらベッドから立ち上がった。
「えっ?あっ………その………」
シルビアは頬を紅潮させ、言葉に詰まっている。
僕はシルビアの方へと近づいた。
「なんでだと思う?」
小声で言いながら、また一歩近づく。
シルビアは俯いてぷるぷると震えていた。
「え………え、え、えっち、な、こと………するん………ですよね………?」
彼女は合っているか確かめるように、おそるおそる上目遣いで聞いてきた。
にやり。
「ふーん。そうなんだー。僕はただ、魔法の練習に付き合ってもらおうと思ってただけなのに。シルビアは、えっちなことをされると思ってたんだ」
シルビアの目の前まで近づいていた僕は、彼女の耳に囁くように言った。
「えっ。あ………うぅ………」
セクハラたーのしーいなー
「ごめん、ごめん。嘘だよ」
さぁ魔法の練習を始めよう。
シルビアはまだ顔を上気させている。
今なら言いなりだ。
まずはぷにぷにの触手を掴ませた。
これは水の魔法だし、僕の手が触手になった訳じゃないから、掴まれるとどうなるか、実験しておきたかったんだ。掴まれたのが分かるのかとか、動かせるのかとか、知りたいことはいくつもあった。
「なるほど、掴まれた感触はない、と。あとは液体だから抜け出そうと思えば、抜け出せるのか………」
続いてシルビアの体の後ろに触手を持っていく。
視界が遮られていても操れるのか実験だ。
「視界は関係なくイメージ通りに操れる、と」
最後に、体の後ろで掴んでもらった。
掴まれたのを知らない体で触手を動かそうとすると、どうなるのか。
「裏で掴まれていると触手が伸びる、と」
ふぅ。実験終了。
………悪戯したくなっちゃった。
僕は2種類の粘液を同時に操れるか確認する。即ちぷにぷにの触手にぬるぬるのローションを纏わせたのだ。
「ふふっ、体洗ってあげるね」
僕はそう言ってシルビアをぬるぬるにしていく。だがすぐにローションが足りなくなった。どうすれば………そうか!触手をホース状にして手元の水の玉からローションを先端に送ればいいんだ!
「ひゃう!ご、ご主人さまぁ、つめたいですぅ」
そして遂に触手を服の中へと侵入させていった。脱がせはしない。僕は服を着せたまま体を洗ってみせる!………意外と難しい!
「そうか………服の中で体を這うように操るには練習が必要だな」
全身をくまなく這わせて練習する。
「あっ、そこはっ、んっんん」
「ただの魔法の練習なのに、シルビアはえっちな子だなぁ」
僕はまたしても囁くように言った。
ちなみに完璧に這うように操れるようになったのは、シルビアの服が濡れてぴっしりと肌に張り付いた所から、ボディラインを意識し始めた時だね。
「んっあぁっ………ご、ごしゅじんしゃまぁ」
「だめだよ。シルビア、声抑えて。マリーが起きちゃうでしょ」
ガタンッ
ふと音の方へ視線を向けると、マリーの様子が変わっていた。掛け布団を頭からかぶり、微かに震えている。寒かったのかな。
「たぶん、寝返り打って、足を壁にぶつけちゃったんだろうね。まだ寝てるようだから大丈夫だよ。………まぁでも今日の練習はこのぐらいにしとこうか」
僕は改めてシルビアの方へと向き直る。
月明かりに照らされて浮かび上がった彼女の肢体は、乱れた着衣から垣間見えた肌が、艶やかに輝きを放っていた。火照った表情で荒々しく呼吸を繰り返す様は、なんとも官能的な雰囲気を醸し出している。
………体を洗ってただけなのに。
シルビアは腰を抜かしていたようで、まだ動けそうにない。僕は彼女の粘性を解除して、ただの水で濡れている状態に戻した。ほんと、便利。
「シルビアたちの服は全部こっちの鞄に入ってるから自由に管理してね。あと桶に水入れとくからマリーが起きたら使ってもいいって教えてあげてね」
僕は、上気した顔で頷く彼女を放置して自分の体を拭く。
風呂入りたいなぁ。そう言えばクローゼットも欲しいし、日に日に家を買いたい欲求が募ってくる。
「じゃおやすみ。僕、朝弱いからまだ寝てたら起こしてね」
「ご主人様、朝ですよ!」
朝起きると、2人は既に起きていて服も着替えているようだった。そして2人とも顔が赤く、伏し目がちに目を反らしている。
シルビアについては完全に昨夜のことが原因だとしても、マリーの顔が赤いのはどうしてだろうか?
そうか、きっと泣き顔を見られたからだな。マリーは14歳だと言うし、15歳で成人するこの世界ではまだ子供だ。そういう年頃の子なら子供扱いを嫌がるからな。大人に見られたいのに、泣いてるときに子供扱いされたから、正気に戻った今恥ずかしさが押し寄せているんだろう。
「よしよし。泣き顔も可愛かったから安心しな」
僕はそう言ってマリーの頭を撫でた。まぁだからといって子供扱いをやめる気にはならないからね。
するとマリーは顔をさらに赤く染めて僕の胸をポカポカと叩いてきた。
「あははっ、いたい、いたいってー」
この程度全然痛くな………
ちょ、まじで、まじで痛いって!
だんだん力強くなってるって!
「ごめん!ごめんて!」
「ふんっ!ご主人様のバーカ!」
ふぅ、対応をミスったか………まさか武力行使されるとは思わなかった………マリーには優しくしよう。
なんにせよ良かった。元気はあるみたいだ。




