第14話:ポーション
「デイジー、薬師ギルドに行こう!」
冒険者ギルドの扉から出た途端、近くで待っていたデイジーの元へ駆け寄って、そう言った。
「えっえぇ?随分と早かったですけど、売れなかったんですか?」
「いや、絡まれたから逃げてきた。」
「そ、そうですか…じゃあ案内しますね。」
案内された薬師ギルドでは驚くほどスムーズに買い取りが行われた。
ポーションを選んでいる客はいても、買い取りを目的に来た客はいなかったからだ。
あの蕾──ホヨウ花と言うらしい──は粘液で桶にくっついていたので桶ごと売り払ったのだが、どうやら粘液に希少な価値があるらしく5万ゴールドで買い取って貰えた。
差し出された現金に、財布もどうにかしなければいけないな、と思いながら仕方なくジーンズのポケットにしまって薬師ギルドを後にした。
「昼食はここでいいですか?」
もちろん他の選択肢など知らない僕はデイジーの提案に賛同し、大衆食堂のような店に入った。
メニューを見た感じ米はなさそうだったので、彼女の頼んだものと同じのを注文した。
料理が運ばれてくるのを待つ間、先程疑問に思ったことを聞いてみる。
「ねぇ薬師ギルドにポーションが売ってたけど、一本500ゴールドだったよね?そんなに高くないと思うんだけど、どうして≪ポーション生成≫だと“遊んで暮らせる”の?」
僕は以前聞いた≪ポーション生成≫が当たりだという話を思い出していた。
物価は分からないが、この店のメニューを見た限りだと、1食1000ゴールドもあれば足りる程度なのだ。
現に頼んだ料理は800ゴールドである。
ならば1本500ゴールドのポーションでも≪ポーション生成≫は儲かるのか気になったのだ。
「あれは薬師ギルドの人が作ったポーションで、スキルで作ったポーションとは使い勝手が違うんですよ。」
どうやら別物だったらしい。
彼女から聞いた話はこうだ。
薬師ギルドのポーションは、治癒力を高めるもので、傷の治りが速くなる。
一方的、スキルで作ったポーションは効果が凄まじく、一瞬で傷が塞がるため冒険者の必需品となっているらしい。
ゆえに価格も高騰し、作れば作った分だけ儲かるそうだ。
「スキルで作ったポーションを10本に薄めると同じぐらいの効果になるって言われてますね。」
「じゃあ中身にそんなに大差はないってこと?単純に濃度の差なの?」
「そうですね。薬師ギルドの方は薬草から作っていて、≪ポーション生成≫は“成分創造”で産み出して、“成分配合”で操るって聞きました。なので成分が凝縮されてるんじゃないですか?詳しくは分かりませんけど。」
“成分配合”…なんだか持ってた気がする…
ならば産み出すことはできないが、僕も薬草からなら効果の高いポーションが作れるのではないだろうか…?
「それに部分欠損が直せる秘薬も作れるらしいですよ。あまり出回ってないから本当かどうかは知りませんけど。あーあ、私も≪ポーション生成≫だったらなぁー。」
そんな薬を作れるなら誰もが憧れるのも仕方がないと言えるだろう。
「デイジーは2つ目のスキルはどうだったの?」
「ありませんでした…。」
うなだれるデイジー。
2つ持っている方が稀らしいのだが、2つ持っていた身としては、返す言葉に気を使って黙ってしまう。
そんな時、言葉に詰まった僕を助けるかのように料理が運ばれてきた。
それから料理を堪能した後、鞄と着替えを買いに行った。
魔法の鞄は高かったので、着替えが入るぐらいの普通の安い鞄を購入すると、夕暮れ時になっていた。
デイジーの紹介してくれた宿屋は朝食付き一泊2500ゴールドで、夕食をつけると3000ゴールドだった。
残金は4万ゴールドを切った程度なので、これから必要なものを買い揃えていくには、やはり明日から金を稼ぐ手段を得なければいけなかった。
夕食を終えて部屋に戻り、ベッドの上に座ってぼーっとする。
テレビもなにもない部屋で長かった1日を思い出す。
異世界にきてから2日目。
今日もいろんな事があって疲れた。
その時、コンコンッ、と扉をノックされた。
「入ってもいいですか?」
僕の部屋にデイジーがやってきた。




