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一歩前進

8人はお菓子とジュースを持って祠にいた。あの後、全員の家を回ってかき集めてきたのだ。その中で新たな事実が判明した。優子が親の知り合いに貰ったというクッキーが食べられたのだ。

つまり自分のお小遣いで買った物でなくても食べる事が出来るということが判明したのだ。ノートや鉛筆など親に買って貰った物でも持ち出せることも分かった。つまり所有権さえあれば手に取れるのである。

またゴミ箱に捨てられていたペットボトルも持ち出せた。これは誰にも所有権が無い物なら8人の物に出来るということを示唆している。


「さて、今回のことは結構色々な事を僕たちに教えてくれている。」

みんなを前に尊氏が説明を始める。

「まず食べ物のことだ。コンビニの弁当は食べられなかったけど水は飲むことが出来た。なぜだ?水だってタダじゃない。店が水道料金を払っているんだ。つまり店に所有権があるはずなんだ。でも飲めた。僕が思うにこれは店が一般に無料で開放しているからだと思う。これは僕らの考えるところの所有権がないということになっているんだと思う。」

「ウチのご飯は偽者に所有権があるから食べれなかったのかなぁ。でもそれだとお菓子が食べれた理由がわかんなくなっちゃうか。」

「いや、それは時間軸で説明できると思う。お菓子は僕たちが幽霊化する前に各自が買った物だ。だから所有権が偽者でなく僕らにあったのかもしれない。ご飯は僕らが幽霊化した後に作られた物だから駄目だったと推測すれば辻褄が合う。」

「おおっ、名推理だぜダカジー。俺もその説に乗った!」

「また、優子のクッキーもこの説で説明できる。クッキーは貰った時点で優子に所有権が発生したんだ。つまり自分の金で買う買わないではなく、幽霊化前に自分のものだったかどうかが判断基準なんだと思う。」


「それって食べ物以外でも当てはまるのかい?」

それまで黙って聞いていた武士が質問した。

「これを見てくれ。これは僕の部屋から持ち出した僕が買って貰ったノートとペンだ。後、これはゴミ箱に入っていたカラのペットボトル。どちらもここまで持ち出せた。ペンとノートは僕に所有権がある。例え買って貰ったものでもね。これは優子のクッキーと同じことだと思う。そしてこのペットボトルは母が飲んだものだ。母はこのジュースが好きなんだ。ほぼ毎日飲んでいる。だからこれは母の所有物ともいえる。でも持ってこれた。何故だろう?因みに中身の入っているやつも持ち出したけど家を出た途端消えちゃったよ。」

「ゴミとして捨てられた時点で尊氏のお母さんの所有権が消滅したって言うことかしら?」

「うん、僕もそう思う。中身のあるやつが消えたのがその根拠だ。」

「おおっ、そうなら虫たちが俺にまとわり付いてくるのも説明できるじゃん!あいつら誰のものでもないからな!」

翔太の説明にみんなが笑う。


「つまり公共物として無料で提供されているものなら俺たちも使えるということなんだ。多分ね。これはおいおい試してみよう。」

「公共物って具体的にはどんなやつ?」

「公園の水道。学校の水道。役場の水道。スーパーの試食品。」

「うわっ、最後のだけが魅力的だ。」

「となるとペットの飯も犬猫に所有権があるから食えないのか。」

「げっ、嫌なこというなよ大地。それは最後の最後だ。」


「ねぇ、廃棄されたものなら手に取れるなら私アテがあるんだけど・・。」

優子が小さな声でみんなに言う。自分で言っておきながら何かとっても嫌そうだ。

「えっ、なになになに?量はあるの?おいしいの?」

「実はコンビニのお弁当って売れ残りは廃棄処分しなくちゃならないのよ。これが結構毎日でちゃって売り上げのロスになってるみたいなの。パパが何時も悩んでいたわ。あれならお店の所有権は消滅してるんじゃないかしら・・。」

優子の提案にみなが黙り込む。本来なら飛び付きたいところだが、廃棄物と聞いて躊躇しているのだ。


「それってぐちゃぐちゃになってないの?」

食欲に負けて竜馬が聞く。

「ええ、場所によっては浮浪者がゴミ箱を荒らすから食べられないように中身を出して捨てるところもあるらしいけどウチではそんなことはしていないみたい。」

「おおっ!さすがは優子さまのお父上さまだ!徳が高いぜ!今から行って貰ってこようぜ!」

翔太が小躍りして立ち上がった。

「翔太、コンビニの期限切れは大抵午前0時よ。今はもう回収車が持って行っちゃったわよ。」

「へろへろ~、ぬか喜びかよ~。だがこれで決まった!今夜はコンビニのゴミ箱の前で待機だ!お客のみなさん!お嬢の店の弁当を買うなよ!」

ぱこん。

「くーっ、冗談だってば。でも1個くらいはあるよね?」

「もしそれが実現できればある程度の食料は確保できるな。試す価値はあると思う。」

「そうね、きれい事は言ってられないもんね。」

桃子も腹を決めたようだ。

「うーっ、言うんじゃなかったかしら。パパに叱られそう・・。」

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