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幽霊化

「もう一度試す!」

尊氏がみんなに宣言した。

「いや待てよ、失敗したら相手を交通加害者にしちゃうんだぞ。別の方法を考えよう。」

武士がもっともな意見を言い尊氏を押し止める。

「そもそも、人だけじゃなくトラックまで通過しちゃうなんてどうゆうことなんだ?アスファルトは踏み抜けないのに。」

「石だって拾えるわ。」


「通り抜けと存在の無視が焦点だと思う。でも実はどちらも同じことの別の面なのかもしれない。」

「武士、難しいこと言うなよ。もちっと簡単に頼むぜ。」

「トラックの通り抜けも澪たちの無視や体のめり込みも同じことだと言ったのさ。つまり澪たちやトラックの運ちゃんにとってあの時、俺たちは存在していなかったんだ。だから無視する。いや、認識していないんだから無視ではないな。その結果が通り抜け、相互作用の無反応だ。」

「幽霊化・・。俺たち死んじゃったのかい?」

「お前は落ちたから可能性があるが、俺たちは死んでねぇよ。」

「でも、私たちお互いは触れるわ。石や草だって触れるし、どこが境なの?」

「それは追々調べよう。もしかしたら今すぐ元に戻って何だったんだ?てことになるかもしれないしね。パニックだけは駄目だよ。トラックは桃子たちを轢けなかったけど竜馬は落ちてコブをこさえたからな。絶対安全とは言い切れない。」

「どうする?学校にもどるか?それとも祠に留まった方がいいのか?」

「大通りに出てもう一度人のすり抜けを確認しよう。後、止まっている車が触れるかも知りたい。」

「かっ、鏡に映るかも確認したいわ。」

「何それ?学校の怪談?七不思議?」

「吸血鬼伝説よ。またくそんなことも知らないの?」

吸血鬼は実態があったと思うが動揺している優子に突っ込んでも笑い話にはならないと大地は反論を諦めた。


8人は大通りまで歩き、コンビニの駐車場で立ち止まった。

「止まっている車は触れるな。」

「俺たちって自動ドアが開くのかな?」

「すり抜けられれば開かなくても関係ないでしょう。」

「あっ、そうか、そうだね。」

尊氏が、コンビニから出てくる人たちの前に立ち塞がった。結果は惨敗である。出て来た人はなんの抵抗もなく尊氏を通り過ぎて行く。3回試して今度はコンビニの壁抜けを試みた。こちらは駄目だった。壁もガラスも抜けられない。試しに自動ドアの前に立ったら認識されてドアは開いた。ぴんぽ~んというチャイムも鳴った。しかし、店内の人はそれを気にする様子はない。店員すら顔を向けなかった。パンとジュースをレジに出しても店員は対応しない。それどころか後から来た客が品物をレジに置いた途端、尊氏が置いたパンとジュースは掻き消えてしまった。尊氏はふらふらしながらみんなの下に戻る。

「見ていたかい?」

「ああっ、パンが消えたな。」

「なんでドアが開いたのにみんな気付かないんだ?音だって鳴ったんだぜ?」


その時、一台の車に客が乗り込みエンジンをかけた。

「試すか。」

そう言うと尊氏はその車の前に立ち塞がる。手はボンネットの上だ。ちゃんと触れている。みんなもその光景を見守った。だが車が走り出した途端にため息が漏れる。車は尊氏をすり抜けて走り去ってしまった。尊氏は無言で次の車を試す。今度はボンネットに乗っかった。そして車上でジャンプしてぐらぐらに車を揺らす。しかし、車の持ち主らしき人は気にせずドアノブに手を伸ばした。その瞬間、車上で暴れていた尊氏の体がすとんと落ちボンネットの中に埋まった。

「エンジンも掛けていないのに・・。」

尊氏が唖然として呟く。そんな尊氏を気にすることなく車は走り去っていった。

「意味が分かんないわ!どうして人が乗っていない自動車は触れて人が乗った途端すり抜けるの?何なの!どうして!」

優子がヒステリックに叫ぶ。その優子の肩を押さえながら武士が宥めた。

「確かに分からないことだらけだ。でも大丈夫、きっと元に戻れるさ。」

いつもの優子なら根拠が薄いと一喝しそうだが、今度ばかりは声も出なかった。それ程不安なのだろう。

「桃ちゃん、私たちどうなっちゃったの・・。」

未来が桃子にしがみつきながら聞く。だが桃子は返事ができなかった。


「はい、みなさん!これより世紀の大マジックショーの始まりです。上手くいったらご喝采。それではガラス割りショーの始まりです!」

竜馬の声にみんなが振り向く。そこにはこぶし大の石を持った竜馬がいた。そしてその石を思いっきりコンビニのガラスに投げつけた。ビシッ!という音と共に見事ガラス全体にヒビが入る。次の瞬間、ガラスは粉々になって砕け散った。砕けたガラスは大きな音と共に店内の床に散乱する。

「ヒャッホー!これで気付かなかったらお前ら全員ノンプレキャラだ!」

竜馬が小躍りながら店内を覗く。だがこれ程の惨事にも関わらず店内の誰もその現場を見ようとしない。割れたガラスの1枚横で立ち読みしているアンチャンですら無視だ。

「あれ?みなさん無視ですか?店員さん、ガラスが割れましたよ~。怒んないんですか~?オーナーにバイト代からさっぴかれますよ~。」

軽いノリだが言葉に元気はない。予想していたのだろう。竜馬はしょぼんとしてみんなのところに戻ってきた。


「竜馬、あなた血が出ているわ。」

桃子に指摘されて初めて竜馬は飛んできたガラスの破片で腕を切っていたことを知る。

「あれぇ~、なんで俺は血が出て、店の中のアンチャンは無事なの?不公平じゃない?」

傷自体は大したものではない。暫く押さえておけば止まるだろう。未来がポケットティッシュを差し出た。

「サンキュー、未来。・・びっくりさせちゃったか?ごめんな。」

竜馬の行動は現状を再確認させるものでしかなかった。それゆえ、みんなの口は重い。


「みんな見てくれ。」

武士の言葉に全員がコンビニの割れた窓を見る。しかし、そこには最早割れたガラスはなく、元に戻っていた。

「どうゆう・・、こと?」

「多分、僕たちが目を離した隙に修正されたんだと思う。もしくは僕たちだけが勝手にガラスが割れたと思い込んでいたか。」

武士の説明に尊氏は考え込んだ。思い込み・・。なんなんだろう、どうしてこうなっちゃのか。なんでみんな気付いてくれないんだ。


音は聞こえる。いつも通りだ。でもこちらの声は相手に届かない。物には触れる。動かす事だって出来た。でもたちまち修正される。周りの人間は物が動いた事さえ気付いていない。


石を投げてガラスを割っても目を離すと直っている。僕たち以外には割れたことすら分かっていない。でも割れたガラスで切った傷は残った。これは祟りなのか?僕がみんなを誘ったからこんなことになったのか?あの祠ではなく川向こうの貝塚にいっていればこんなことにならなかったのか?


尊氏はリーダーの責任からなのだろうか、ぐるぐると答えの出ない問い掛けを自分に問い続けた。

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