あらら、いきなり新展開?
そして何事もなかったかのように夏休みは終わった。
8人はいつものように学校へ通う。
8人?いや、教室にあの子供たちは7人しかいない。
大地、翔太、竜馬、尊氏、桃子、未来、優子。
おかしい、全員いるじゃないか。なのになんで8人と思っていたんだろう。思い違いか?しかし、記憶は7人で納得しているが心が8人いたと叫んでいる。それは7人の子供たちも一緒らしい。夏休み明け初日の放課後、教室に残ってこの違和感を話し合っていた。
「なぁ、桃子。俺たちって7人で幽霊化したんだよな?」
「そうよ。そして一人も欠けずに戻ってきたわ。」
「でも何かしっくりしないんだけど。俺たち8人じゃなかったか?」
「それは私も感じているけど、何度思い返しても8人じゃないわ。」
「そうなんだよなぁ、でも何か違う気がするんだよ。」
「タカジー、そういえば俺たち神社でゆうゆうたちも入れて記念写真撮ったよな?あれ、今ある?」
「ああ、データチップは持ってきているから視聴覚室で見てみるかい?」
尊氏の言葉に全員が頷き、先生に鍵を借りて視聴覚室のパソコンを起動した。
ディスプレーにあの時の画像が表示される。しかし、そこにも8人目は写っていなかった。
「なんだろう?あのだめ巫女さまたちの印象が強すぎて人数に入れちゃっているのかな?」
「それなら、9人だろう。二人いたんだから。」
「男の人の方は、影が薄かったからなぁ。まぁ、だめ巫女さまに比べたらだけど。」
「う~んっ、偽者の印象が誰か残っているのかなぁ。それとも厳十郎さんを数えているとか。」
「いや、そうゆうんじゃないんだよ。なんかどーんとでかいやつがいたような気がしてならないんだ。」
「そうなんだよな。何かこう、もうちょっとで思い出せそうなんだけど出てこないんだよ。」
「でも写真にも写っていないのよ。幽霊話はやめてよね。」
優子の言葉にみんながぴくりと反応する。
「幽霊化・・。認識できないものはいない事と同じ・・。」
桃子の言葉にみんなが黙り込む。もしや、誰か一人だけ幽霊化が解けなかったのだろうか?その一人は今もここにいて一生懸命自分を見るように声を掛けているのだろうか?
あの時は8人でいたから乗り越えられた。だが、今ここにいない誰かは一人であの状況を過ごしているのだろうか?
そう思うと7人は居た堪れなくなった。探さなくてはならない。なんとかしなくてはならない。だが方法は?
その時、未来があることを思いついた。
「お札花を持っていれば見れるんじゃないかな?」
「あっ!」
全員がそのことに納得する。
「おおっ、さすが未来だ。目の付け所がクールだぜ!」
「よし!これから祠に行こう!あそこは何故だかしらないけど今、花だらけになっているからな。」
大地の提案でみんなが席を立とうとした時、視聴覚教室の扉が開いて誰かが入ってきた。
「やぁ、みんな、ここにいたのか。探しちゃったよ。」
「武士!」
「あれ?武士って誰だ?いや、武士は武士だけど・・、ウチのクラスに武士っていないよな?」
大地がディスプレイを見直し、そこに武士がいない事を確認する。
「これって武士が撮ったんだっけ?いや、武士は俺の後ろにいたよな。写真は、俺とタカジーで交代して撮ったんだ。だから武士はどちらにも写っているはずだ。」
「うん、驚かせてごめんね。今から説明するよ。」
武士は空いている椅子に腰掛けてみんなに話し始めた。
「実は君たちには6ケ月前、ある方法を使って記憶の書き換えをさせてもらった。いや、君たちだけじゃない。この町にいる人全てだ。だから6ケ月以上前の僕に関する記憶は全て嘘、でっちあげだ。」
突然の武士の告白に全員が驚きを隠せない。しかし、真剣な武士の目を見て信じるしかないのかとも思えてきた。
「みんな、じんじんの事は覚えているかい?」
「じんじん?誰それ?いや、ちょっと待て!あれ?そう言えばじんじんの事も忘れていたよ、俺。なんでだ?」
「じんじんは実は異星人だったんだ。しかも指名手配中のね。」
「はあ~?」
「そして僕は彼を追っていた刑事でね。」
「大丈夫か?武士。お前、元に戻れたのが嬉しすぎて夏休み中、特撮モノを見すぎたんじゃないのか?」
「中々的を得た読みだ。まったくあのドラマのストーリーは異星人の誰かがネタを売ったのかと思うほどだよ。そしてじんじんはそんな宇宙犯罪シンジゲートの中ボスなんだ。」
これは武士のおとぼけなんだろうか?一度は信じなくてはと思ったが、話が段々眉唾になってきている。
「まったく、神さまがいらっしゃる星は対応が難しいよ。ましてや僕にはアウェイだからね。今回の幽霊化に対しては何にもできなかった。正直、無事に戻れてほっとしているよ。」
「なに言ってんの、お前。訳わかんねぇよ。」
「まぁ、聞いてくれ。あの後、じんじんは僕らと偽者が入れ替わったのを感じ取ったんだ。そして、僕の監視が無くなったこのチャンスを活かして高飛びした。僕はじんじんを追わなくてはならない。だから今までの僕がここにいた痕跡を全部消させて貰った。君たちも僕を覚えていなかっただろう?」
「おまっ、なんつうことをするんだ!俺たちから記憶を消すなんて!それでも仲間か!」
「いや~、ごめんよ。でもそれが規則だからね。こればっかりは僕にもどうしようもないんだ。でも君たちの心は覚えていてくれた。我々の記憶操作はほぼ完璧だ。いままで残滓すら残したことはないんだよ。でも今回は違った。完全にではないけど覚えていてくれた。いや、記憶ではないのかもしれない。心が、魂が忘れないでいてくれたんだね。嬉しいよ。ありがとう。」
武士はみんなに深々と頭を下げる。
「さて、ここからが本題だ。本当はこのまま、記憶を偽ってみんなの前から消えるはずだったんだけど事情が変わってね。実はみんなに手伝ってもらいたいんだ。」
武士はみんなに説明を始める。その話を聞いて男の子はわくわく大騒ぎで、女の子たちはげんなりしている。そして武士はこう締めくくった。
「なんにしても、みんなとまたこうして会えて嬉しいよ。これだけはじんじんの組織に感謝しなくちゃいけないな。」
何やら新たな展開がはじまりそうですが、8人のひと夏の大冒険はひとまず幕となります。
皆様も土地神様にはくれぐれも粗相のないようお気を付けください。
それではまたいつかお会いしましょう。
-完-
最終謝辞
なんというか、それほど山あり谷ありのわくわく展開になりませんでした。駄目ですね、尊氏たちが可哀想で試練ぽいことをさせられません。
最後に助ければいいじゃん?いえいえ、そんな事をするくらいなら初めから転ばないように道の出っ張りを無くしておくのが大人の役目なんです。
やっぱり現実が厳しいと物語の中くらい夢を見たいですもんねぇ。
まっ、とにかく無事子供たちを元の世界に戻すことが出来ました。神さまだよりってとこがダメダメですが、そこは今後の課題ということで。
会話部分では誰の台詞か分かんなくなっていますが、みなさんで勝手に当てはめてください。もしかしたら9人目がいるかも知れません。ほんと8人は出しすぎたかと後悔しきりです。
では最後になりますが、お読み頂きありがとうございました。
またいつか会いましょう。




