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巡りめぐる

そして少年少女たちは祠の場所で目が覚める。

「おいっ、未来!大丈夫か!おいってばさ!」

最初に目が覚めた翔太が未来を揺り起こす。その声に他の子たちも起き出した。

「翔太、ここって祠よね。私たち元に戻れたのかしら。」

「おう、木も草も元通りだ!絶対戻っているよ!確かめにいこう!」

子供たちは、走って道路に出る。すると向こうからクラスメイトの女の子たちがやってくるのが見えた。


「澪たちだ、試すぞ!」

大地の言葉に全員が頷く。

「おーい!澪!」

大地の掛け声に気付いて女の子たちが足早に駆け寄ってきた。

「気付いているわ!」

桃子が歓喜の声を上げる。

「ヒューっ!やったぜ!」

翔太も緊張を解きガッツポーズを決めた。


「桃ちゃんたち、もう調査は終わったの?一緒に学校に戻っていい?」

澪の言葉に一瞬違和感を覚えたが桃子は話を合わせる。

「ええっ、そうね。うん、終わったわ。澪たちも帰るとこ?」

「うん、ゆゆちゃんたちはまだ神社でお喋りしていたけど、私たちは資料をまとめなきゃならないから先に戻ってきたの。」

「そっ、そう。戦没者の取材だったっけ。おじいさんたちからは話が聞けたんだ。」

「うん、結構すごい話ばかりだったから驚いちゃった。まとめるのが大変だよ。」


澪たちと桃子は歩きながらお互いの調査結果についてお喋りしながら学校へと歩き出した。その後ろを尊氏と優子がついて行く。

「澪が調査を終えてここを歩っていたってことは、私たちあの時に戻ったってこと?」

優子が尊氏に小声でそっと問いただす。

尊氏は携帯電話の日付を優子に見せた。その日付は子供たちが幽霊化した7月14日になっている。

「さすが神様と言うべきかな。ただ元に戻るだけじゃなくて時間まで巻き戻してくれたよ。」

「桃子に言った方がいいかな?澪と話がしずらいんじゃない?」

「大丈夫だろう、桃子は既に気付いているよ。」

尊氏は前を歩く桃子たちを見ながら答えた。翔太たちは澪たちに認識されたのが嬉しいのかやたらと話しかけている。未来は優子の後ろで様子見だ。


「翔太!道路にはみ出さないで!轢かれちゃうわよ。」

「おおっ、そうだった。もうこれからは車に気を付けなくちゃな!」

優子の注意に翔太たちが道路の端に戻る。その脇をトラックが走り抜けていった。桃子と竜馬を轢きそこねたあのトラックだ。


全ては元に戻った。あの日のあの時からやり直せる。多分、偽者もすでに消え失せているだろう。尊氏たちは喜びに包まれて学校への道を歩いて行った。



そして、何事もなかったかのように夏休みが始まった。

少年少女たちは祠に集まって話し合う。これからはどうすればいいんだろう?どの道を進むべきなのか。自分たちはなにをすれば良いのだろう。


そして、ひとつの答えを選んだ。


花を咲かそう。増やしてこの祠の周りに植えよう。そして伝えよう。

起承転結、事の起こりとその結果を。そしてそれが今も綿々と続いていることを。今、自分たちがいるのは過去の人たちがいたからだ。そして、未来の人たちが生まれるには自分たちが必要であることを。


過去が無くては今はない。今が無くなれば未来も無いのだ。

今回のことは秘密だ。言っても信じてもらえるはずがない。だから言葉ではなく行動で伝えよう。私たちは守られている。時に甚大な被害を及ぼす災いもあるが、それは私たちが乗り越えられるものと信じて守り神が手を出さなかったものだ。


私たちが超えられないほどの災いは全て守り神が事前に取り除いてくれている。しかし、体験しないことはわからない。人々は守り神の恩恵を知らずに過ごすだろう。だがそれでいいのだ。守り神は対価を要求しない。望んですらいないだろう。ただただ姫さまの言い付けを守っているだけだ。その行為は人々に恩恵をもたらしているが、守り神にそのつもりはない。


だけど私たちは知ってしまった。だから祈ろう。感謝を捧げよう。その行為は自己満足かもしれない。守り神には届かないかもしれない。それでも私たちは信じる。願わなくては何も始まらないことを学んだのだから。


-完-

明日は登場人物紹介、蛇足編と少し続きますがこれにて本編は終了となります。

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