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「ねぇ、ちょっとこれ見てくれない。」
町から戻った優子は尊氏に1冊の雑誌を手渡す。
「女性週刊誌じゃないか。僕はこんなの読まないよ。」
「うん、中身はどうでもいいの。裏の広告を読んでほしいのよ。」
「広告?」
尊氏は雑誌を裏返し、そこにある広告を読んだ。
『よろず相談承ります。古今東西、なにやら不可解な出来事に悩まされているあなたに、当探偵事務所が解決の糸口を探して差し上げます。藁にもすがる気持ちのあなた!今すぐ当探偵事務所にご連絡ください。』
「これがなにか?普通のインチキ広告だろう?」
「うん、内容はそうよね。でも本を置いて一瞬目を瞑ってもう一度見てみて。」
尊氏は何だと思いながらも言われたように本を置き目を閉じた。そして目を開きもう一度本を見る。
「見たけど。」
「何か気付かなかった?」
「何かって、別に。なんだい?僕が目を閉じている間にすり替えたのかい?」
「ふうっ、あんたって結構鈍感なのねぇ。もう一度やって。今度は広告をよーく見てね。」
尊氏は優子に言われるまま再度目を閉じ、一拍おいて開いた。そしてインチキ広告を見る。
「なんだ、別に・・、あっ!」
「気付いた?広告の内容が摩り替わったでしょう。」
「なんだこれ?新手の時間差印刷なのか?そんなの聞いた事がないぞ!」
ホログラムでも施してあるのかと尊氏は雑誌を角度を変えて見るがそんな細工は見当たらなかった。
「違うわよ、そんなの私だって聞いた事がないわ。いい?この広告は私たちが触れていなければただの神秘パワーの込められたブレスレットの広告なの。でも私たちが触れて一瞬目を離すとこの探偵事務所の広告に摩り替わるのよ。でもこんな手法は聞いた事がない。あったらもっと話題になっているはずよ。そこで考えられるのは・・。」
「幽霊化か・・。」
「そう、幽霊化した私たちだからこの広告を見ることが出来たと考えれば納得できるわ。広告の内容もピンポイントで私たちの境遇にマッチしているものね。」
「荒神の仕業か?」
尊氏は真っ先に浮かんだ疑問を口にする。
「それは分からないわ。でも荒神の仕業としては大分手が込んでいるわよね。誘い出したいなら偽者を使えばいいんだから。しかもその雑誌日付が去年のなのよ。」
尊氏は表紙の号数を見る。確かにその雑誌は去年のものだった。
「つまり、その雑誌は私たちが幽霊化する前からあったことになるわ。という事はそのよろず相談は私たちだけに対して送られたものではないと思うの。」
優子の推理に尊氏も納得する。
「う~ん、これは厳十郎さんとは別の人が荒神に祟られた人を見つける為に施した術なのかな。」
「解からないわ。でも確かめる必要はあるんじゃないかしら。」
「そうだね、みんなで相談してみよう。」
その日の夕方、みんなを集めて尊氏は雑誌の広告のことを話し始めた。
「という訳で、このことは確かめてみる価値があると思う。幸い、電車に乗れる方法も見つけたから首都圏までも行けるはずだ。」
「えっ、首都に行くの?アキバ!アキバに行きてぇ~。」
「いやいや、いっその事オリンピックを生で見てみようよ。」
「翔太、オリンピックは終わったわ。今やっているのはパラリンピックよ。」
突然の首都行きの提案に竜馬たちが浮かれ出す。しかし武士は慎重だった。
「観光はともかく、この事務所の人たちが僕たちを認識できるかが怪しいな。」
武士の言葉に盛り上がっていた雰囲気が沈黙する。
「そこは賭けになる。こんな凝った技法で呼び掛けるんだから大丈夫と思いたいが、仮に駄目だったとしても僕たちに失うものはない。竜馬じゃないが観光をして帰ってくればいい。」
武士の言葉に尊氏が楽観的な考えを返す。それを聞いて武士も納得したようだ。
「私たち首都に行くの?」
未来が桃子に聞いた。
「この話の流れならね。でも尊氏、大丈夫かしら。罠という線も捨て切れないわ。」
「うん、そこは慎重にいこうと思う。なんたってこちらは向こうの存在を知っているが、向こうは僕たちをしらないという事がアドバンテージだからね。」
「馬鹿正直にみんなで押し掛ける必要はないか。おうっ、竜馬、やっぱ俺たちはアキバで金拾いだ。なんせ天下の首都だからな。もしかしたら100万円くらい落ちているかもしれないぞ。」
「オデン缶ってまだあるのかな。あれなら俺たちでも食えるはずだよね。」
突然告げられた首都行きの話に男たちは盛り上がる。
「てっ、テーマパークも行ってもいいかな。」
「おっ、未来いいねぇ。忘れてたぜ。でもジェットコースターは止めとけよ。お札花を風圧で吹き飛ばされたらそのまま大空に放り出されかねないからな。」
「私、パレードを見たいの!」
「あ~、なんか凄いらしいな。よっしゃ!そうと決まれば資料集めだ。うひょ~、新幹線に乗るのも久しぶりだぜ!」
「ねぇ、いっそのこと飛行機で行かないかい?俺、一回飛行機に乗って見たい!」
未来の提案を受け翔太たちは新しい玩具を貰ったみたいにはしゃぎだす。
「解かったよ、探偵事務所には僕と優子が行く。君たちはその間別行動をしていてくれ。」
「え~っ、私は原宿を見てみたいのに。尊氏一人で行ってよ。」
「君たちは時々ひどいな。僕だって行きたい所の一つや二つあるんだぞ。」
「まっ、時間はあるんだ。飯と寝床の問題さえ解決できれば長期滞在も可能だし。夢はでっかく、取り敢えず行きたいとことやりたい事を書き出そうぜ。」
8人は振って沸いた首都行きの話に大興奮である。何人かは親に連れられて行った事はあるが、子供たちだけでこんなに遠くまで行った事はない。
「まてまて、首都は地下鉄っていう電車があるんだ。あれは巨大な迷路みたいらしいからな。迷子対策をしっかりしておかないと、はぐれたら一巻の終わりだぞ。」
「はぁっ、やっぱりスマホが使えないのが残念よねぇ。連絡の取りようがないもの。」
「やっぱここは駅の伝言板だろう!XYZって。」
「なにそれ?」
「駄目だな、お嬢は。探偵モノの常識だぜ?」
「まったく大地は漫画脳なんだから。ふざけてないでちゃんと考えて。」
「それでいつ行くんだ?」
「偽者たちには宣戦布告しちゃったからな。家を留守にするのは怖いが攻めるという意味では仲間が増えるかもしれないこちらを優先したい。幸い僕らは着のみ着のままだ。明日の朝ご飯を食べたら出発しよう。」
大地の問いかけに尊氏が答える。
「おっと急だな。行く所のリストアップが忙しいぜ。」
「遊びに行くんじゃないのよ。あ~っ、でも空振りだったら遊びでもいいか。折角だしね。未来は行き方知ってるの?」
桃子が浮かれている大地に釘を刺す。
「幕張!幕張っていう駅で降りるの!」
「それだけじゃ駄目ねぇ。町に調べに行きたいところだけど、偽者に後を付けられるのも嫌だし。どうしようか。」
「俺が見張っていてやるよ。というかお札花を持ってれば、やつら気付けないんじゃない?」
「あっ、ナイス!すごいわ、大地がまともな事を言った。」
「またかよ、俺の扱いがひどいよ、桃子。」
「後は、やっぱ、高層タワーだよな。俺たち幽霊化しているからエレベータだって待ち時間無しだぜ、きっと。」
「食べ物系が味わえないのがつまらないわねぇ。」
「いや、天下の首都だぜ?自販機でなんでもあるんじゃねえの?クレープとかケーキとか焼きそばとか。」
「うわっ、本当にありそうで怖いわ。」
当初の目的を忘れて尊氏と武士以外は既に観光モードである。取り残された二人は急いで探偵事務所の住所を書き写し明日の段取りを確認すると6人の雑談の輪に加わったのだった。




