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新生活開始!

拠点で尊氏と桃子は今回の遠征での成果を確認している。

「毛布が3枚。タオルケットが6枚。掛け布団が2枚。敷布団が3枚。シーツが4枚。簡易ベットが1台。これ結構重かったわ。」

桃子が数を数え尊氏が記録してゆく。

「取り合えず掛け布団は敷いて使おう。今の時期は暑すぎて使うやつはいないだろうからな。タオルケットが6枚あったのは助かるな。」

「そうね、9月いっぱいはなんとか凌げると思う。」

「厚手のカーテンが2枚。バスタオルが4枚。クッションが3個。座布団が6枚。・・ちょっと誰!こんな大きなラジカセを持ってきたのは!」

突然桃子が声を荒げる。そこにはダブルカセット+CD装備の大きなラジカセが鎮座していた。

「あの・・、ごめん。それ僕が持って来たんだ。」

尊氏が桃子の剣幕に押されて小声で答える。

「それ、ラジオも付いているから電池さえあれば聞けるかなと思って・・。」

「あっ、そ、そうね。ラジオは必要よね。うん、ごめん。」

家電=自分たちには使えない物という短絡思考を咎められた気がして桃子は少し恥ずかしくなった。しかし、電池が手に入らなければやはりガラクタである。

「この乳母車は何?」

「あ~っ、それは武士が台車代わりに使ってた。結構役立ったよ。」

「ああっ、成る程。後はバケツが3つにホースが一束か。粗大ごみの日ってタンスとか机とかばかりで、お皿とかはなかったわね。あれは燃えないごみの日に出すのかしら。」

「そうだね、明後日がその日だ。また行ってみよう。後、畑に使えそうなやつはすでに持って行った。だから残りのリスト化は僕がやっておくよ。桃子も休んでくれ。」

畑に行ったのは武士と大地だけで残りの4人は疲れて寝てしまった。桃子は発案者として気が張っているのか普通を装っているが疲労は溜まっている。先程の癇癪もそのせいであった。

「でも・・。」

責任感からか桃子は煮え切らない。

「僕も武士たちに声を掛けてくるだけさ。一旦休んで夕方みんなで片付けた方が早い。」

「うん、そうね。じゃあ、先に休むわ。」

そう言って桃子は隣のみんなが寝ている部屋へ向かう。尊氏は桃子から受け取ったリストを手に畑に向かった。

「どう?使える?」

「おう!バッチリだぜ!さすがはスコップだ。今まで使っていた木ベラなんかポイっだ!」

スコップは柄の部分がひび割れていたが武士が針金でぐるぐる巻きにして補修していた。

「大工道具一式が捨てられていたのは運が良かった。」

「だよなぁ。しかも殆んど未使用だぜ?なんで捨てたんだ?」

「日曜大工に憧れて買ってみたけど飽きちゃったとかじゃないのか。」

「ふ~ん、だからって捨てるかね。もったいねぇ~。」

「まっ、捨てる神あれば拾う僕たちありさ。」

「このでっかいブラシは何に使うんだ?」

「ああっ、風呂場の床を掃除する時に使えるんじゃないかな。」

「掃除かぁ、一通りはやったけどまだまだ手を付けていない所が結構あるよな。」

「そこは追々やっていこう。僕たちはプロじゃないからね。一日じゃ出来ないさ。」

「そうだね。武士も大地も片付けが済んだなら一旦休もう。あんまり張り切ると続かないぞ。」

「おう、そうだな。ぬるい水でも飲んで昼寝でもするか。」


3時間後、尊氏たちが目を覚ました時には女の子たちは全員起きて果物をもいでいた。武士が物置にあったハシゴを見つけた為、女の子たちでも上に実っている実を採ることが出来るようになったのだ。

「手伝うかい?」

尊氏が声をかけるとハシゴを下で支えていた優子と未来が振り返る。

「あら、起きたの。大丈夫、もう降りるところだから。」

優子の言葉に尊氏はハシゴの上を見る。

「きぁーっ、見ちゃだめ!」

未来が止めたがハシゴの上にはスカートをカゴ代わりに果物を持て降りようとしている桃子がいた。スカートをめくっている為、パンツがもろに尊氏の網膜を直撃する。

「ごっ、ごめん。」

尊氏は急いで回れ右をして後ろを向いた。

「見た?」

ハシゴから降りてきた桃子が不機嫌に尊氏に確認する。

「いや、み、見て・・。ちょっとだけ・・。」

「えっち。」

ドギマギしている尊氏の横を女の子たちが家通り過ぎる。

「あ~、桃子、もうお嫁に行けないかも。尊氏責任取んないとねぇ。」

「えっ、桃ちゃん、尊氏くんのお嫁さんになるの?」

優子の冷やかしに未来が真顔で食いつく。

「そうよ、尊氏もやるわねぇ。既成事実よ。さすがは策士だわ。今夜から隣同士に寝なくちゃだめかしら。」

「きゃーっ、すごーい!」

「優子も未来もからかわないの。尊氏が固まってるでしょ。ふざけ過ぎよ。」

桃子に言われ二人が振り返ると、そこには真っ赤になった尊氏が頭を抱えてしゃがみこんでいた。

「あらら、尊氏ってウブねぇ。そんなんでよく一緒にプールに入れていたわね。」

「う~っ、お前が変なことを言うからだ。」


その後、大地たちを起こしてみんなで早めの夕食を取る。もちろん食べ物は果物だけだ。

「この時計も電池がないとだめなんだよな。」

翔太が壁に掛けた針の止まった壁掛け時計を見ながら言う。

「そうね。電気、電気、電気。今は電気がなくちゃまともな生活もできないのね。」

優子がため息混じりに返した。

「単3電池なんて家の中にごろごろあったのに、今の俺たちには手がでないもんな。何なの?これって格差社会の弊害?」

「でも、なんで全部の家電から電池が抜かれていたんだろう?これも荒神の仕業なのかな。」

「竜馬、今は電池は分別品目なのよ。それくらいの常識は知っておいてよね。」

「あっ、そうなの。だからあのライトも電池が入っていなかったのか。もしかしたら点いたのかな?」

「えっ、あなたライト持ってこなかったの?」

「だって点かなかったんだもの。使えない物を持って来たら桃子が怒るだろう?」

「桃子のせいにしないの!ああっ、ライトがあれば夜のおトイレも楽になったのに。」

「はははっ、まぁ、仮にここにライトがあっても電池がないから使えないよ。でも電池とライトは今後の必要品目のトップに入れておこう。」


果物だけの簡単な夕食を取り8人はしばし雑談をした後、早めに寝た。なんと言っても灯りが無い為、夜更かしもままならないのだ。


しかし、寝付いた頃合を狙って、闇に紛れ8人を襲うものがいた。

「たっ、たかうじ~。か、蚊取り線香買って来てぇ~。」

優子の情けない声が夜の闇に広がっていった。

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