粗大ゴミ争奪戦
翌日、朝まだ日も昇らない内に8人は町のごみ集積場に集まった。今日は月一回の粗大ごみの回収日である。8人は住む場所は何とか確保したが生活用品が全然ない。雨が凌げるというだけだ。よって桃子の発案で捨てられるごみの中から使えるものを頂こうということになったのだ。
「おおっ、結構あるなぁ。これなんかまだ全然使えるんじゃないの?」
「翔ちゃん、これ。この自転車、動かないのかなぁ。」
「あっ、くそ。鍵が掛かってるぜ。何とかならんかな。」
「翔太、それは後回しだ。誰か来る。多分業者だ。モタモタしているとやつらに根こそぎ持っていかれるぞ!」
振り向くと1台の軽トラがこちらに走ってくるのが見えた。
「なんだよ、ここでも競争かよ!日本って豊かだったんじゃないのかよ!」
触れてさえいれば物は他の人には見えなくなる。8人はその属性を生かして役に立ちそうなものを片っ端からかき集める。
「桃ちゃん、これってベットじゃない?」
「あら、本当だ。さすが未来ね。良いのを見つけたわ。ちょっと竜馬。これ運んで。」
「へ~い。」
「桃子、これはチャンスだ。二手に分かれよう。俺たちは北の団地に行ってみるよ。あそこの方が色々ありそうだ。」
「そうね。ベットとか布団を中心に当たりましょう。台車なんかがあれば最高なんだけど。」
「大丈夫さ、俺たちで運ぶよ。こら、竜馬そんな映らないテレビなんか放っておけ。いくぞ。桃子も来てくれ。お触り要員だ。」
ぱこん。
「言い方がいやらしい。」
そう言いながらも桃子も大地の後を追った。
「優ちゃん、この電気スタンドは点かないのかしら。」
「未来、あの家には電気が来ていないんだから電化製品は持っていっても無駄よ。」
「あっ、そうか。」
そうこうしている内に業者も闇にまみれ物色を始める。
「よし、ここはあらかた見た。どこか人目につかない所に隠して別の所に移動しよう。」
「翔太、そんな動くかどうか分からないパソコンなんか置いていきなさい。それよりこっちを運んで!」
翔太は名残惜しそうにノートパソコンを置き、優子が引っ張っている毛布を担いだ。
「この毛布、大丈夫かなぁ。虫が沸いたりしない?」
「川で洗って干せば大丈夫。あんた変なところで潔癖ね。」
「ううっ、俺、虫が苦手なんだよねぇ。」
4人は戦利品である簡易ベットや毛布を抱えてごみ置き場を後にする。
2時間後、8人はコンビニで廃棄弁当を食べながら今日の戦果を話していた。
「やっぱり電気を使えないのがネックよね。クーラーとは言わないけど扇風機は欲しかったわ。」
「何で冷蔵庫があったんだ?あれって処分に金が掛かるんだろう?」
「椅子とテーブルは惜しかったな。やっぱりトラックでもないと大きいのは運べないよ。」
「あのマネキンって誰が捨てたんだろう。布を剥いだ途端顔が出てくるんだもん。びっくりしたぜ。」
「結構布団とかがあって良かったね。コタツもあったよ。」
「いや、やっぱり自転車が欲しかった。あれ、パンクさえしていなければ乗れたのに。」
「次は来月か。捨てられる物は大体分かったから今度はちゃんと準備してこよう。」
8人はそれぞれ思ったことを口にする。そして尊氏が話をまとめた。
「今日はみんな朝から働きづめだから疲れたと思う。でもあれを家まで運ぶ仕事が残っている。もうひと踏ん張りがんばってくれ。」
「4キロを3往復・・、いや4回くらいかな。」
「引越し屋さんの苦労が忍ばれるわ。」
「え~っ、あの人たちは車じゃん。俺たちの方が大変だよ。」
「毛布は直接、川原に持って行った方がいいよな。誰か見張りを立ててさ。」
「毛布は一番最後にしよう。一人で川原にいるのは危険だ。」
「あっ、そうだな。うん、そうしよう。」
「さて、そいじゃやるか!」
翔太の掛け声をきっかけに8人は戦利品を隠した場所に向かった。




