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極悪魔王(外見)な宮廷魔術師と、薄幸の精霊姫(外見)な令嬢の話

短編  人妻なのに、〝鏖の魔王〟って呼ばれている宮廷魔術師筆頭で、幼馴染な半精霊に求婚されました

作者: 木示申

 





 慣れない圧迫感に思わず声を上げてから、小刻みに震える相手の腰を、両足でぎゅっと挟む。


「ギニ、もしかして、初めて・・だったの?」


 そう問いかける自分の声が、思っていた以上に甘くて、頬に熱が上ってきた。


「・・・うん」


 彼から照れたように返された返事に、胸がぎゅっと握られる。


 わたしは・・・今、わたしを抱いてくれる彼のことを好きじゃない。

 利用している、だけなのに。


「いいよ、ギニの好きなようにして。

 平気だから」

「でも、プェル」

「わたしは生娘じゃないよ、当たり前でしょ?

 大丈夫」


 精一杯微笑んで見せた。

 だって、もう十分情けない姿を見られてるから、少しくらい経験者ぶっても良いよね。


「プェル、   だ」


 ぼそり、と落とされたつぶやきは、聞こえなかった。



 おずおずとした態度だったギニが、次第に荒い息をつきながら、わたしを満たしてくれる。

 箍が外れたように、荒々しい動きで攻めてくる。


 翻弄されながら、わたしはギニの苦しそうに呼吸を乱し、興奮で赤らんだ顔を見て、幸せになる。

 わたしなんかでも、彼を気持ちよくして上げられる、と。


 わたしは、彼の〝ギニ〟の恋人でもなければ愛人でもない。


 ギニはわたしの幼馴染。

 ずっと、それだけの関係だった。



 わたしには夫がいる。

 そう、これは世で言うところの不倫。


 でも、一つだけ言い訳させてほしい。

 夫とわたしは、限りなく赤の他人であると。


 私たち夫婦の間には結婚宣誓書ではなく、金銭契約書が交わされている。


 わたしは、金で買われた花嫁として、初夜しか使われなかった。

 そう、使われたのだ。

 万が一にも離婚できないように。


 契約の一部として初夜を済ませた夫は、愛人の元へ行き、ずっと床を共にしていない。

 結婚して半年が経つが、会うこともないし、会わないのだから会話など当然ない。


 離婚を望むことも許されず。

 ずっと、寂しかった。


 独りぼっちで、我慢しているのが。

 誰にも頼れないのが。


 今夜のわたしは幸せ。

 ギニが、いてくれるから。




 ギニは、わたしの幼馴染。

 物心ついた頃には、三つ年上のギニが側にいた気がする。


 ここ数年は手紙のやり取りもなくて、生きてるのか心配していたけど、ギニは王都で魔術師をしていた(と父から聞いた)。

 彼は、稀有な存在の半精霊だ。


 精霊は人の世に基本的に干渉しない。

 でも、時折、人との間に子を成す精霊がいる。

 半精霊の子供は精霊の世では生きられないらしく、人として生きていく。


 この国では魔術師、しかも半精霊はとても特別な存在だから、罪にならない。

 いや、不倫程度なら、ギニだけは罪に問われない、と言うべきかもしれない。


 ギニの初めてを、わたしが奪ってしまったみたいだけれど、彼に恋人はいないらしいから、問題はないと思う。


 初夜のたった一晩だったのに、夫に強引に抱かれたせいで、彼の初々しさが、とても愛おしい。

 ただ腰を叩きつけるように、まっすぐわたしを求めてくれるのが、とても嬉しい。


「プェル、も、っ」

「いい、よっ、ギニ、いいからっ」


 姦淫罪だと言われ、罵られ、投獄されても構わない。

 こんな日々を繰り返してまで、生きていたいわけでもない。


 そもそもギニだけは、罪に問われないのだから。


 ガクガクと震えて、ギニの全身から力が抜ける。


「・・・よ」


 大きな体に潰されて、わたしの「苦しいよ」は声にならなかった。

 ギニの体重を感じるのは嫌じゃないけど、息ができないのは困る。


「っ、ごめん」


 まるで少年のように照れて、ギニが退こうとする。

 それを、力の入らない腕で精一杯引き止め、そばにいて、と訴える。


 お願いだから、今夜一晩だけでも、側にいて。

 もう、独りぼっちは嫌。


 何もすることもないし、何も望まれない。

 社交の場にだって、夫は愛人を同伴している。

 わたしなど、飾りにすらならない、ただの穀潰し。


 わたしを夫が手放さないのは、家名を失いたくないから。


「お願い、ギニ」


 蝋燭の僅かな明かりで、艶やかな緑に見えるギニの肌。

 濡れた葉に乗る蛙のように艶やかなのに、触れた肌はさらりと乾いていて、力強くて暖かい。


 陽の光の下だと普通の人に見えるのに、不思議。

 半精霊だからだろうか。


 なぜ、彼は、わたしのような者(人妻の非処女)に、欲情できたのだろう?

 今更そんなことを思っても、何も変わらない。


 朝が来れば、いつもと同じようにこの離れから一歩も出ず、日常を過ごすわたし。

 ギニは精霊の血を引く稀有な存在であり、魔術師として生きていく。




 数時間前、ギニが窓をノックした時はすごく驚いた。

 文通が途切れた時に、彼が、稀有な魔術師になったと聞いた時に、繋がりは切れていたはずなのに。


 話したいことはいっぱいあったのに、言葉にならなかった。


(父が招待状を出したはずだけど、結婚式は見にきてくれなかったね)

(仕事が忙しかったの?)

(もしかして、お祝いを言いにきてくれたの?)

(それとも、最近どう?って心配してくれたの?)


 再会してすぐだというのに、わたしの今までに溜め込んだ感情が爆発した。

 一人が寂しくて、わたしは限界だった。

 半年間の孤独が、わたしをおかしくさせた。


 久しぶりに会ったのに、情けない姿を見せるわたしに、ギニはきっと呆れただろう。

 でも、ギニは泣くわたしを慰めてくれた。


 心配そうな彼の手が暖かくて、触れてくれる指が優しくて。


 彼の優しさにつけ込んで、わたしがギニを襲ったのだ。

 人妻という業を抱えているくせに。




  ◆




 朝日の中、わたしは一人で目覚めた。


 いくら寂しいからって、なんて夢を・・・と体を起こそうとして、違和感を覚える。

 股関節が、痛い?

 だるい?


 焦ってめくったシーツには、ギニの匂いが残っていた。

 サイドテーブルに、泡立ったような白い石が置かれている。


(また、今夜)


 そんなギニの声を思い出す。

 夢じゃなかった。


 胸の奥の甘い痛みより、先に全身から血が引いていく。

 侍女に見つかったらまずい。

 侍女にバレないように、シーツを替えておく手段がない。


 離れには、替えのシーツなんて置いてない。


 裸だということも忘れて、慌てて寝台を降りたところで、扉を開けて入ってきた侍女二人と目があった。

 ノックには気がつかなかった。


「奥様、おはようございます、失礼致します」

「湯浴みの用意が済んでおります、こちらへどうぞ」


 真っ青になっているわたしに、気がつかないはずがない。

 それなのに、名前も知らない侍女達は、わたしにガウンを羽織らせて、部屋から連れ出す。

 え?朝から湯浴み?


 お湯が勿体無い、と数えるほどしか使ったことのない浴室へ連れ込まれると、そこには湯気を立てる湯船が用意されていた。

 わたしがいる離れには、普段侍女はいない。

 食事時の、朝、夕だけ、あとは掃除や片付けの時には本宅からやってくるけど。


「お部屋を整えてまいりますので、先に体を温めていてくださいませ」


 丁寧な言葉で話しかけられて、違和感を覚えながら、わたしは湯船に沈んだ。

 ・・・少したって、湯の暖かさで体がほぐれた頃、ようやく違和感の正体に気がついた。


 わたしに丁寧な言葉で話しかけてきた侍女は、彼女達が初めてだ。

 むしろ、見覚えのない侍女の二人。


 わたしの世話をする侍女なんて、今までいなかったのに。


「失礼致します、お背中を流させて頂きます」


 誰の差し金なのか、と思わず身構えるわたしの耳元で、侍女達は小さく囁いた。


「奥様、わたくし達は当家の雇い人ではありません。

 宮廷魔術師筆頭ギニュルックディム・セブティミヌ様の配下でございます」


 黒っぽい髪の淑やかな笑顔の女性に言われて、少しの間、考え込んでみる。


「・・・ギニュルッくでぃむ?(って誰?)

 ・・・・・・あ!、え、もしかしてギニのこと?」

「はい、そうでございます(・・・ギニ?何でそこを残したの!?)」


 返事をしてくれたもう一人、茶色の髪の女性は、一瞬頬を引きつらせた。


 ギニったら、知らないうちに、すごい人になっていたらしい。

 宮廷魔術師筆頭って、何?

 宮廷ってことは、もしかして、王様のいるお城で働いているの?


「わたくし達は、プェルティリュ様を如何なる者からもお守りするように、と仰せつかっております」

「・・・な、なぜ?」

「それは、筆頭様(上司)にお伺いいただくのがよろしいかと」


 納得はしていないけれど、わたしに拒否権などない。

 この家で働く者は、全員が夫の雇った者であり、わたしが侍女を私物化することはできない。


 夫が彼女達を了承しているなら、ここにいてもらっていいの?よね。

 え、でも、ギニの知り合いの女性達なら、夫とは無関係な侍女ということになる・・・の?


 庶民の雇い人がどこまで自由に動けるのか、わたしには分からない。

 夫は家人が増えれば、もちろん承知しているはず、そう思うことにした。


 え・・・でも、わたしを守る?

 なんの、ために?


「あの、よろしくお願いいたします。

 プェルティリュ・ニュンペーです」

「はい、命に代えてもお守りさせて頂きます」


「そ、そんなに、大層な感じじゃなくて結構ですから。

 貴女達のことは、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」


 よく分からないけれど、なんだかとても照れくさくて、彼女達に名を聞く。


「フェルタと申します」

「ゴーティアと申します」

「ギニのお知り合いなら、フェルタさん、ゴーティアさんでいいかしら?」

「いいえ、どこから発覚するとも限りません。

 呼び捨てで結構でございます」


 多分、二人の内で立場が上の黒っぽい髪のフェルタさんは、なかなか強情そうだった。

 茶色髪のゴーティアさんは、困るわたしと淑やかに笑うフェルタさんを見比べて苦笑している。



 わたしは、二人とどう付き合っていこうかな、と不安を覚えながら、同時にギニがわたしのことを思ってくれたのだと、嬉しくなった。

 昨夜、寂しいって縋りついたのは、許されないことだけど、ギニはわたしが寂しくないように、と考えてくれたのだ。


 彼が、いつのまにか宮廷魔術師筆頭になっていたなんて。

 宮廷魔術師筆頭って、何?だけど。


 わたしが七歳の頃、彼が半精霊だって知られて、大きな街の学校に行ってしまって以来、ほとんど会ってなかった。

 それでも、長期休暇のたびに戻ってきて、わたしと遊んでくれた優しいギニ。


 魔術師になったと聞いて、半精霊だから、きっと稀有な存在なんだろうな、とは思っていたけど。


 昨晩、わたしよりも頭一つ以上背が高く伸び、広い背中と力強い腕を持つ彼には圧倒された。

 男、だったんだなって。


 わたしの中の彼は、背の高さも体重もあまり変わらない、幼馴染だったから。




  ◆




 その日の夜、眠りに落ちようとしているわたしの頬を、何かが撫でた。

 悲鳴を上げようとした耳元に、囁きが落とされる。


「僕、だよプェル」

「ギ、ギニ!

 驚かせないでよ、心臓止まるかと思ったっ」

「本当?」


 そう言いながら、夜着の上からわたしの胸に耳を押し当てる。


「ほんとだ、すごくドキドキしてる」

「ちょ、ギ、ギニったら」


 昨日、そんなことにはなったけど、わたしは基本的に異性と接したことが少ない。

 子供の頃なんて、そんな感情をもったこともない。


 でも、ギニはそうしているのが当たり前、みたいな顔して、わたしのぺったんこな胸元にくっついている。

 わたし、この半年で痩せてしまったの。

 女らしさの欠片もなくて恥ずかしいから、骨が当たって痛いだろうから、やめて、って言いたい。


「プェル?」


 頬を撫でられて、わたしは泣いてたことに気がついた。


「ごめんなさい、ギニ」

「なんで謝るの?」

「だって、わたし、貴方に優しくしてもらえるような女じゃないのよ」


 彼は、こんな所にいるべきじゃない。

 ちゃんと彼と共にいられる相手を見つけて欲しい。


 見捨てられた人妻との逢瀬なんて、何も得られるわけがない。


「プェル、本当なら俺が謝るべきなんだ。

 君を、愛してる。

 俺の妻になってほしい」

「・・・・・・え?」


 ギニの言葉の意味を理解するのに、三回は呼吸をした気がする。

 妻、お嫁さん、奥さん、カミさん、言い方はたくさんあるけれど、つまり・・・?


「ギニ、重婚は罪なのよ」

「・・・なんで、そっちに行くの?」

「え、だって、わたし人妻だもの。

 本当は昨晩のだって、今、こうしてるのだって許されないのに」


 言いながら、昨夜のことを思い出してしまう。

 顔が熱いと思っていたら、ギニの指が首筋を撫でていく。


「いけないって思ってるのに、俺を誘ったの?」

「さそ、誘ったって、そ、そそれは」


 慌てたらだめ、と必死で言い聞かせるのに、わたしの頭の中はメチャクチャになってしまう。

 ふと見ると、ギニは肌を緑に輝かせている。

 体を震わせながら。


「・・・ギニ?今、俺って言った?」


 広い肩を震わせて笑いをこらえる彼を見て、冷静になれた。


 そうだ。

 ギニ、彼って、普段は猫を被っているけど、結構いじめっ子だった。


 少なくともわたしが小さい頃は、すぐにちょっかいを出してきた。

 でも、他の意地悪な男の子からは、守ってくれて。

 だからわたしは、いつもギニの側にいることを選んだ。


 ギニがわたしの三つ編みを引っ張って、リボンをほどいてしまうから、髪を結うのをやめてしまった事がある。

 そしたら今度は「なんで結んでこないんだよ」ってうるさくて。

 ひらひらする物に戯れる猫みたいだな、と思ったんだっけ。


 いつだったか、亡くなった母が遺してくれたリボンを取られて、泣きながらギニをぶっ叩いた事がある。


 思えば、その頃からかも。

 ギニがわたしに優しくしてくれるようになったのは。



 今の「妻に」って冗談、だよね。

 でも、昨晩のは・・・本当に彼、初めてだったのかな。

 わたし自身が寂しさでおかしくなっていたから、ちょっと自信がない。


「言ったよ。

 いつまでも子供じゃないんだから、()はもう無理。

 プェル、本気だから。

 俺のものになってよ」

「そんな、っ、の、っ」


 反論しようとした口を塞がれる。

 いつのまにか動けなくなっている、固い体という檻に囚われて。


「少し目を離した隙に掻っ攫われて、それでも君が幸せなら身を引こうと思った。

 ・・あんなクソ野郎に囚われているのを見るくらいなら、この国ごと滅ぼしてやる」

「・・・ちょ、っと、ギニ、っ」


 ギニが器用すぎる。

 口づけを繰り返しながら、どうやって言葉を発しているの?

 それより、彼の言ってる内容が怖すぎる!?


「なあ、プェル、君の夫だって言ってるあのクズは君を何回抱いた?

 どうやって君に触れた?」

「ギニ、待、って、っ」


 張り詰めたギニの腕が、わたしを捕らえる。

 満足に息もできないのに、どうやって、話してるの?

 彼が何を怒っているのかは分からないけれど、濃厚な怒りが伝わってきて逆らえない。


「待って、ギニ、お願いっ」


 ようやく口づけを押しのけ、腕を抜けた時には、わたしは息絶え絶えになっていた。

 魔術師って体が資本なの?


「わたし、離婚できないの。

 夫と過ごしたのは一晩だけ、だけど・・そういう契約なの」


 わたしは、名前だけの没落寸前男爵家の娘。

 夫は、金と野心はあっても肩書きがないせいで、貴族相手には虚仮にされていた新進気鋭の商人。


 男爵家を存続していくのに、お金が必要だった。

 夫は、それを気前よく出してくれた。

 だから、わたしは離婚できない。


 割とありふれた話だ。


 男爵家の一人娘の元に婿入りした、商才豊かな商人。

 それが、わたしの夫。


 貴族社会では金で妻を買った、成金って呼ばれている・・らしい。

 祖母からの手紙に、そう書いてあった。


 周りの悪意を気にしていたら、商売なんてできないだろうけど、社交の場に愛人(庶民)を連れて行く夫が、周りからどう見られているのか、は不安に思っている。


「じゃあ、愛してないんだな?

 愛しているのに、愛してもらえないからって自棄になっ(て俺とヤッ)たわけじゃないんだな?」


 なに、その、悲劇の主人公。

 わたしは家族のために夫を選んだけど、そんなの貴族の間では珍しくもない。


 わたしの場合は、ただ、相手が庶民で、さらにお互いに歩み寄る気がないだけで。

 ・・・だってわたし、夫の要求に応えられそうにないもの。


「夫を?ってことなら、愛はないのよ。

 だって、会ったことだって、結婚式とその日の夜くらいしかないのに」

「・・・殺してやりたい」

「え?」

「いや、あー、とにかくプェル。

 もしもこの結婚を解消できるとしたら、俺の妻になってくれるか?」


 ・・・そんな真面目な顔をしないで欲しいのに。

 そう思いながら、ギニの顔が見れない。


 だって、わたし、絶対に赤くなってる。


 離れから出ないでくれ、と初対面の時に侍女たちに言われてから、離れをほとんど出ていない。

 そして離れにあるのは寝室、居間(お客は来ないので、書斎にしている)、あとは浴室。


 そんなところで暮らすわたしが、健康的に日焼けしているわけもなく。

 赤くなったら、絶対にすぐに分かってしまう。


 そもそも子供の頃のギニが、わたしを揶揄(カラカ)っていたのだって、すぐに赤くなって面白いからって、言ってたのを知っているんだから。

 これは、冗談なんでしょう?


 お願いだから、わたしに希望を与えないで。


 ギニの問いには答えられないまま、時間だけが過ぎていく。




  ◆




 眩しい朝日で目がさめると、一人だった。

 夢、だったんだよね、と起き上がるとシャラ、と首元で音がした。


「?」


 指で辿った首元に、細い鎖の触感。


「え?」


 寝台を降りて姿見の前に立てば、わたしの首には、細い緑がかった金鎖が。

 鎖だけなのに、とても緻密に繊細に作り込まれていて、思わず見とれてしまった。


 緑がかった金色が、夜闇の中のギニの肌の色のようで、思わず頬に熱がのぼる。


 ううん、わたし、簡単に赤くなるな!

 いい歳して、小娘みたいに反応したらダメだ。


「失礼致します」

「おはようございます、奥様」


 声に振り返ると、フェルタさんとゴーティアさんが、顔を洗うための手桶を持っていた。


「おはようございます」


 挨拶を返すと、なぜか二人からの視線を感じる。

 視線の先は・・・首の金鎖?


(うっわぁ、先輩、ドン引きですよっ。

 極悪人顔の筆頭様(鏖の魔王)が、人妻(薄幸の精霊姫)に本気すぎてキモいですよ〜。

 どんだけ魔力込めてあるんですか、アレ)

(独占欲の強すぎる粘着男は、嫌われるって相場では決まっているのに、困った方ね)


 ボソボソと二人で会話をしているが、わたしにはちゃんと聞こえなかった。


「「お着替え致しましょう」」


 なぜか着せられた服は、首元の詰まった、露出度のとても低い服でした。

 ・・・こんな服持ってたかな?

 ここ半年、服を新調した覚えもないのに。


「「お食事に致しましょう」」

「あ、はい」


 フェルタさんとゴーティアさんが来てくれてから、わたしの生活はとても楽しくなった。


 これまでは、洗濯や掃除は侍女がしてくれても、ひとりぼっちだった。

 話し相手が欲しくても、仕事の邪魔はしづらくて。

 それに、何か必要なものがあっても、侍女が本宅から来るのを待っていなくてはいけなかった。


 不謹慎だって分かってるけど、わたし、幸せかもしれない。

 我ながらなんて簡単なことで喜んでるんだろう、と思うけど、とても幸せだった。




  ◆




 ギニは毎晩、わたしの寝室に現れた。

 ・・・窓も扉も鍵がかかっているのに、どこから入って来るの?と淑女のように振舞って聞いてみたのに、教えてもらえなかった。


 ギニは大抵、毒にも薬にもならない話をしてくる。

 本当に宮廷魔術師(お偉いさん?)筆頭なの?って思いながら、わたしはギニの話に笑い転げてしまう。


 だって、すごく真面目な話の途中で、大臣のカツラが飛んでった!話とか。

 将軍が奥さんの目の前で若い女性を口説いて、引っ叩かれて土下座させられた!とか。

 イケメン騎士が、カッコつけて女の子を口説いてる所で、足に犬がアレ()を引っ掛けてったとか。

 侍女さん達の作っている、城内イケメンランキングの実物が、どんだけアホの子なのか、とか。


 すっごくくだらない話ばかり、だから。

 もう子供じゃないとか、どの口で言ってるんだろう?

 って、心から思った。


 でも、わたしはそんなギニと過ごすのが楽しい。

 あの夜以来、わたしはそういう雰囲気にならないように、と思っているけど。

 ギニも分かっているみたい。


 すごく近いのに、わたしに触れてこないから。


 もし、本当にわたしとギニの間に未来が望めるのなら。

 ・・・期待しても良いのかな。

 ただの幼馴染で、ちょっといじめっ子だと思っていたのに・・・彼にそんなの背負わせて良いんだろうか?


 わたしが、一人ぼっちが辛い、ってだけの理由で。


 わたしじゃなくても良い。

 もっと可愛くて、綺麗で、む、胸も大っきくて、ギニにお似合いの女性がいるに決まってる。


 でも、その未来を思うと、わたしは泣きたくなる。


 ギニが毎日いてくれるから。

 幸せだから。


 わたし・・・ギニが、好きだ。

 彼が笑った時の、クシャッ!て顔の真ん中に全部パーツを寄せたような笑顔が、大好き。


 どうしよう。

 わたし、ギニの重荷に、なりたくない。




  ◆




 夢見るように、幸せな日々が過ぎていく。

 わたしの寝室には、ギニが置いていく、謎の贈り物?が少しずつ増えていく。


 泡立ったような白い石。

 緑がかった金鎖のネックレス。

 緑がかった金の髪飾り。

 四角錐型の陶器製の何か。

 大きな黒い石。 

 糖蜜がけのお菓子。

 今の季節に咲いているはずのない、綺麗な良い匂いの花は、毎日のように増えていく。


 わたし、ギニに本当に大切にされている。

 と、思う。

 正直、大きな石や宝飾品をもらっても、使う場所もないし、どうしたら良いか分からないけど。


 嬉しいのに、悲しい。

 夫と結婚する前に、ギニと再会していれば、きっと、こんな思いせずに済んだのに。



「奥様、お食事の時間でございます」


 ぼんやりしていたわたしは、慌てて手元の刺繍を隠す。


 いつもギニに貰うばかりで、わたしから何もあげたことがない。

 だから、フェルタさんに頼んで、何枚かの手巾(ハンカチーフ)と刺繍糸を買ってきてもらった。

 わたしの少ない個人資産、母の遺してくれた貴金属(ネックレス)を売ってもらったから、お金は足りたと思う。


「ありがとうフェルタ」


 わたしはフェルタさんとゴーティアさんに、心から感謝している。

 二人とも〝さん〟付けで呼ばせてはくれないけど。


 だんだん分かってきたのは、二人は過保護らしいってこと。

 それはギニもだけど。


 二人もギニも、すぐ、わたしに何か食べさせようとする。

 わたしは胃腸が弱いらしくて、小さい頃から食が細いし、結婚してからは、離れに閉じこもって動かなくなったこともあり、食欲のないことが多かった。


 魅力の欠片もなく痩せていくと分かっていても、食べられなかった。

 口に入れると、吐き気がして。


 わたしが食事を残しがちなので、本宅の侍女達は、わたしが食べきれるように食事を減らしてくれた。

 最近では、朝、夕の二食で、パンとスープというお腹に優しい献立になっていた。


 貧乏男爵家の娘として、自分で料理もできるけれど、この離れには調理場がない。

 油っぽい肉料理を出されて、お腹の調子を悪くするくらいなら、あっさりとしたスープと、固いパンの方が良かった。


 フェルタさんとゴーティアさんは、それが気に入らないらしい。


 二人がどこで食事を用意しているのか分からないけれど、ここ最近は、一日に三食の上、二回の間食を勧められる。


 初めて蒸し野菜の山を目にした時は途方にくれた。

 そんなに食べられない、って。


 不思議なことに、二人はわたしが食べられない(お腹を壊す)物を知っているらしいけれど。

 今はちょっと量が多くて、食べる回数も多い。


 芋を蒸して潰し、そこに少量の刻み塩漬け薫製肉とハーブを混ぜた田舎料理が、卓上では大活躍している。


 これはわたしが食べられる、数少ない肉料理(?)の一つ。

 ギニと一緒に、彼のお母さんが作ってくれたのを、食べた事がある。


 あとは、卵や乳を使った料理が、次々と出てくる。

 値段が高いはずなんだけど。

 お金、大丈夫なのかな。


 夫は、わたしにはお金を使いたくないと思うのだけど。

 実家にかなりの額の援助をしてもらっているから、わたしにまでお金をかけたら、夫の商売が干上がってしまうのではないかしら。


「奥様、どうなさいました?」

「フェルタ、今って、食材が安くなってるの?

 こんなにたくさん、食べきれないのに勿体なくて」

「・・・食べられない(多量の動物脂、植物油)物は除いております。

 本来なら、(筆頭様(上司)が超うるさいので)奥様に全て食べていただきたいのですが」

「ごめんなさい、あまり食べられなくて」

「奥様は、無理をなさらなくて良いですからね(先輩、ここの奴等、プェルちゃんを餓死させる気でしたよ、絶対!!)」

「ええ、奥様が食べられるだけでよろしいですよ(本当にね、もうすぐ筆頭様(上司)が報復するから良いのよ)」


 フェルタさんとゴーティアさんは、不思議なほど、わたしに甘い。

 もちろんギニも。




  ◆




 ギニやフェルタさん、ゴーティアさんには秘密にしていたけど、二週間かけて、やっと刺繍入りの手巾(ハンカチーフ)が完成した。

 洗い替えもあるから、一人、全部で五枚。


 貴族の子女らしい趣味としてではなく、もっと実用的に、繕いや仕立てばかりしていたから、男性らしい刺繍の図柄を決めるだけで三日かかった。


 見つからないように作っていたから、時間がかかってしまったけど、喜んでくれるかな。

 上手くできたと思うんだけど。



 その日の夜、わたしはギニが来てくれるのを、心待ちにしていた。


 夜着じゃなくて、とっておきの余所行き服で、髪飾りと金の鎖も見えるように着けた。

 綺麗な色のリボンでハンカチを束ねて、朝になったら、フェルタさんとゴーティアさんにも渡せるように準備して。


 ・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。


 しかし、空が白んできても、ギニは来なかった。

 ちょっとだけでも寝ようと寝台に入り、しょぼつく目をこすって、きっと、忙しかったんだよね、と思ってみても、ささくれた心が痛い。


 何か、ギニを怒らせるような事、しちゃったんだろうか。

 最後に会った時の彼は普通だった、と思うのに。


 ギニが好きだ。

 好きになっちゃいけないのに。



「ペルティル!!」


 突然、怒鳴り声と共に、寝室に男性が飛び込んできた。

 茶色の髪に茶色の瞳の男性。

 服の上からでもわかるくらい、お腹がぼてっとしてる。

 誰?と思っていると、その後ろから、さらに数人の男性が顔を歪ませて入ってくる。


 全員が怒りの形相だ。

 なぜ?

 会ったこともない人たちに向けられる敵意に、体が竦む。


 貴族として毅然とした態度でいなくてはいけない、と気がついたのは、初めに飛び込んできた男性が、わたしの腕を掴もうとしてからで。


 キュィンッ


「ぎゃっ!」

「え?」


 聞いたことのない音を立てて、男性が吹っ飛んだ。

 わたし、何もしてないのに?と自分の腕を抱きしめる。


 吹っ飛んだ男性を助け起こした黒髪の男性が、わたしの方を見て、眉を吊り上げた。

 その目に灯る怒りが、心底怖い。


「捕まえろ!

 この魔女には国家転覆の嫌疑がかかっている!!」

「・・・え?」


 魔女?

 国家転覆?


 なんのことか分からない。

 ただ怖くて、手足を縮こませていると、突然、背後から抱きしめられた。


()、だよプェル」

「ギ、ギニ!?」


 悲鳴をあげそうになったのを、なんとか堪えて、どこから入ってきたの?といつもと同じように思った。


「シブレ・ニュンペー男爵、改めて初めまして、宮廷魔術師筆頭ギニュルックディム・セブティミヌだ」


 ええと、どうやら・・・吹っ飛んだ茶色髪のお腹ぼてっとしてる男性は、夫だったらしい。

 あれ、わたし、夫の顔を忘れてる。


 妻として、これはまずいのでは。

 夫を吹っ飛ばし、不倫相手に抱きしめられてるって!


「貴様っ、のこのこと我が家に顔を出すとは!

 人の妻に懸想する恥知らずの変態が!!」

「・・・変態はご自身の間違いなのでは?

 少なくとも俺は、女性に縛られて蹴られて(ナジ)られて(ナブ)られて悦ぶ趣味はない」

「ぐ、ぬぅっ」


 なぜかギニの言葉で、夫(多分?)が赤くなったり青くなったりしている。

 というか、何が起きているのか誰か説明してほしい。


「城より、いや、国王陛下直筆の書簡を読んだろう。

 これ以上落ちぶれたくないのであれば、荷をまとめ国外へ出られる事をお勧めするが?」

「・・・っ、妻も共に行く。

 ペルティルは我が妻なのだから」


 ギニの言葉に、にたりと笑う夫(多分、夫?)。


 ぴしり、ミシミシと周囲から音がした。

 見ると、寝室の壁一面に亀裂が走っている。

 さっきまでこんな風になってなかったのに。


「彼女の名すら正確に言えない変態男に、俺のプェルティリュを渡す気はない」


 お、お、俺の?!

 ちょっとまって、何なのこれっ!?


「ギ、ギニ!ちょっと待って、何が起きているの?

 どうしてわたしが夫と国外に行かないといけないの?

 何があったの?」

「・・・国外になんて行かせない」


 肩を掴まれ、体が反転した、かと思うと唇を塞がれていた。


「ん、むっギ、ニっ」

「絶対に、国外になんて行かせない、この変態と君が共にいるなど、考えるだけで不愉快だ!」


 だから、なんで口づけしながら、うまく話せるのよ!

 腕に精一杯の力を入れて、固い胸を押しのけようとしても、ギニの体は微動だにしない。


「それは我が妻だ!」

「プェルは()()じゃない、貴様には指一本触れさせるものか」


「〜っ!

 ギニ!落ち着いてっ」


 ギニの顔面に、わたしの拳がめり込んだ。


「おごっ」

「「「「「・・・ハァ?!

 ひぃ?!、ぎゃああああああっっ」」」」」

「あ、せ、せせ先輩っ!まずいっすよ〜!暴発するっ!!?」

ゴート(ゴーティアルフィカ)、最上級結界!!」


 なんだか背後で、色々ごちゃごちゃ聞こえているような気がする。

 それをまるっと無視して、わたしはギニだけを見つめる。


「・・・殴ってごめんね、ギニ」

「あ、相変わらず、いいパンチ、だ、いてぇ。

 プェル、君は普段とてつもなく気が弱いくせに、どうしてこういう時だけ、抉るようないい角度のを打つんだ!?」

「そ、そんなの知らないわっ」


筆頭(魔王)様〜、イチャコラすんのもいいですけど、暴発して垂れ流しの魔力、抑えてくれません〜?」


 緊張感のない女性の声に、ギニがハッと気がついたように周りを見回す。


 気がつけば、部屋の中がめちゃくちゃになっていた。

 ・・・あれ?天井がなくなってる。


 いつのまにか寝室の壁が亀裂まみれの傷だらけで、天井がどこかにいって、雲ひとつない青空が見えていた。

 無事なのはわたしとギニがいる寝台のみで、他の家具は切り裂かれたように、ズタズタになっている。


「あーあ、こうなるの分かってたから、止めたのに」

筆頭(魔王)様〜、ヘタレて、ちゃんと説明しないから、こんなことになるんすよぉ?」


 見れば、フェルタさんとゴーティアさんが、普段とは全く違う口調で、服装で、そこに立っていた。


 着ているのは、黒くて丈の長い服。

 肩から何本も色の違う飾り紐を垂らして、腰にも何色もの帯を巻いている。

 お話の中の魔術師みたいな格好。


 両手を揃えて前に掲げ、手には長い杖。

 二人の背後には、なぜかボロボロの夫と男性達。


「悪かった」


 ギニがそう言いながら手を振ると、夫?と男の人達がヘニャリと傷だらけの床に崩れ落ちた。

 フェルタさんとゴーティアさんも、深々と息をついて、その場に座り込む。


「疲れたー、筆頭(魔王)様の魔力量考えて暴発させろってのぉ」

ゴート(ゴーティアルフィカ)、無理言わないの。

 貴女だって「先輩ストップ!ストップゥ!」か」


 何が起きたか全く分からなかったけど、二人の緊張感のないやり取りに、わたしは思わず笑っていた。

 笑うわたしを、ギニが泣きそうな顔で見て、それからクシャッと笑った。


 わたしの大好きな笑顔で。









  ◆




「あ、やあっ」

「それはやめての「いや」?

 それともやめたらいやだの「いや」?」


 耳元で囁く甘い声に、唇を噛む。

 必死で声を殺すけれど、踊るような指の動きで、声が漏れてしまう。

 何を声にしても、こうやって拾われて、甘く翻弄されると分かっているから。


「ねえ、プェル?

 どっち?」

「っ、う」


 ペロリ、と首筋を暖かい舌が辿っていく。


「答えないと、鳴くことになるよ?」

「〜っ、ギニのばかっ、やめたらいや、ぁ」


 わたしが恥ずかしさで赤くなるのを見て、ギニは満足そうに笑う。


「答えても鳴かすけど」

「え?や、ギニっ」


 するりと胸元に滑り込んだ指は、とても熱い。

 口腔内を甘やかす舌で、わたしはすぐに何も考えられなくなる。


「プェル、大好きだ」

「ギニ、わたしも・・好き、大好き」

「え、えっ!?」


 もう、これ以上恥ずかしいと思うことなんて、無い。

 だって、わたしは、ギニのお嫁さんになったんだから。

 好きだって言っても、いいはずでしょ?


 固い体にのしかかられ、甘い吐息に翻弄され。

 わたしはギニの全てを受け入れる。


 優しく、でも激しく攻め立てられ、自分の喉から漏れる声が、獣じみているような気がしても。

 ギニはわたしを甘やかすのをやめてくれない。


 わたしは彼の腕の中で、溶けていく。


 本当の意味で、わたしを女にしたのは他ならぬギニで。

 男性に抱かれることの、本当の喜びや快楽をわたしに教えたのは彼で。


 わたしはもう、ギニから離れられる気がしない。


 彼が、わたしを甘やかすから。

 彼の配下の魔術師達が(筆頭って無表情と仏頂面以外もできたのか?!!と)呆れるくらい。

 国王陛下が、(こいつ、本当に『鏖』(ミナゴロシ)本人か?と)砂糖を吐きそうな顔をしてしまうくらい。


 それを全く気にしない、のが、宮廷魔術師筆頭のギニュルックディム・セブティミヌ。

 わたしの、最愛の夫。


 半精霊で、蝋燭の灯の下では緑の肌に見える、ちょっと意地悪で、すごく優しい旦那様。



 

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