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どうしてだと思う

作者: やまき たか

思い付きで、また書きました。

どうぞ!





 明日、引っ越すから。


 何の前触れもなく彼はそう言った。


 学校からの帰り道。いつも通り二人で下校をしていると、彼は珍しく、


 公園によりたい。


 と、言い出したのだ。



 いつもと違う彼の表情で、私に何かを伝えようとしていることは、何と無く分かってはいた。


 それに、彼が引っ越しをすることは大分前から私の両親から聞いていたので、驚きよりも彼がようやく話してくれたことに、私は安心をしてしまう。


 それでもやっぱり、すぐに彼が教えてくれなかったことに苛立っていた私は、


 あっそ。


 と、素っ気ない返事をすることしか出来なかった。

 私だって苛立つのだ。



 どうしてだと思う? そう、彼に問いたい。



 自分を甘やかすつもりではないが、それもそうなるだろうと、やはり思ってしまうのだ。何せ私と彼の間には、出会ってから十年以上という長い付き合いがあるにも関わらず、彼はとても大事なことを私に黙っていたのだから。


 しかし、そんなことは、彼の次の言葉によってかき消される。



 好きだ。



 彼があまりにも静かに言ったので、私は少しだけ耳を疑ったが、赤面する彼の様子を見て、私は自分の耳に間違いが無かったことを確信する。


 とはいえ、大事なのはそこではない。彼の言った言葉の方だ。


 彼は私に、好きだ、とそう言ったのだ。

 これは、私にとって、些細ながらも事件である。


 なら、だ。


 なら、尚更どうして、私に引っ越しだなんて大事なことを伝えてくれなかったのだろう。


 そして、その疑問を私は口にした。



 じゃあ、どうして引っ越しのこと、私に教えてくれなかったの?



 しかし、私の言葉に彼は黙り混んでしまう。


 私は、黙って欲しい訳じゃないんだ。話して欲しいんだ。


 私は、怒っているんだ。



 どうしてだと思う?




 時折に思う。


 好き。


 その言葉に軽さを感じてしまうことに。


 日常で使い古したその言葉は、人だけでなく、色にだって、景色にだって、食べ物にだって、何にだって使えてしまう。

 別に、その言葉を使用した彼を責めている訳じゃない。その言葉の真意を知りたいだけなのだ。

 やはり、不便な言葉だ。


 だったら私は、彼にその言葉の訂正してもらうように努めようじゃないか。その後で、引っ越しでも何でもしてもらおう。


 私はもっと便利な言葉を知っている。


 人に対して、もっとも特別な何かに対して、伝えるべき大切な言葉を、私は知っている。



 私は、貴方を愛してる。



 今、私が口にした台詞は、高校生の私には少し似合わないだろうか。いや、私が選んだ言葉に自信を持とう。


 でも、もし本当に、そんなことがあるのなら、


 自分の頬を伝う大粒の涙が、それを紛らわしてくれればいいな。


 彼の潤んだ瞳を見ながら、私はそう願うことにした。



今までと違った感じにしたくて書いてみましたけど、やっぱり今回も、もやもやというか色々何か残る感じになってしまいました。

まあ、思い付き小説集なので、取り敢えず良しとします。

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