上?それとも下?
食い物を求め洞窟の出口まで走りたどり着いた俺は外に広がる光景に言葉を失なった。
洞窟の出口は切り立った崖の中腹位にあり、眼前にあったのは見渡す限りの緑。
数ヵ所雲に届くのではないかと思わせる大樹があり、ここが日本ではないことを改めて痛感させられる。
何処まで続いてるんだ?
人が住んでるような所が見当たらないんだが…
服作るとかどんだけムリゲーだろ。
「置いていかないでくださいよ~」
羊モドキ(非常食)が遅れてやってきた。【俊敏】が低いと本当に足も遅いんだな。
服や羊モドキ(非常食)の今はどうでもいいこと置いておき、俺の胃袋がそろそろ限界で悲鳴をあげているのをどうにかしなくてはいけない。
洞窟の出口から人一人が通れるぐらいの幅がある道が斜めに上下と伸びている。
上を見上げ下も見る。
どっち行くのが食い物への近道だろうか。
「ラム、どっちに行くべきだ?」
「上じゃないでしょうか」
「なんでだ?」
「…」
勘だな。
ジト目で見てやるとプルプル震え出した。
食い物の手に入れるにはどちらかに進むしか方法はないので、こいつの幸運と俺の不幸どちらに軍配が上がるか見てみるのも面白いと思い、崖の上へ続く道を進んでいく。
ここは何がいるかわからない異世界。
先程のダッシュは軽率だったと思い今度は慎重に進む。
俺の後ろをトテトテと付いてくる羊モドキ(非常食)。
天気も良いため、ペットの散歩をしているように見えなくもないが、俺の空腹がそれはラム肉だと認識させる。
やっぱり、ジンギスカンいっとくか…
声に出したつもりはないのだが後ろを歩いていたラムが数歩後ずさった。
「何してんだ?ついてこないと置いてくぞ」
「イヤです。ちょっと待ってくださいよ~」
くだらないやり取りをしながら十分ぐらい歩くとあと数歩で崖上を覗き見ることができる位置まで来ていた。
何がいるかもわからないので慎重に進み、そ~っと崖の上へ顔を出す。
――――どうやら不幸に軍配が上がったようだ。
眠っているのだろうか。胴回りが大きな丸太ほどある緑色の蛇がとぐろ巻き小さな山を作ってた。
伸ばしたら十数メートルあるだろうとぐろの中に頭を突っ込み蛇は此方に気づく様子はない。
もしかしたら見た目だけでステータスは弱いかも知れないと蛇のステータスを見てみる。
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バジリスク(幼体)
level:15
【筋力】34
【耐久】45
【俊敏】36
【器用】18
【知力】11
【魔力】18
【運気】12
スキル
【土魔法(level2)】【石化(level1)】
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――よし、戻ろう。
初めて出会う魔物がバジリスクとかありえんだろ!
そこは普通スライムとかゴブリンだろ!
「どうしたん―――」
自分の不幸に嘆いてると空気の読めない非常食が普通に話しかけてきたので慌てて口を塞ぎ、頭を伏せる。
口許に指をあてて声を出さないように指示し、再び頭を上げて様子を伺う。
聞こえてなかったのだろうかバジリスクに動きは見られない。
自然と口から安堵の溜め息が漏れる。
気づかれないうちに戻るか。
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バジリスクに気づかれないようにゆっくりと後退し、洞窟の出口前まで戻ってきている。
これで下るの一択になったわけだが、下にもバジリスクのような化け物がいた場合俺の異世界生活は詰むわけだが…
木々が密集しているから地面は見えないが、ここから見る限り木よりデカイのはいない。
居たら居たで戻るか、非常食を囮に逃げるかだな。
「とりあえず、降りてみますか。」
誰ともなしに呟き、坂道を下っていく。