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神と変態

「……ぉ……ぉ~ぃ…お~い…」


誰かに呼び掛けられている。

瞼が重たくて開かない、これは二度寝するしかないだろ。

とりあえず、あと5分…


「いや、いい加減に起きろ」


「痛ってぇぇぇぇぇぇ」


「そう言えば怪我をしたままだったな」


あと少し惰眠を貪ろうと意識を手放しかけると突如として襲ってきた激痛に意識を急浮上させられる。

あまりの痛みに堪らず悲鳴を上げ自身の体に起こった事態を確かめようと腕に力を入れようとするが力が入らない。

そして、何故寝ていたのか思い出し身体中から嫌な汗が吹き出してくる。


なんとか動きそうな首を持ち上げ、動かない理由の確認を行う。

見なければよかったと三秒前の自分を呪いたくなる。

腕の数ヵ所から折れた骨が飛び出し全ての指が手の甲と仲良くお友達になっていた。


「うっ…」


自分の腕なのだがあまりの気持ち悪さに込み上げてくる吐き気を堪える。


「全く煩くってたまらんな。トラックに向かって手を突き出せばそうもなるだろうに。ほれ、【ヒール】」


頭上から少し怒り気味の言葉が降り注ぐと腕の周りが光に包まれ、腕からはみ出て自己主張をしていた骨やらなんやらが逆再生したかのように腕の中に戻っていった。

その光景を見届けながら腕の感覚が戻っていているのを意識しつつ、光が収まったのを確認し腕を動かしてみる。


「まじかよ…」


「まじだよ!これぐらい余裕っしょ!」


腕に気をとられ過ぎて、まだ声の主を確認していなかった。

背後に立っているだろう声の主を確認しようと振り返り言葉を失う。


「どうした?私の美しさに魅了でもされたか」


「……されてはいるが、なんで布一枚?変態なのか?」


振り返ると居たのは、絶世の美女。

俺がこれまでに見た女性の中で間違いなく最上位に入る美しさを持った女性。

美しいブロンドの髪にきれいな二重、通った鼻筋にぷっくり唇で身長は160センチぐらいだろか、お胸が少し残念だが俺のどストライクゾーンの美女。

彼女はギリシャ神話に出てくる女神がしてそうな感じの布一枚だけを身に纏っていた。

しっかり布で体を覆っているから大丈夫だと思うだろうが布が薄すぎてシルエットやらがまるわかりで意味をなしていなかった。


「誰が変態だ!これには理由があるんだよ。じろじろ見るな!」


俺の言葉に頬を赤らめ両手で隠すように体を抱える。


「変態でいるのに理由があるのか?」


「だから、変態じゃない!私は神だから信者が描いた偶像と同じ服装か貢物として得た物しか着れないんだよ!」


「神?厨二?大丈夫ですか?変態さん」


自分のことを神だと言う変態さんにジト目をプレゼントし、会話以外の物音がしたいことに違和感を感じ今更ながら辺りを見回す。


辺り見渡す限り白に埋め尽くされた空間。

たぶん、日本にはこんな場所はない。

水平線の彼方まで白にできる土地が日本にあるとは思えない。

そもそも、勝手に室内だと思っていたが建物の中かどうかも怪しい。

都合がいい表現は夢の中とか天国…


「なぁ、自称変態神さん」


「誰が自称で変態だ!本当に神だから!」


顔を真っ赤にして憤慨だと肩を上下さしている変態の主張は無視し質問を投げ掛ける。


「もしかして、俺って死んだのか?」


「……死んだとも言えるけど死んでないとも言えるかな」


「普通に意味がわからん……」


「説明しにくいんだけど、今君はそこで生きているけど地球上では死んだことになると思うから死んだとも言えるけど死んでないとも言えるってこと」


うん!さっぱり意味がわからんが、たぶん生きてはいる。

変態の言葉で重要なのは地球上ってところだな。


「地球上ってどうゆうことだ?」


「やっぱり、そこ気になるよね。じゃあ、まとめて説明しちゃうね」


変態の話を要約すると

変態は異世界の神らしく、ある事情で地球から転生できる人間がいないか探してたら、ちょうど俺が死にそうな現場を見つけて呼び出したと言うことらしい。

最後に「途中で噛んじゃって呼び出すのが一瞬遅れたから腕が潰れちゃった」と笑って誤魔化したので頬をつねっておく。


「それで事情って何?魔王討伐?俺も遂に勇者か…」


オタクなら誰もが憧れたことがある異世界転生。

なら、やることはある程度絞れてくる。

チートを手入れ仲間を作り美女と恋をし敵を倒して世界を平和へと導く物語を妄想する。


「いや、君には服を作ってもらいたい」


「……………」


…ふむ、今この変態は何と言ったのだろうか。

言い間違えたのかもしれないからもう一度確認してみるか。


「俺は勇者になればいいんだよな?」


「いや、服屋になってもらいたい」


「………」


「ちょっと痛いから頬っぺたつねらないで~」


変態なだけでなく頭も弱かったようだ。

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