遠いことの確かさ
日に日に気温が下がってきて
冬の訪れを思わす秋の終わり
教室には先生の声と、それを真剣に聞く生徒の程よい緊張感がある
いつもと変わらぬ風景だ。
それが少し煩わしくて、僕は窓の外を眺めた
だだっ広い校庭
風よけの木々
飾り同然の遊具に、校長の趣味だろうか
嫌に頑丈なつくりの鯉池
この時期になると、鯉達は壁際に密集しピタリと動かなくなる
小さいやつも大きなやつも
寒さから逃れるために集団でいることを選ぶのだ
そこに茶色がかったもみじがふわりと落ちた
鯉達は広がった波紋に驚いた様子を見せたが、やがてみんなでまた壁際に張り付いた
「え〜、『孤独』がテーマになってるこの文章だが、みんなは孤独とはなんだと思う?」
一通り教科書を読み終えた先生が質問を投げかける
手を上げる生徒はいない
先生は一つ息を吐くと
「じゃぁ」
と言って、廊下側一番後ろの女生徒を指名した
一瞬教室がざわめく
腰のあたりまで伸びた黒い髪
それを引き立たせる白い肌
スッと通った鼻筋
前髪で目から上が分からないので表情は分からない
だが口元はいつも三日月のようにほのかに湾曲していた
彼女は椅子を引きずる事なく
空中を滑るように起立した
しばらく間を空け、かすかに、だがどこまでも澄んだ声で
「つながり」
と一言発した
不意をつかれたように沈黙する教室
無論その言葉の意味を理解しているものはいない
先生でさえ、だ。
「あー」
何の感情もこもらない、言葉というより音に近い声を発し、目をしばたくと
先生は一つ頷いて思考を振り切り、べつの生徒を指名した
それから彼女に一種の興味を持ち始めた僕は、暫く彼女を観察してみた
するとどうだろう
物静かでじっとしているとばかり思っていたが
むしろ、教室を掃除したり、窓を空け喚起したり、黒板をきれいにしたりといろいろな作業をしていた
それらの作業をしている時、彼女は決まってひとりだった
もちろん、彼女がきれいにした教室では気持ちよく授業が行われるだろう
空気も吸う事になるだろうし、黒板も使われるだろう
そう考えた時、僕は彼女の言葉の意味が少し分かったような気がした
人は、人とのつながりを求めている
いつの時代でも、裏切りのない、絶対的な距離感を模索しているのだ
もしかすると、彼女はその距離感を見つけているのかもしれない。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
あらすじ冒頭にもありますが、いろんなツールで他人とつながれるいまの世の中です
顔も知らない相手と知り合い、あるいは友達となることがあると思います
しかしその密接さは逆に遠いような気もしました
なので、少し理解しにくい文になってしまったと思いますが、遠いことの密接さというのを書きたいと思い、この作品となりました。
アドバイスなどありましたら感想に加えて書いていただけると幸いです。




