偽友
「おい、ウィル。お前は何がしたい?」
男は笑いながら歩いてくる。
「ウィル、答えろ」
しかし無視し続け歩いてくる。
「応答しないなら友達としての対応はやめ、直ちに任務を遂行をはかり、戦闘態勢にはいる」
「これはこれはコールくん。もうナイトの仕事は板に付いているようで」
男は返事をした。
赤く染め上げた髪
人をけなすような声
しゃべり方
紛れもなくウィルだった。
「コールくん、下級層のトップの味わいはどうだい?」
「まあまあかな。お前はどうだ?MIMはちゃんと使いこなせてんのか?」
「ああ、もうじきこのMIMの研究が進んで僕は無敵となるのさ」
久しぶりにあった友人同士がこんな会話をするとは…
心底似つかわしくない再会だ。
「さて…、ウィル」
コールが剣を手に取る。
「茶番はここまでにしようぜ」
コールがキャリックにゴーサインを送ったと同時にコールも地を蹴り、ウィルめがけて走り始めた。
が、ウィルは一歩も動かない。
逃げもせず、守りもせず。
かと言って怖じ気ついて動けないわけでもない。
余裕がさらなる余裕を生む。
僕はインテリなのだ、と。
ナイトなどに負けるはずはない、と。
「おらぁ!」
キャリックは勢いよく剣をふろうとする。
だがキャリックは攻撃寸前に剣を落としてしまった。
(力が抜けた…?)
「キャリックくんだっけか?驚いたろう?これが僕のMIMさ」
脳を操られて剣を落とした。
剣を握る拳の力が弱まるように脳が操られた。
「キャリックくん、驚きすぎだ」
ウィルが甲高く笑う。
余裕が油断を生み
油断がスキをつくる。
先ほど目の前にいたコールはウィルの背後にいた。
(いまならいける!)
ウィルはとっさに後ろを振り返る。
コールの剣を間一髪で落とすことに成功した。
が、また振り返るとキャリックとかいうやつが剣を拾って斬ってくるに違いない。
そう思ったウィルは振り返りざまにキャリックの『剣を持っている手の力だけ』を弱くした。
剣は地に落ちた。
「ふははは!おみとお」
だがキャリックの剣を持っていなかった左手は勢いよくウィルの頬に繰り出された。
「武器を振り回すだけがナイトではないんでね」
キャリックは得意気にいう。
「てめぇら殺す」
先ほどの態度とは打って変わったウィルがいた。