皆既月食マン参上!
「俺の名は皆既月食マン! 人呼んで月食マン! 赤い身体が俺のチャームポイントだぜ!!!」
と、大都会の街中で叫ぶ彼。周囲の人たちから冷ややかな目線で見られている。
「うーん、……反応が薄いなあ。」
困り顔の彼はさておき、街の大きな電光掲示板はとあるニュースを流している。
「予言により地球が滅ぶ日は明日に迫っています。来たる皆既月食の――」
このニュースは全世界中で広まっている。故に、街中で月食マンを見る目は冷ややかなものだった。
「その冗談はよ、面白くねぇんだよッ!」
「いたっ」
月食マンは通りがかりにプラごみを投げ捨てられる。この行動は瞬く間に伝播し、道ゆく人の大勢が月食マンを非難した。
「その格好やめろ!」
「冗談になってねぇんだよ!」
「死ね!」
「いたた痛い痛い! 全く、モテる男はツライなあ。」
罵声が入り混じり、辺りは大混雑。
そんな混沌に、一つの救いの手が差し伸べられた。
「……こっち。」
「え?」
とある誰かが月食マンの手を引っ張って連れ出す。月食マンは流されるままその謎の人物についていくことになった。
走って逃げて、たどり着いたのはどこかも分からない路地裏。謎の人物も月食マンも息を切らしていた。
「はぁ……はぁ……君、何だかよく分からないけどありがとう!」
「ふぅ……どうも。」
謎の人物は、平均的な背格好の男性だった。月食マンもまたその特徴をなぞっており、二人の体格背格好はよく似ていた。
「初めまして月食マン。いきなりでごめんだけど、僕の家でちょっと話さない?」
「おぉ! やはりモテる男はツライね! ご一緒しよう!」
こうして二人は連れ立って、男の家に向かった。
*
「はい、飲み物。」
「ありがとう!」
男は月食マンに上品げな紅茶を差し出し、月食マンはそれを一飲みで飲み干した。
「早速聞きたいんだけど、月食マン。」
「何かね?」
「月食マンがこの地球に来た目的って?」
「あぁそれかい! よくぞ聞いてくれました!」
月食マンは両手を広げ、声高に言った。
「俺の目的は地球を皆既月食と同じ赤に染めること! つまりは人類を含む動物の皆殺しだ!」
「そう……。」
月食マンの自信満々な答えに対し、男の返答は簡素なものだった。まるで彼の答えに残念そうな声色である。
「ならば、僕と君は戦わなくてはいけないね。」
刹那、月食マンの右ストレートが男の腕を切断した。
「やはりそうか! お前は……」
腕の切断部から、緑色の体液が漏れ出ている。
「お前は地球を緑色に染めんとする悪の存在! 人呼んで緑一色マンだなッ!」
「その通り。僕の目的は地球を緑に染めるために植物を全て殺すこと。君の赤い血は必要ないから、最初に殺しておかなきゃ。」
「黙れ! 死ね! 麻雀の世界に帰れッ!」
かくして戦いは始まった。互いの気で家が爆破し、周囲一帯は更地になった。
「クソ……お前のせいで地面が茶色になってしまったじゃないか! 塗り直さないと……」
「こっちのセリフだよ。お前の血はここに隠しておくことにしよう。」
緑一色マンの腕は切断箇所から再生し、さらにその手から緑色の気弾を放った。
月食マンは間一髪で避ける。すると気弾はたまたまそこら辺にいた人に直撃した。
「うわぁあぁああッ……あぁ……」
人間の身体はどんどん植物になっていき、最終的には緑の体液を吐き出しながら絶命した。
「お前! よくも俺のペンキを!」
すると月食マンは激昂して赤い気弾を放った。
「当たらないよそんなの!」
緑一色マンは避ける。すると避けた先にはまた人がいて、そいつが赤い気弾に直撃した。すると
「うぶぶ……おぶぉえぁあ……!」
全身が風船のように膨らみ始め、自我を失いながら緑一色マンに突撃した。
「何ッ……!」
「おぼぶぉえぇえ!!」
緑一色マンに近づいたタイミングで、その人間は爆発した。大量の赤い血が爆ぜ、緑一色マンにびちゃびちゃ直撃する。
「はっはっは! 赤一色マンになっちゃったな!」
「……こんな屈辱は初めてだ。お前も緑に染めてやる!」
「やってみたまえよ!」
こうして戦いはより熾烈なものと化した。
一日後。
人類は消滅した。
そして植物も消滅した。
海とかも消滅して、残ったのは所々が赤と緑で彩られた大地だけだった。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……ゔぅ……、はぁ……」
二人とも困憊しきって、立っているのもやっとだ。
だが生物が根絶した今でも、二人の闘志はまだ消えていない。
大地は所々赤と緑になったが、まだ大半は茶色だからである。つまり、まだまだ染め足りないのだ。
「まだまだ……地球を赤にするまでは!」
「緑一色にするまでは……!」
二人は互いに赤と緑の血を流しながら微笑んだ。
「「俺たちの戦いは終わらねェッッ!」」
こうして、彼らの戦いはこれからも永遠に続けられるのであった。これが後世に語り継がれる超次元スプ○トゥーンである。
めでたしめでたし。




