episode.2 山頂への道中、過去回想
お久しぶりの更新です。
さて、ここまで少女と僕の出会いについて回想してきたが、山頂にいる少女のもとへ着くにはまだ時間がある。そのため、次は僕が小学5年生の頃に起きたある事件について回想していこうと思う。
僕らは能力者で、周りと比較すると確かに強い。だが、それはあくまでこの教室内では強いというだけだ。
―――
僕とスノードロップは初めて戦った日から常に一緒に過ごしている。といっても、最初の数ヶ月は一方的にスノードロップが僕の後ろを着いて回っていただけだが。
そんなある日、教官が僕たちに近づき質問をする。
「なんでお前らは常に一緒にいるのだ」
何故このような質問をするのか。それは、この教室では戦争での裏切り行為を防ぐため、人と深く関係を持つことが禁止されているからだ。僕はいつかこう言った質問をされると思っていたため、あらかじめ質問への答えを考えていた。
「僕たちが一緒にいるのは・・・」
「お前には聞いてない。スノードロップ、お前が答えよ。」
僕はこの学内で成績は優秀者だ。周りから妙に大人びているとも思われている。そのため、教官は僕が説明すると涼しい顔をして嘘を言うと思ったのだろう。
(彼女は天然だし、事前打ち合わせもしてないけど大丈夫だろうか…。)
「彼とは、お互い敵になった事を踏まえて、能力の解析を行なっています。」
確かに合理的な説明だ。しかし……。
「顔が引き攣っている。嘘をつくのが下手だな。嘘をつく以上、親密な関係を築いているに違いないな。」
バレてしまった。さて、僕らにどのような罰が与えられるのだろうか。
「まぁ、俺は教官といってもそんな高い地位ではない。だから特に何かお前らに対して罰を与えるつもりはない。今後は気を付けろよ。」
そういい、僕らはお咎め無しとなった。僕らはなんとかなったと思ったが、翌日登校し、訓練場に行くとそこには教官が倒れていた。
医務室の人がすぐに駆けつけたがすでに呼吸はしておらず、亡くなっていた。
そこで僕らは思う。きっと教官は階級が上の軍人に何か問われ、嘘を見抜かれてしまったのだと。
僕らに親密かどうかの質問なんて、教官からしたらもっと前から出来たはずだ。しかし、今まで質問なんてしなかったのに昨日急に質問をしてきた。つまり、あれはすでに危険信号だったのだろう。
恐らく、僕らの関係も今頃バレているだろう。
逃げなきゃ。どこか遠くへ。
しかし、僕らは子供だ。すぐに何者かに捕まり、抵抗も虚しく意識を失い、そのままどこかに―運ばれた。
―――
目を覚ますと、僕らは知らない部屋にいた。すぐ出ようと考えるも、手は壁の鎖に繋がれており、身動きがまともにできないようになっていた。
鎖を揺らす音が聞こえたのか、僕らを誘拐した人らが出てきた。
「お前達の教官より階級が上の軍人といえば、今お前達が置かれている立場はわかるだろう。」
「お前達は幸運にも幼いながら特殊な能力を持っており、戦争が始まれば使い物になる。」
「だから生かしてはおくが、今後どうするかは考える必要がある。」
「まぁ現段階でお前達は半年間ここにいることが決まっている。その間ここで体を鍛えて貰う。」
僕らを誘拐した軍人は計四人。拘束はされているものの、すぐには処分されない。
なぜ僕らに対して軍人は四人なのか。なぜ半年間ここにいることになっているのか。なぜ僕の隣にはスノードロップがいるのか。なぜ僕らの刀や銃は見える位置にあるのか。
など考えているうちに一人の軍人が答えてくれた。
「俺らはお前達の敵ではない。お前達の教官から面倒を見てくれと言われている。期限が半年間の理由は俺ら四人が戦争に駆り出されるからだ。」
ならなぜ……なぜ教官を……
「なぜ教官を殺した。そう言いたそうな顔をしているな。」
「あいつとは昔からの付き合いで、俺らだって殺したくはなかった。」
「だがあいつは自分の命や俺らのことよりお前らを優先した。「俺の教え子を頼む」とあいつは俺らに言ったんだ。」
「せめて俺らにも特殊能力があったら話は変わってたかもしれない。この戦争において特殊能力者は優遇される。だが俺らは凡人で、国の言葉は絶対だ。だからあいつを殺すしか手段は無かったんだ。」
………
「すまない、取り乱してしまった。みんなあいつと仲が良かったんだ。まぁ話は終わりだ。これからは学校ではなく、俺らの指示に従って貰う。」
教官の死後、僕たちは教官と親しかった軍人の下にて半年間訓練を行った。
実力も十分であると思われ、僕たち二人は異例の小学五年生にて戦争に投入された。国としては勝ったが、僕としてはこの戦争は惨敗だ。
能力者であるがためにスノードロップは敵国に捕まってしまった。