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episode.1 少年と少女の出会い

 コードネームアイビー。15歳。性別男。

 現在僕は山の麓にいる。

 街の方角からは剣戟や銃声、家屋等の崩れる音だけが響いてくる。しかし、街には熟練の兵士しか居ないのか、悲鳴は一切聞こえてこない。彼らは本当に人間なのだろうか。

 そんなことを考えながら、僕は山頂にいる標的の下へ向かう。


 その標的は、敵味方見境なく無差別に超遠距離狙撃をする少女だ。その少女が何を考えてこの戦争に参加しているのか、僕の周りにそれを知る者はいない。


 少女には不明点が多い。それもそのはず。数ヶ月前に少女のことを厄介に思ったある兵士が少女の隠れている山まで向かったが、山の麓で狙撃されてしまった。


 こんな感じで、少女に近づく者は即狙撃されてしまうため少女のことを知る者は誰一人いない。


 前述したように、本来なら少女に近づくと狙撃されてしまうはずだが、何故僕は狙撃されていないのか。また、標的は謎多き人物だが、何故少女だということを僕は知っているのだろうか。


 時は遡り、僕が9歳の頃。

 まだ戦争も本格的には開戦していないものの、数年以内には戦争が開戦するだろうと言われ、僕ら若い世代は戦うための訓練を学校で受けることになった。訓練内容は基礎的な運動能力の向上や、武器の扱い方がメインだった。

 しかし、一部の人にはそれ以外にも教育が施され、時々地下の訓練室に連れて行かれるのを見た。僕もその一部の人に該当したため、何度も地下室へと連れて行かれた。


 地下室へと連れて行かれる条件は、幼い頃に両親を亡くしていたり、友達と呼べるような人がいない人だ。例外もあるが、基本幸せを知らず、暗い表情をした人だけが地下室へと連れて行かれていた。


 なぜこのような人たちだけが集められるのか。理由は、戦争において何か大切なものを抱いていると、その国のためではなく自分のために行動する可能性が上がり、結果裏切り行為が発生すると考えられているからだ。その点、大切なものを失くし守りたいものがない者は信用される。


 この地下室で行われる訓練は基本一つ。それは三時間の演習訓練だ。

 ここの地下室はとても広く、演習訓練が出来る構造になっている。

 男だろうが女だろうが、小さかろうが大きかろうが、教官から才能を感じ取られたらここに連れてこられるため、上級生による一方的な殺戮が繰り広げられた。


 そんな中、まだ小学3年生にも関わらず、周囲から異彩を放っていると言われている者が二名いた。そう、その二名とは僕と例の標的である少女だ。


 少女のコードネームはスノードロップ。白髪に翠玉の瞳。身長はクラスの中で一番小さく、小柄で華奢な見た目をしている。しかし、少女の名は不明だ。何故ならここではコードネームでしか呼ばれていないから。


 彼女が一番得意とする武器は狙撃銃だ。命中率は100%の化け物で、撃たれた者には花が咲き、その者の生命力を奪っていき、数分でその者を死に至らしめる。ある日、なぜ少女にそのような力があるのかを教官に尋ねた事がある。すると、教官は「彼女は世界を憎み、世界に愛された者だ」と答えた。


 数日も訓練を行えば、段々と彼女の武器の弱点に気づいてくる。そう、狙撃銃は近距離戦には向いていない。そのため、接近戦に持ち込もうとする者も居たが、近づく前には撃たれてしまう。しかし、集団で行けば話は別で実際に近づけた者もいた。その者はナイフで刺されて意識を失いその場で倒れた。この表現は正しく、ナイフで刺された者は目立った外傷がなく、本当に意識を失っているように見える。ただ、その者が目を覚ますことはなかった。


 さて、ここまで彼女の能力について説明してきたが、ここからは僕のことについて話していこうと思う。


 これは僕がまだ地下室に連れて行かれる前の話だ。校庭で銃の扱いを教わっている最中に、銃を人に向けるなという指導があったにも関わらず、説明をまともに聞かずに人に向けた挙句発砲し、僕に銃弾が直撃するという問題が発生した。まだ倫理観や判断能力などが欠如している子供に興味を唆るものを持たせたら当然起き得る問題だ。


 結果僕は気絶し、医務室へ運ばれることになる。目を覚したのは1時間後で、驚くことに外傷はなかった。この事件によって僕の頑丈さが明らかとなり、地下室へ連れて行かれる事になった。僕にこれ以外特に目立ったものはなく、一番得意としている刀の扱いですら実力は平均といった感じだ。


 初めて地下で演習を行った際に受けた攻撃は100回を超える。しかし、どの攻撃も受けた直後に傷は癒え、敵に第二第三の斬撃を与えることができた。そこから四ヶ月間、演習訓練は僕の独壇場だった。

 しかしこの環境は急激に変化する。


 以前僕を撃った者が地下の訓練場に連れてこられた。なにやら銃の才能があるという事らしい。その者の実力も見ずに突然訓練が開始された。内容は新入りVS今いるメンバー全員だった。結果は惨敗。数名は撃たれて倒れ、残りのメンバーは戦意喪失。皆が降参して訓練場から出ていくが僕だけは違う。


 四ヶ月訓練して分かったが、どうやら僕は不死身らしい。この体を持ってすれば、敵を討つことができる。そう思い僕は敵のいる所まで走ったが、やはり道中で撃たれてしまう。これぐらいの威力なら致命傷ではないと思い再度足を動かそうとするが動かない。ふと撃たれた箇所を見るとそこには花が咲いていた。

 数分木の影で隠れていると僕に咲いた花は枯れていった。そこからまた動けるようになりついに敵のところまで辿り着いた。すると敵は口を開け、僕に語りかける。


「死なない人なんて初めて見た。君は私の運命の人?ひとまず本当に死なないか確かめるためにも沢山撃つね。」


 そう言い放ち、僕は沢山の銃弾を浴びることになり、その場で倒れた。


 そう、これが少女スノードロップと少年アイビーの初の戦闘であり、初めて会話を交わした瞬間であった。


「おはよ。本当に不死身なんだね。」


 目を覚ますと僕は医務室のベッドに倒れており、少女が僕の顔を覗き込んでいた。


「おはよ。訓練中に言っていた、運命の人ってどういうこと?」


「そのままの意味だよ。あなただけは私の呪いで死なないでね。好きだから。」


 そう言い少女は医務室を立ち去り、僕は再び眠りについた。


 この訓練以降、元々僕のコードネームはゾンビだったが、少女スノードロップに対抗できる唯一の人物であることからコードネームアイビーへと変化させられた。


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