八話『ややこしくした原因』
「……君らがどうしてここに呼ばれたか、分かるね?」
「…はい、承知しております。」
「……」
アルとシューティリーは、バングに呼び出され、王の間に来ていた。
そして、彼らが呼ばれた理由は他でもない。
貴族であるルーナの、殺害容疑をかけられたのだ。
「…正直、私は君が指示するとは思えないし、君が殺しをするとも思えない。」
バングは頭を抱える。
「…しかし、君らが最後まであの場にいたのも事実で…。
…そのせいで、皆が疑っているんだ。」
「それはそうでしょう。あの場合、疑われるのは僕らしかいない。
ですが、すでに僕は殺されかけていることは、あの場にいた皆様には分かっているはずです。」
「…確かにその通りだ。しかし、ルーナ嬢が殺されたのも事実だろう?」
「それは…、そうですけど…。」
アルは少し顔を伏せてしまった。
バングは申し訳なさそうにアルを見ていた。
二人は沈黙してしまった。
場の空気は冷たく、互いの立場を分かっているせいで何も発言ができなかった。
その時、ここまで無言を貫いていたシューティリーが、ようやく口を開いた。
「…もういいでしょう。」
その一言を聞いたアルは、シューティリーを見た。
バングもまた、彼女の事を見ていた。
「そろそろ姿を現してはいかがです?」
そして、シューティリーはバングの背後にそう言った。
全員戸惑った様子を見せた。
戸惑うバングをよそに、一つの拍手が玉座の後ろから聞こえた。
「素晴らしいね。バレない自信があったんだけど、まさかバレるとは。」
そして姿を現した彼を見て、シューティリーを除き、その場にいた全員が驚きの声を出した。
「お前…、いつからそこにいたのだ?」
「最初っからだよ。全員の言い分を聞いてた。」
彼は飄々とした態度で、何を考えているのか誰にも読めない。
シューティリーの前まで歩を進めると、彼女の目線に合わせる。
「ふ〜ん…。なるほどね~。これは面白い。」
彼はシューティリーの目を見つめながら、そう言った。
「突然姿を消したと思えば、突然帰ってきて…。
いったいこれまで何をしていたのだ?」
バングは呆れたように聞いた。
「少し調査の依頼があってね。その調査をしていたんだよ。」
そう言いながら、彼は懐から手紙らしきものを取り出した。
「バング、この手紙の封蝋、見覚えはない?」
それをバングの手元に、魔法で届けた。
バングはそれを受け取り、封蝋を見る。
「…これは、ベイストンの家紋?」
「そうだね。それで問題なのは、その手紙の内容だよ。」
「内容?」
バングは息を呑み、その手紙を恐る恐る開いた。
そしてそれを読んだバングは目を見開いた。
「これは本物なのか?!」
バングは声を荒らげ、彼に確認した。
彼はニヤつきながら、「さぁ?」ととぼけた。
慌てた様子のバングを見て、アルは駆け寄った。
アルもその手紙を読んで、「まさか…!」と驚いていた。
「こんなの嘘だ。…僕は信じない!」
「勝手にすれば?
でももしそれが本当なら、このまま放置すれば次の犠牲者が出るかもよ?
だけど今捕まえれば、これ以上の被害が収まるかも…?」
彼は嫌な笑みを浮かべながら、アルとバングを試すようにそう言った。
二人はしばらく悩んだ後、バングが口を開いた。
「…デール・ベイストンを拘束する。」
その言葉を聞いた近衛兵らは、大きく返事をして、皆一斉に駆け出した。
アルはその光景を見ることしかできなかった。
「おい!何だよ!?」
デールは近衛兵たちに連れられ、王の間に姿を現した。
「デール様は何もしておりません!
私はずっとデール様とおりました!」
彼の使用人が、擁護するようなことを言っているが、誰も聞こうとしない。
使用人は兵士に止められ、王の間の外へと追い出された。
「離せ!俺が何をしたっていうんだ?!」
デールは近衛兵に力付くで押さえつけられ、膝をつかされた。
「バング殿!俺は本当に何も知らないぞ!説明してくれ!」
「……そうだな、一応確認をしておこうか。」
バングはそう言うと、すべてを話した。
その話を聞き終えると、デールは何もわからないという様子で、それを否定した。
しかし、物的証拠がある以上、それを鵜呑みにする者は誰も居なかった。
「…デールさん…。」
アルは押さえつけられているデールに、憐れみの目を向けた。
デールはアルを見ると、顔が険しくなった。
「…まさか、お前が俺をハメたのか?
俺を、この俺をハメたのか!そうなんだろう!?
俺は何も知らない!お前が殺したんだろ!?俺にその罪を押し付けようとしてるんだろ!?そうのんだろ!?」
デールはアルに怒号を浴びせる。
アルは申し訳なさそうに、目を背けた。
「俺の目を見ろ!アルゥ!!!俺を陥れて何の徳があるんだ!?
俺はお前のことを高く評価していたのに、俺を陥れてなにがしたいんだ!?」
デールは目から涙を流しながら、必死に訴えかける。
「…牢へ連れて行け。」
しかし訴えは虚しく、バングの言葉によって、地下牢へ連れて行かれそうになった。
デールは必死に抵抗する。
アルはその光景に耐えれず、思わずデールに駆け寄って、庇うように兵士たちの前に立ちはだかった。
「この人は違う!」
勢いで庇ったアルは、何の確信もなくそう言ってしまった。
「…何が違うというのだ?
こちらにはもう、証拠の手紙があるんだ。
それとも、ほかに怪しい者を見つけたか?」
「そ、それは…。」
バングにそう詰められ、言葉が詰まってしまったアルは、拳を握った。
「……まだ、誰か分からないです。でも、この人じゃない、と思います…。」
「それはお前の望みだろ?
証拠がある以上、彼を見逃すことはできない。
もちろん、確信が持てない以上、彼はまだ生かされるさ。」
バングはアルを安心させるために、そう言った。
アルはどうしたらいいのかわからず、それ以上何か言うことはできなかった。
その時、再びシューティリーが口を開いた。
「…これ、どこかおかしいですね。」
「え?」
「なに?」
バングとアルは、封蝋を眺めているシューティリーに目を向けた。
「何がおかしいというのだ?」
バングは彼女にそう尋ねた。
シューティリーはいつ持ってきたのか、ベイストン家の使用している印章を見比べながら、それに応えた。
「この印章とこっちの封蝋は、よく見れば違いがあります。
ほんの僅かの差ですが、これはデールさん、ベイストン家が関与していないという立派な証拠ですね。」
そう言いながら、それをバングに手渡すと、すぐにその手紙を持ってきた男の元へ近づいた。
「…貴方はそれに気づいたうえで、あえて黙っていましたね。」
「……さぁ〜?何のことやら。」
彼は、口ではとぼけたように言うが、その顔は満面の笑みだった。
「もういいんじゃないですか?
犯人、もう分かっているのでしょう?」
「…答えちゃっていいのかい?
せっかく君の使用人と、彼の護衛が犯人を探しているのに、僕が答えちゃってさ。」
「大丈夫ですよ。
あの人たちなら、すでに犯人を突き止めているでしょうし。」
「へぇ〜、そんなに有能な子達なんだね。すごいや。」
二人の会話を聞くことしかできない皆は、コソコソと話は始めていた。
「…そうだね。でも、もうその必要はなさそうだよ。」
そう言うと、彼は扉の方へと目線を向けた。
皆もそれにつられ、一斉に扉へと注視する。
その時、扉は開かれ、三人の人影が姿を現した。
「アル様!犯人…、いや、騒動の原因を連れてきました!」
「シューティリーちゃん、貴女の言う通り、灯台下暗しってやつだったわ。」
そう言いながら、二人に連れられてこの場に来た彼女は、呑気に笑っていたのだった。
少しややこしくしなったので、ここから軌道修正していきます。
もうしばらくお付き合いください。




