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天龍の御子  作者: 文記佐輝
戦神の章
8/20

八話『ややこしくした原因』

「……君らがどうしてここに呼ばれたか、分かるね?」

「…はい、承知しております。」

「……」

アルとシューティリーは、バングに呼び出され、王の間に来ていた。

そして、彼らが呼ばれた理由は他でもない。

貴族であるルーナの、殺害容疑をかけられたのだ。

「…正直、私は君が指示するとは思えないし、君が殺しをするとも思えない。」

バングは頭を抱える。

「…しかし、君らが最後まであの場にいたのも事実で…。

…そのせいで、皆が疑っているんだ。」

「それはそうでしょう。あの場合、疑われるのは僕らしかいない。

ですが、すでに僕は殺されかけていることは、あの場にいた皆様には分かっているはずです。」

「…確かにその通りだ。しかし、ルーナ嬢が殺されたのも事実だろう?」

「それは…、そうですけど…。」

アルは少し顔を伏せてしまった。

バングは申し訳なさそうにアルを見ていた。

二人は沈黙してしまった。

場の空気は冷たく、互いの立場を分かっているせいで何も発言ができなかった。

その時、ここまで無言を貫いていたシューティリーが、ようやく口を開いた。

「…もういいでしょう。」

その一言を聞いたアルは、シューティリーを見た。

バングもまた、彼女の事を見ていた。

「そろそろ姿を現してはいかがです?」

そして、シューティリーはバングの背後にそう言った。

全員戸惑った様子を見せた。

戸惑うバングをよそに、一つの拍手が玉座の後ろから聞こえた。

「素晴らしいね。バレない自信があったんだけど、まさかバレるとは。」

そして姿を現した彼を見て、シューティリーを除き、その場にいた全員が驚きの声を出した。

「お前…、いつからそこにいたのだ?」

「最初っからだよ。全員の言い分を聞いてた。」

彼は飄々とした態度で、何を考えているのか誰にも読めない。

シューティリーの前まで歩を進めると、彼女の目線に合わせる。

「ふ〜ん…。なるほどね~。これは面白い。」

彼はシューティリーの目を見つめながら、そう言った。

「突然姿を消したと思えば、突然帰ってきて…。

いったいこれまで何をしていたのだ?」

バングは呆れたように聞いた。

「少し調査の依頼があってね。その調査をしていたんだよ。」

そう言いながら、彼は懐から手紙らしきものを取り出した。

「バング、この手紙の封蝋ふうろう、見覚えはない?」

それをバングの手元に、魔法で届けた。

バングはそれを受け取り、封蝋を見る。

「…これは、ベイストンの家紋?」

「そうだね。それで問題なのは、その手紙の内容だよ。」

「内容?」

バングは息を呑み、その手紙を恐る恐る開いた。

そしてそれを読んだバングは目を見開いた。

「これは本物なのか?!」

バングは声を荒らげ、彼に確認した。

彼はニヤつきながら、「さぁ?」ととぼけた。

慌てた様子のバングを見て、アルは駆け寄った。

アルもその手紙を読んで、「まさか…!」と驚いていた。

「こんなの嘘だ。…僕は信じない!」

「勝手にすれば?

でももしそれが本当なら、このまま放置すれば次の犠牲者が出るかもよ?

だけど今捕まえれば、これ以上の被害が収まるかも…?」

彼は嫌な笑みを浮かべながら、アルとバングを試すようにそう言った。

二人はしばらく悩んだ後、バングが口を開いた。

「…デール・ベイストンを拘束する。」

その言葉を聞いた近衛兵らは、大きく返事をして、皆一斉に駆け出した。

アルはその光景を見ることしかできなかった。


「おい!何だよ!?」

デールは近衛兵たちに連れられ、王の間に姿を現した。

「デール様は何もしておりません!

私はずっとデール様とおりました!」

彼の使用人が、擁護するようなことを言っているが、誰も聞こうとしない。

使用人は兵士に止められ、王の間の外へと追い出された。

「離せ!俺が何をしたっていうんだ?!」

デールは近衛兵に力付くで押さえつけられ、膝をつかされた。

「バング殿!俺は本当に何も知らないぞ!説明してくれ!」

「……そうだな、一応確認をしておこうか。」

バングはそう言うと、すべてを話した。

その話を聞き終えると、デールは何もわからないという様子で、それを否定した。

しかし、物的証拠がある以上、それを鵜呑みにする者は誰も居なかった。

「…デールさん…。」

アルは押さえつけられているデールに、憐れみの目を向けた。

デールはアルを見ると、顔が険しくなった。

「…まさか、お前が俺をハメたのか?

俺を、この俺をハメたのか!そうなんだろう!?

俺は何も知らない!お前が殺したんだろ!?俺にその罪を押し付けようとしてるんだろ!?そうのんだろ!?」

デールはアルに怒号を浴びせる。

アルは申し訳なさそうに、目を背けた。

「俺の目を見ろ!アルゥ!!!俺を陥れて何の徳があるんだ!?

俺はお前のことを高く評価していたのに、俺を陥れてなにがしたいんだ!?」

デールは目から涙を流しながら、必死に訴えかける。

「…牢へ連れて行け。」

しかし訴えは虚しく、バングの言葉によって、地下牢へ連れて行かれそうになった。

デールは必死に抵抗する。

アルはその光景に耐えれず、思わずデールに駆け寄って、庇うように兵士たちの前に立ちはだかった。

「この人は違う!」

勢いで庇ったアルは、何の確信もなくそう言ってしまった。

「…何が違うというのだ?

こちらにはもう、証拠の手紙があるんだ。

それとも、ほかに怪しい者を見つけたか?」

「そ、それは…。」

バングにそう詰められ、言葉が詰まってしまったアルは、拳を握った。

「……まだ、誰か分からないです。でも、この人じゃない、と思います…。」

「それはお前の望みだろ?

証拠がある以上、彼を見逃すことはできない。

もちろん、確信が持てない以上、彼はまだ生かされるさ。」

バングはアルを安心させるために、そう言った。

アルはどうしたらいいのかわからず、それ以上何か言うことはできなかった。

その時、再びシューティリーが口を開いた。

「…これ、どこかおかしいですね。」

「え?」

「なに?」

バングとアルは、封蝋を眺めているシューティリーに目を向けた。

「何がおかしいというのだ?」

バングは彼女にそう尋ねた。

シューティリーはいつ持ってきたのか、ベイストン家の使用している印章いんしょうを見比べながら、それに応えた。

「この印章とこっちの封蝋は、よく見れば違いがあります。

ほんの僅かの差ですが、これはデールさん、ベイストン家が関与していないという立派な証拠ですね。」

そう言いながら、それをバングに手渡すと、すぐにその手紙を持ってきた男の元へ近づいた。

「…貴方はそれに気づいたうえで、あえて黙っていましたね。」

「……さぁ〜?何のことやら。」

彼は、口ではとぼけたように言うが、その顔は満面の笑みだった。

「もういいんじゃないですか?

犯人、もう分かっているのでしょう?」

「…答えちゃっていいのかい?

せっかく君の使用人と、彼の護衛が犯人を探しているのに、僕が答えちゃってさ。」

「大丈夫ですよ。

あの人たちなら、すでに犯人を突き止めているでしょうし。」

「へぇ〜、そんなに有能な子達なんだね。すごいや。」

二人の会話を聞くことしかできない皆は、コソコソと話は始めていた。

「…そうだね。でも、もうその必要はなさそうだよ。」

そう言うと、彼は扉の方へと目線を向けた。

皆もそれにつられ、一斉に扉へと注視する。

その時、扉は開かれ、三人の人影が姿を現した。

「アル様!犯人…、いや、騒動の原因を連れてきました!」

「シューティリーちゃん、貴女の言う通り、灯台下暗しってやつだったわ。」

そう言いながら、二人に連れられてこの場に来た彼女は、呑気に笑っていたのだった。

少しややこしくしなったので、ここから軌道修正していきます。

もうしばらくお付き合いください。

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