十五話『原因究明』
魔法陣を使用し、白龍傭兵団とシューティリー一行は真っ暗な空間に飛んだ。
ヒメルカが杖に取り付けておいたランタンに魔力を注ぎ込み辺りを灯した。
「…いいか、ここからは二つの部隊に分けて歩く。
ヒメルカのメンバーは、俺たちよりも後ろから付いてくるんだ。
ヒメルカ、何かあったらすぐに笛を吹くこと、それだけ注意しておけ。」
「はい、お気をつけて団長。」
バイツァはザックやナイツ、弓使いを連れて先導した。
少し間を空けるため、ヒメルカはバイツァ達の背中を見ながら、辺りを警戒した。
「…ここはどこなんだ?」
「きっと、宗教団体が使用している、もしくはしていた施設でしょうね。」
「その宗教団体は、今も存在してる?」
「それは分かりません。
…ですが、間違いなくここを使用する何者かは居るでしょうね。」
リューは「ふ〜ん」と言い、腰に装着していた自身の武器を手に持った。
「団長たちの邪魔にならないように、慎重に行きましょう。」
ヒメルカは皆に指示すると、ゆっくりとその部屋から出た、
皆彼女に続き部屋を出る。
最後尾はリューとシューが務めた。
団長が率いる部隊の背中がギリギリ見える位置をキープするヒメルカは、団長が見落としたのか、開かれていない扉を発見した。
「ルイス、この部屋を見てくれる?」
「了解、後で合流するね。」
ルイスと呼ばれたタンクの女性は、その閉ざされた部屋へと慎重に入っていった。
「私も彼女と行動するよ、シュリーちゃんたちをお願い。」
「お願いします、リーナさん。」
リーナは頷くと、ルイスの後を追い部屋の中へと姿を消した。
残りのメンバーは予定通り、団長らの後を追い続けた。
しばらく歩き続けたところで、大きな広場に出た。
ヒメルカは一旦、広場への入り口前で待機した。
「こんなに広い場所が存在するなんて、いったいここはどこなの…?」
広さに驚きつつ、ヒメルカは皆がちゃんといるかを数えた。
その時だった。
「っ!?」
突然地が揺れ、足元から鋼鉄の扉が現れた。
ヒメルカは近くにいた団員とフワを抱え、すぐに避難した。
しかし、突然の揺れで動揺してしまったリューは、それに反応することができなかった。
天井が近づいてくるのを見ながら、死を悟った彼女を、シューが抱きかかえると、なんの躊躇いもなくそこから飛び降りた。
「シュー!?」
「大丈夫、しっかり捕まって…!」
シューは、力強くリューを抱きしめると、自身が下になるように地面に落ちた。
ー…リーナ&ルイス
部屋を見終えた二人は、突然の揺れに驚きつつも、すぐに皆のいるであろう場所へ走った。
しかし、二人がたどり着いた場所にヒメルカらの姿は見えなかった。
「皆はどこにいるの?」
「…ルイスさん、どうやらハメられたみたいだよ。」
「え?」
リーナは暗闇に目を向け、それに続きルイスもそちらへ目を向けた。
そこにいたのは、スケルトンの集団だった。
リーナは矢を取ると、弓に添えた。
ルイスは盾を構え、腰に挿しておいた剣を構えた。
「まさか、すでにバレていたの?!」
「そうかもね。」
先制を取ったのはリーナだった。
放たれた矢に魔力を乗せ、着弾と同時に爆発を起こした。
スケルトンは粉々になったが、すぐに再生を開始した。
「再生持ちのスケルトン!」
「厄介だ…。ここで戦い続けてもジリ貧だね。」
リーナは困ったように言った。
「じゃあ、ここはすぐに離れるべきなんじゃ?」
ルイスは盾でスケルトンを突き飛ばしながら聞いた。
それに頷いたリーナは、固く閉ざされた扉の先を見た。
「…すぐにみんなと合流すべきだね。」
「なら、私の後ろにしっかり隠れて!」
ルイスは盾を前方に構え、リーナが後ろに来たことを確認すると、そのままスケルトンたちを突き飛ばしながらその場を離れた。
ー…バイツァ
広場の中心でスケルトンたちの襲撃を受けたバイツァらは、必死に猛攻を耐えていた。
「臆するな!
再生を持っているとは言え、再生までには多少の時間がある!
慌てずに倒すんだ!」
バイツァは三人に指示を飛ばしながら、スケルトンを倒し続けた。
しかし、どれだけ倒してもすぐ復活するスケルトンに、弓使いはやられてしまった。
ザックはすぐに助けに入ったが、すでに息絶えてしまっていた。
「団長、ナイツの魔力にも限界がある!
このままじゃ、みんな死んじまいます!」
「…っ!!」
バイツァはナイツの直ぐ側まで戻り、ナイツの様子を見た。
ナイツはすでに息が上がっており、今にでも倒れそうな雰囲気が伝わってきた。
だが、考える暇を与えず、スケルトンの猛攻は続いた。
三人とも膝をついたとき、スケルトンらはなぜか攻撃を辞めた。
「…い、いったい何が起きいるんだ…?」
「今が一番のチャンスなのに…、まさか…!」
ザックは上を見上げ、息を呑んだ。
「団長…、あ、アイツって…!!」
ザックの恐怖したような声に、団長は嫌な予感を感じ上を見た。
「…なぜ、ここに…!?」
そこにいたのは、腐敗した竜だった。
そしてその竜はかつて、白龍傭兵団が討伐した竜の一匹だった。
竜を討伐したその日、多くの団員を失った原因でもあった。
(今奴と戦うには分が悪すぎる!
あのときは皆のおかげで倒せたのに、今の白龍傭兵団では歯も立たないぞ!
どうするバイツァ!考えろ!!)
バイツァは冷や汗をかきながら、必死に打開策を考えた。
しかし、どれだけ考えてもそれを倒せる未来が見えず、そして、その竜は容赦のない毒のブレスを吐いてくるのだった。
ー…リュー
「もし地下なら地上へ出れるかもしれない!」
どこからともなく現れるスケルトンを倒しながら、とにかく上を目指した。
必死に走った結果、ヒメルカらは屋上に到着した。
「…!!」
そこで、彼女たちはその景色を見て、絶句した。
なぜなら、そこは地図にも載らない島であり、近づくことも困難であるとされた南の最果てだったのだ。
「まさか…、ここの瘴気がスイリンカに流れ込んでたの…?」
どんよりとした空気を漂わせ、ヒメルカらの気分を悪化させる。
吐き気と頭痛、めまいまで感じるその場所で、魔物たちは生き生きとしている。
ここは魔物たちにとって、最高の楽園だったのだ。
追いついてきたスケルトンの集団に、ヒメルカらは追い詰められてしまった。
すでに魔力を使い果たしていたヒメルカは、柵を乗り越えるようにリューらに指示した。
リューは戸惑いつつ、指示に従うことしかできなかった。
柵を越えると、ヒメルカは覚悟を決め、皆に飛び降りるように言った。
「ここを飛び降りろって?!」
「生き残るためよリザリー。覚悟を決めて!」
そう言い切ると、リザリーの背中を押して一緒に飛び降りた。
「リューさん…、シューティリーちゃんをお願いします!」
フワはそう言うと、目をギュッと閉じて飛び降りた。
リューは頷くと、シューを抱きしめ、皆と同じように飛び降りるのだった。




