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天龍の御子  作者: 文記佐輝
戦神の章
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十話『加護』

「君、『天龍』の加護があるよ。」

「……『天龍』……?」

その名前は誰もが知っているモノ。

常識と言ってもいいだろう、その名前は、恐怖の象徴にも希望の象徴にもなる存在だった。

シューティリーは「そんなはずがないです。」と応えたが、ユウジは笑うだけで、シューティリーを不安にさせた。

「安心してよ。その加護、凄く良いものだよ。」

そう言うと、シューティリーはユウジからその説明を受けた。

説明をある程度受けたあと、シューティリーは自室に戻っていた。

「……『天龍』…ですか…。」

加護があるだけでも凄いことであり、それにプラスして『天龍』を受けているというのは、あまりにも出来過ぎていると思った。


『加護』

それは選ばれた者達にしか配られない、ギフトと呼ばれるものだ。

ギフトは様々なモノが存在しているが、未だに確認されていないギフトも数多く存在している。


『天龍』

それは天の国と呼ぼれる、『アマノリュウ』という所に住む民たちの総称である。

その住民たちのことを『天龍民』と呼ぶ。

『天龍民』は、その強さから畏怖の対象とされている。

しかし、当の『天龍民』たちは、地上の民たちと仲良くしたいと考えているらしい。それが事実かは、定かではない。


そして、『天龍』という加護。

それは、天龍の民にのみ発現するとされる、幻の加護だ。

それが意味することは、シューティリーが『天龍』の血族であるという証明になる。


「……私は、天龍とは何の関わりもないですよ…。」

シューティリーは呆れたようにそう言うと、ベッドに倒れ込んだ。

「……」

手を伸ばし、空を握りしめる。

今日だけで、ずいぶんと色々と起きた。

身体はもう限界を迎えており、疲労が全身を包み込む。

もし『天龍』であるならば、空を飛んでみたい、そんな事を思いながら、シューティリーはそのまま眠りにつくのだった。


ー…アルメルク

「王様!ゲルルクがもうそこまで来ています!」

「…万事休す、か…。」

皆が疲労を抱えながらも、国のためにいまだに戦い続けている。

王であるザーリックは、民の避難が完了するまで耐えるように伝えた。

すでに士気も下がっている中、皆はそれでも王のために戦うことを決めていた。

「王様だけでもお逃げください!」

一人の兵が、そう進言してくれたがザーリックは首を横に振った。

「私にとって、お前たちも大切な民だ。

…私がここでお前たちを見捨てることはできぬ…!。」

ザーリックは剣を抜き、ついに自身も戦場へと向かうことを決めた。

その時だった。

「伝令!!」

「何事だ…?」

慌てた様子でやってきた伝令に、何があったのかと聞いた。

伝令は息を切らしながらも、その目には希望が宿っていた。

「援軍です!援軍がやってまいりました!」

「おぉ〜!!」

それを聞いた兵たちは、歓喜の声をあげた。

「そしてその援軍を率いているのは、例の槍使いです!」

「なんと!…もう戻ったというのか!?」

ザーリックは嬉しさを感じつつも、少し不安にも感じていた。

小高い丘から、その援軍を見る

そして、その心配は杞憂であった事をすぐに知ることになった。

「…そうか、ちゃんと自身のやるべきことを続けておるのだな。」

安心したザーリックは、兵たちに向き直った。

「お前たち、今一度、私について来てくれるか?」

兵たちは「おぉー!!!」と雄たけびを上げ、やる気を高めた。

「行くぞ!『天竜』は我らを見てくださっている!!

全身全霊で、我らが故郷を守り抜くぞ!!」

ザーリックは兵たちを鼓舞すると、動ける兵たちとともに、ゲルルクの兵に向かっていくのだった。


ー…シューティリー

朝日が昇る頃、私は空を眺めていた。

「……」

私はいまだに、昨日のことを引きずっていた。

『天龍』。確かに素晴らしい加護だ。

だが、その加護があるということは、少なからず私にも、『天龍』の血を通わせていることになってしまう。

昔からずっと、畏怖の対象とされている者たちの血を通わせていると、アルやフワ、メルンたちに知られたらどうなってしまうのだろうか。

「…嫌われちゃうのかなぁ…。」

少しだけ不安を抱えつつ、私は天に手を伸ばす。

その時だった。

「…なにあれ…?」

キラッと、まるで流れ星のように何かが天から落ちているのが見えた。

間違いなく星ではないが、だからといって、あれが何かまでは分からなかった。

それに気を取られていた私は、そばに来ていたアルに気づかず、話しかけられて驚いてしまった。

尻もちをついた私を見ながら、アルは笑った。

「おいおい、そんなに驚くかぁ?」

そう言うと、心配そうに私のことを見ながら、アルは手を差し伸べてくれた。

私はそれを掴み、立ち上がる。

「すみません…。少し別のものに目を奪われていて、気づきませんでした…。」

「なんか良いものでもあったのか?」

アルは不思議そうに聞いて来た。

私は今見たものを、素直に伝えた。

「…はぇ〜、じゃあ見に行くか?」

「いえ…、あちらは行き先とは反対方向なので、それはアル様にお任せします。」

「そっか…、シューティリーたちはこのまま北上するんだっけ。」

「はい。…次行く場所は、水の都と呼ばれる国です。」

「水の都か…。確か、『スイリンカ』だったかな?」

「…えぇ、『スイリンカ』は漁業が発展していますから、知らない事も多くあると思います。

…本当なら、楽しみ、と言うべきなんでしょうが…。」

私は思わず口を滑らせそうになり、すぐに口を閉ざす。

アルは心配そうに見ており、少しだけ申し訳なく思った。

「…それより、アル様はよかったですね。無事正式に、あの領地の領主になりましたし。

復興は大変でしょうが、頑張ってくださいね。」

あの日、いろいろと面倒なことに巻き込まれたが、アルは無事に新領主となり、バングからの評価もあの日の活躍により、高く評価してもらえた。

「いろいろあったけど、まぁデール様とも仲直りできて良かったよ。

一時はどうなるかと…」

胸を撫でおろすアルを見て、私は笑った。

「ホントですね…。

ホントに、いろいろと起きすぎましたから。」

昇る太陽を見て、別れの時が近づいていることを実感する。

私たちの仲は、きっとさほど良いものではない。

だけど、それでも一緒にいれたことは、私たちにとって本当に運が良かったことだと思う。

「…また会える時は、今度こそちゃんと歓迎させてくれ。」

アルはそう言うと、御守を渡してくれた。

私はそれを抱きしめ、「ありがとう」と伝えた。

そしてその日の昼時、私たちは別々の方向へと馬車を走らせた。

「……またいつか。今度はちゃんとした出会い方をしましょう。

アル様…。」

私の旅は、まだ終わらない。

終わらせてはいけない。

まだまだ知らないことが多いいから。

私を乗せた馬車は、次の目的地を目指して走るのだった。

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