〜7限〜
さっきまでの楽しかった時間が嘘みたいに今、沈黙が続いてる。
沈黙の理由を知らないゆいちゃんは、沈黙を切り裂いて声を掛けてきてくれた。
「どうしたの?」
だけど、まだ五人グループは私に気付いていないようだったので、ゆいちゃんを心配させる訳にはいかないと思い、なんでもないと答えた。
「そっか。じゃあ、そろそろ帰る?こんな時間だし。」
私は頷いて、席から立ち上がった。
「あ。私、お手洗い行ってきていい?」
ゆいちゃんは「待ってて!」とだけ言って、走っていった。
私は五人に気付かれないように、息を殺した。
「ん、あれ?何か見たことある顔じゃん。」
「うわ、ほんとだウケるー。」
聞きたくない声が私に向けられた。冷や汗がたくさん出てきて、呼吸が浅くなった。
「お前、まだ生きてたんだなー。」
ピアスをつけた男子が笑いながらそう言った。
「え、まじそれな。なんで生きてんの?」
冗談を言ったかのように軽く笑いながらもう1人の男子も続くように言った。
「…。」
私はどうすればいいのか分からず、声も出せなかった。
五人は何が面白いのか、ずっと私を見て何かを言っては笑っている。その光景が私には、地獄のように見えた。
「つか、こんな時間じゃん。」
「うわ!俺バイトの時間、過ぎてんだけど!」
「遅刻サイテー。」
五人はさらに笑い始めた。早く帰ってくれないかと、私は祈ることしかできなかった。
「じゃあな、ダニちゃん。」
「うちもそろそろ帰りたい。」
五人はフードコートを後に帰っていった。私はようやく押し殺してた息をする事ができた。額は汗でびしょびしょだった。
しばらくすると、ゆいちゃんが帰ってきた。
「ごめんね!お待たせ!」
ハンカチをポケットにしまいながら、走ってきた。
「じゃあ、帰ろう。」
静かに頷いて、フードコートを後にした。
「あー。楽しかったねー。また来ようね!」
「そうだね…。うん、また来よう。」
そうだ。私にはゆいちゃんや友達がいる。昔とは違う。
私は、そう言い聞かせるように心の中で自身を落ち着かせた。なにより、何も知らないゆいちゃんを私の過去に巻き込む訳にはいかないと思った。