〜23限〜
今の時刻は朝の五時半。
今日は二学期の始業式がある。
新しい季節がやってくる。
「まだ夏休みの感覚が抜けないな……」
まだ早起きに慣れていない私の体を無理やり起こし、朝ごはんに食パンを食べ、学校の準備をした。
そして、七時半頃に家を出て、駅に向かった。
「あっ……」
駅に着くと、約一週間ぶりに見る姿があった。
「あっ!おはよー!」
ゆいちゃんだった。
朝が苦手なゆいちゃんだが、今日は珍しく元気だった。
「おはよ。元気だね」
「だって、宿題終わってるんだもん!夏休みの宿題、終わらせたこと無かったから、今日は気分いいよ!」
そうして私はゆいちゃんと学校に向かった。
電車の中で私はふと、ゆいちゃんに尋ねた。
「そういえば、涼は?この電車じゃないと遅刻だよね?」
「うーん……私は会ってないなー」
「そっか」
電車は彩城高校のある駅に着き、私たちは降りた。
学校に行けば、涼はいるのだと思っていたが、まだ涼は来ていないようだった。
「……」
夏休みの間、ほとんど一緒にいたせいか、涼のいない空間に対して不安な気持ちを抱いてしまった。
(前までは何も感じなかったのにな…)
しばらくすると、担任の先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。
「今日は始業式なので、このあとすぐに体育館に集まってください。
それではホームルームを終わります。」
ホームルームが終わると、クラスメイトは全員体育館に移動し始めた。
――体育館
体育館に入り、しばらくは騒ついていたが、整列し終わった頃には静かになっていた。
そして、始業式は順調に進んだ。
「皆さんが元気に登校してきてくれたことを、とても嬉しく思います。
二学期も元気に過ごしていきましょう。」
始業式が終わり、全校生徒は体育館から教室へと帰り始めた。
私もみんなに続き、体育館から出ようとしたときだった。
「ねぇ、ちょっと」
私は後ろから声を掛けられ、体育館の裏へ連れていかれた。その声の正体は私をいじめていたグループの中の一人、林という女子だった。
そして体育館の裏に着いて少しの間、沈黙が続いた。
私の足が震え始めた頃、林さんは私の方に体を向け、口を開いた。
「あんた、涼くんと距離近くない?」
「え……」
私は何が何だかよく分からなかった。
「だから、あんたは涼くんの何なの?って聞いてんの」
「幼なじみ……だけど……」
「だったら、あんなに近くなくてよくない?
いっつも良い所で涼に守られてんじゃん、あんた。」
鋭い目つきで私を睨みながら、叫んできた。
「涼くんがいないと、あんた何もできないんだね。今もそうやって黙ってばかりじゃん」
「……」
私は声が出なかった。
今まで私は一人でも平気だと思っていた。
でも、いつの間にか弱くなってしまっていたことに気がついた。
色々考えながら呆けていると、いきなりツンとした刺激が頬に走った。
パチンッ!
「そうやってスカしてる態度がムカつくって言ってんだよ!」
急なことで驚きはしたが、痛みは気にならなかった。
それより今更、私に干渉してきたことに対して疑問を持った。
「もういいわ……」
林さんはそう言葉を吐き捨てると、足早にこの場を去っていった。
そして、私は気が抜けたように地面に座りこんでしまった。
――放課後
始業式の日だったので、今日の学校は昼前で終わりだった。
「夏乃ちゃーん!一緒に帰ろー」
「あ、ゆいちゃんお疲れ様。帰ろっか。」
ゆいちゃんの元気な姿を見て、私も少し気が楽になったように感じた。
「明日は涼、来るといいね。」
「そうだねー。明日、学校来たらズル休みだったのか聞いてみよう!」
「そうだね」
そして、汗ばむ陽気の中、私たちは帰った。




