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彼と  作者: むーん


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23/24

〜23限〜

 今の時刻は朝の五時半。

 今日は二学期の始業式がある。

 新しい季節がやってくる。


「まだ夏休みの感覚が抜けないな……」


 まだ早起きに慣れていない私の体を無理やり起こし、朝ごはんに食パンを食べ、学校の準備をした。

 そして、七時半頃に家を出て、駅に向かった。


「あっ……」


 駅に着くと、約一週間ぶりに見る姿があった。


「あっ!おはよー!」


 ゆいちゃんだった。

 朝が苦手なゆいちゃんだが、今日は珍しく元気だった。


「おはよ。元気だね」


「だって、宿題終わってるんだもん!夏休みの宿題、終わらせたこと無かったから、今日は気分いいよ!」


 そうして私はゆいちゃんと学校に向かった。

 電車の中で私はふと、ゆいちゃんに尋ねた。


「そういえば、涼は?この電車じゃないと遅刻だよね?」


「うーん……私は会ってないなー」


「そっか」


 電車は彩城高校のある駅に着き、私たちは降りた。

 学校に行けば、涼はいるのだと思っていたが、まだ涼は来ていないようだった。


「……」


 夏休みの間、ほとんど一緒にいたせいか、涼のいない空間に対して不安な気持ちを抱いてしまった。


(前までは何も感じなかったのにな…)


 しばらくすると、担任の先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まった。


「今日は始業式なので、このあとすぐに体育館に集まってください。

それではホームルームを終わります。」


 ホームルームが終わると、クラスメイトは全員体育館に移動し始めた。


――体育館


 体育館に入り、しばらくは騒ついていたが、整列し終わった頃には静かになっていた。

 そして、始業式は順調に進んだ。


「皆さんが元気に登校してきてくれたことを、とても嬉しく思います。

二学期も元気に過ごしていきましょう。」


 始業式が終わり、全校生徒は体育館から教室へと帰り始めた。

 私もみんなに続き、体育館から出ようとしたときだった。


「ねぇ、ちょっと」


 私は後ろから声を掛けられ、体育館の裏へ連れていかれた。その声の正体は私をいじめていたグループの中の一人、林という女子だった。

 そして体育館の裏に着いて少しの間、沈黙が続いた。

 私の足が震え始めた頃、林さんは私の方に体を向け、口を開いた。


「あんた、涼くんと距離近くない?」


「え……」


 私は何が何だかよく分からなかった。


「だから、あんたは涼くんの何なの?って聞いてんの」


「幼なじみ……だけど……」


「だったら、あんなに近くなくてよくない?

いっつも良い所で涼に守られてんじゃん、あんた。」


 鋭い目つきで私を睨みながら、叫んできた。


「涼くんがいないと、あんた何もできないんだね。今もそうやって黙ってばかりじゃん」


「……」


 私は声が出なかった。

 今まで私は一人でも平気だと思っていた。

 でも、いつの間にか弱くなってしまっていたことに気がついた。

 色々考えながら呆けていると、いきなりツンとした刺激が頬に走った。


 パチンッ!


「そうやってスカしてる態度がムカつくって言ってんだよ!」


 急なことで驚きはしたが、痛みは気にならなかった。

 それより今更、私に干渉してきたことに対して疑問を持った。


「もういいわ……」


 林さんはそう言葉を吐き捨てると、足早にこの場を去っていった。

 そして、私は気が抜けたように地面に座りこんでしまった。


――放課後


 始業式の日だったので、今日の学校は昼前で終わりだった。


「夏乃ちゃーん!一緒に帰ろー」


「あ、ゆいちゃんお疲れ様。帰ろっか。」


 ゆいちゃんの元気な姿を見て、私も少し気が楽になったように感じた。


「明日は涼、来るといいね。」


「そうだねー。明日、学校来たらズル休みだったのか聞いてみよう!」


「そうだね」


 そして、汗ばむ陽気の中、私たちは帰った。

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