〜22限〜
ピンポーン
「はーい」
「よっ」
玄関のドアを開けると涼が手を振りながら立っていた。
そう。今日はゆいちゃんや涼と宿題をすると約束していた日だった。
「おはよう」
「おはよう。中野を迎えに行こうぜ」
「うん。そういえば、どこで宿題するのかな?図書館とか?」
「あとで中野に聞いてみようぜ。」
ゆいちゃんの家に向かいながら、そんな話をしていた。
――数十分後
「中野ぉー」
涼はインターフォンを鳴らしながら、ゆいちゃんの名前を何度も呼んでいた。
だが、ゆいちゃんはしばらく出てこなかった。
「どうしたんだ?電話してみるか?」
「うん」
涼がゆいちゃんに電話をかけると眠たそうな声が聞こえてきた。
「……おは……よ」
「もしかしてお前、今起きた?」
涼が呆れたような声でそう言うと、ゆいちゃんはようやく目を覚ました。
「……はっ!ごめーん!!」
しばらくすると、ドタバタと準備をして着替えてきたゆいちゃんが玄関のドアを開けた。
「お……おはよ」
「よっ、お寝坊さん」
涼がそう言うと、ゆいちゃんは少し申し訳なさそうな顔をした。
「つーか、今日はどこで勉強するんだ?」
涼はゆいちゃんに聞いた。
「うーん……図書館とか?」
「まぁ、そうするか」
ゆいちゃんの返答に涼が頷くと、私たちは図書館に向かうことになった。
数十分歩き、私たちは市の図書館に着いた。
館内は鳥肌が立つくらいクーラーが効き、そして、本をめくる音が聞こえてくるくらいに静まっていた。
「どこの席で勉強しよっか。」
「つか、中野。今日は静かにしてろよ。図書館だし」
「わかってるよー」
ゆいちゃんは涼に言われると、「いつもうるさくて、さーせんねー」とでも言いそうな表情でそう答えた。
一息置くと、ゆいちゃんは丸テーブルが置かれている席を指さして言った。
「じゃあ、その4人がけの席で勉強する?」
「そうだね」
そうして、席に着き、夏休みの宿題を出すと、やっと勉強会らしくペンを持ち始めた。
「……つか、お前、全部答え見る気か?」
初っ端から模範解答の冊子を開いたゆいちゃんを見て、涼は堪らずそう言った。
「なーに?その涼くんらしくない発言ー」
「言っとくけど、俺はお前より勉強できるぞ?」
そんな小さな言い争いを見ていると、私は堪えきれなくなり、笑いがこぼれた。
「何でもいいけど、二人ともちゃんと宿題終わらせなよ?終わらなかったら先生に怒られるよ?」
「分かってるよー」
ゆいちゃんは横目で涼を挑発しながら、返事をした。
「はあ……全く……」
私は思わず小声でこぼした。
その後、私は気にせず、勉強を再開した。
私が宿題を進めている間も、二人の言い争いの声が耳に入ってきていた。
――二時間後
「よし、終わった」
私は夏休みの宿題を全て終え、答案確認まで済ませていた。
「やば!私、全然終わってないー!」
案の定、ゆいちゃんはそう言った。
「俺は終わってるぞ?お前と話してるときも進めてたからな」
「えー!二人とも手伝ってよー」
ゆいちゃんは涼と私に手を合わせながら、お願いしてきた。
すると、涼が間髪入れずに返した。
「無理だ。二時間も俺を挑発してきたからな」
「もう……。私が手伝うから、どれが一番進んでないの?」
「……数学」
ゆいちゃんは申し訳なさと恥ずかしさが混じったような顔をしてそう言った。
「じゃあ、数学やるから貸して」
「ほんとに!?」
ゆいちゃんは表情が明るくなり、私に数学のワークを渡した。
「もう……。あとでちゃんと復習しなよ?」
「はーい」
――三十分後
「やっと終わったー!」
「俺らも終わったぞ」
涼も結局、数学のワークを進めるのを手伝ってくれた。
私が左利きで涼が右利きだったから、同時に進めることができた。
お昼を食べるのを忘れていたので、途中、ゆいちゃんがコンビニにサンドウィッチを買いに行ってくれたので、食べながら宿題を進めたりもした。
「もう、次からはちゃんとやるんだよ?」
「わかったー」
「じゃ、帰るか」
「うん!今日はありがとー」
そうして、私たちは家に帰ることになった。
もう日暮れを感じさせる空の色になっていて、ヒグラシの鳴き声も響いていた。
「じゃ、私こっちだから」
「うん!じゃーねー!」
「またなー」
夏が終わる。
暑さは残るのに、なぜか寂しさが込み上げてくる。
けどその代わり、新しい季節がやってくる。




