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彼と  作者: むーん


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21/24

〜21限〜

 今日はみんな、七時頃に起きた。


「おはよー。」


 ゆいちゃんは、いつもより寂しげに起きてきた。

 昨日は『帰るまでが旅行』と言っていたのが嘘みたいだった。


「どうしたんだ?昨日は元気だっただろ?」


「はぁ…。いざ、帰るとなると、やっぱり寂しくて…。」


 ゆいちゃんは「トホホ」とでも言いたげな顔で落ち込んでいた。


「また来ればいいだろ。夏に。」


 涼はまだ眠たそうな顔でボソッと言った。

 ゆいちゃんは布団を畳みながら頷いた。


「そうだねー。」


 そうして、朝ごはんを食べ終え、着替え終わると、涼の母の車に乗り込んだ。


「みんな忘れ物はない?」


「ないよ。」


 確認が終わると、涼の母はおばあちゃんに挨拶をして、車を発進させた。


――数十分後、車内


「ゆいちゃん、どうだった?」


 涼の母がゆいちゃんに聞いた。


「とても楽しくて、いい場所でした!また来たいです!」


「そうね。また来たらいいわ。」


 涼の母は嬉しそうに、そして優しい声で答えた。

 しばらくして、旅の余韻を必死に噛み締めるように騒がしかった車内も、静まり返っていて、聞こえてくるのは涼とゆいちゃんの寝息と、車の走る音だけだった。

 気がつくと、私もだんだんと意識が遠のき、窓に頭を預けた。


――目が覚めると、もう私の家だった。


「…あれ?」


「夏乃ちゃーん!着いたよー。」


 ゆいちゃんが私に声をかけている事に気が付き、しっかりと目を開け、窓から外を見ると日常に戻ってきていた。


「あ、ありがとうございます。」


 私は涼の母にお礼を言ってから、車を降り、トランクに置いてあった私の荷物を持つと、車の中にいるみんなに手を振った。


「夏乃ちゃん!またねー!」


「うん!またね。」


「お疲れ。」


 涼も手を挙げながら、笑顔でそう言った。

 そして、車が出発するのを見送ると、私は家の中に入った。


「ただいまー」


 母は仕事で、家には誰もいなかった。

 普段なら寂しく思うはずが、今日は少しも寂しくなく、むしろ、今までの旅行の余韻が私を包み込んでいた。


「楽しかったなー。」


 冷蔵庫の麦茶を飲みながら、この数日間を思い返していた。

 嫌な人たちとも会ったが、今の私には守ってくれる人たちがいる。

 私もそんな人たちを守りたいと思った。強くなりたいと思った。


「まだまだ暑いな…」


 部屋の中には眩しい光とセミの音が入ってきていた。

 しばらくダラダラしていると、メールの通知がたくさん来ていることに気がついた。


 ブブッ――


『私、家着いたよー!』


 ピコンッ


『俺も』


『楽しかったねー!来週とかはどっか行く?』


 ブブッ


『宿題やったのか?』


『あ…まだでした!』


 そんなやり取りを見て、私は堪らず笑ってしまった。


『じゃあ、宿題を一緒にやる?』


『いいね!じゃあ、来週の水曜日に行こうね!』


 とてつもない勢いで次の予定が決まった。

 でも、私はそれがとても嬉しかった。


「外、眩しいな。」

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