〜18限〜
私が夏乃ちゃんに投げた質問の答えは無かった。
少し寂しく思った私は、夏乃ちゃんの方を見た。すると、夏乃ちゃんはすでに眠っていた。
「おやすみ。夏乃ちゃん。」
私はそう言って眠ることにした。
「ふぅ……。」
目を瞑ってしばらくすると、「ブブッ」とスマホが鳴った。
スマホを見てみると、水を飲みに行ったはずの涼くんから『家の裏に来てくれ。』とメッセージが来ていた。
私は夏乃ちゃんを起こさないように、気をつけながら部屋を出た。
「そーっと……よし。」
――家の裏
「ごめん!ちょっと遅くなっちゃって。」
「あぁ、こっちこそ悪ぃな。こんな遅くに…。」
涼くんはいつもに増して真剣な表情で言葉を零した。
「なにか話?」
「ああ。あいつのことでな。」
いつも、こういう話の時は言葉を濁す涼くんだけど、今は一言一言を濁さずに話してくれていた。
「でも、大丈夫なの?夏乃ちゃんの事、私が聞いちゃって。」
「マブダチなんだろ?だったら、いつかは気付いちまう話だ。」
「そっか。」
そうして、涼は夏乃ちゃんのことについて、話を続けた。
「まずは……そうだな。奴らの事からだな。」
「奴らって、祭りの時に会った人たち?」
「ああ。男が二人で女が三人。奴らは少なくとも中学ん時から連んでるんだ。」
「そうなんだ。」
涼くんの顔は本当に夏乃ちゃんを心配しているように見えた。
「夏乃は中学ん時から、あいつらに絡まれてるんだよ。最初は靴を隠されたり、教室の椅子を隠されたりと、陰湿な感じだった。」
「…。」
「だが、エスカレートしていったんだ。変なあだ名を付けられた挙句、夏乃が仲良くしてた奴らにまで手を出し始めた。それを庇おうとした夏乃は、あいつらに監禁されたんだよ。」
「えっ…?」
私はそれを聞いても、内容を理解することができなかった。
「俺たちが通ってた中学の旧校舎に一週間だ。いじめの一線をあいつらは越えてたんだ。」
涼くんの顔は怒りと悲しみを感じているように見えた。
「俺がその事を聞いたのは、夏乃が解放された次の週だったんだ。」
「その時は誰が助けたの……?」
「旧校舎の取り壊しが決まって、業者が建物内の確認に来た時に見つかった。
そこからは、夏乃は人との関わりを避けるようになったんだ。そして、中野も知ってる通り、周りの顔を伺うようになった。だから、俺たちの気持ちの変化にもすぐ気が付くんだ。」
涼くんは拳を強く握りながら、私の目を見て話した。
「夏乃はあいつらに強いトラウマを覚えてる。だが、夏乃の心に深入りすれば、ただ傷付けるだけになる。
だから、俺は夏乃が困った顔をした時に一人にしねぇ。」
「…私も。」
涼くんの真剣で夏乃ちゃんを大切に思うような表情を見ていると、自然と私の口が開いた。
「私も夏乃ちゃんのそばにいる!
私は夏乃ちゃんに助けられてばっかりだから、私だって一緒に戦いたい!」
「そうか。じゃあ、そうしようぜ。一緒に戦おう。」
涼くんは、安心したような顔を見せると、私の手を取り、そう言った。
「いいの?」
「ああ。だって俺たちは『三人揃って一つ』なんだろ?」
「うん!」
話がまとまると、涼くんが「戻るぞ」と言い、私たちは寝室へ戻り、布団に入った。
私と夏乃ちゃんと涼くんの三人の絆は、今夜、一段と深まったんだと、ほんのり感じた。
「…おやすみ。夏乃ちゃん。」
そうして夜は更に深まり、静けさと明日への期待を全身に感じながら、私は眠りについた。




