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彼と  作者: むーん


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17/24

〜17限〜

――帰り道


「あー!楽しかったねー!」


「そうだな。」


 人々が祭り会場を去り始め、だんだんと空気が軽くなり、息が吸いやすくなった。


「あ!まだやってる屋台があるよー!お土産買ってこ!」


「まだ買うのかよ。」


 この楽しい祭りの余韻を少しも残らず味わうように、まだ私たちからは浮かれた雰囲気が抜けなかった。

 そんな時間を過ごしていた時だった。


「痛って……あれ?ダニじゃん。」


 屋台で買い物をするゆいちゃんと、それに付き添う涼をいい気分で見ていると、ぶつかって来た人から息が詰まるほど聞きたくない声が聞こえた。


「え、マージじゃーん。てか、祭り来てんのウケるっしょー!」


「ダニが浴衣着て、祭りに来るとかせっかくの楽しい雰囲気が台無しじゃんー。」


 何も声が出なかった。


「てか、なんでこっち来てんの?旅行?」


「ダニと一緒に来るような人いないでしょー。」


 笑いながらそう言うと、彼らはスタスタと歩いて去ろうとした。

 その時だった。


「おい!てめーら、言うだけ言って帰んのかよ。もうちょい遊んでけや。」


 涼は去ろうとする男子高校生の肩を掴んでそう言った。


「そうだよ!君たち、夏乃ちゃんに何するの?」


 それに続いてゆいちゃんも女子高生の手を掴んで、自分より十数センチも高い位置にある顔を睨んだ。


「チッ……。てめぇ、ボディガード付けてんのかよ。」


「は?ちげぇよ。俺らは友達だぞ。」


 悪態をついた男子高校生に、涼はそう返した。


「いやいや。こいつに友達なんていねぇし。」


「君たち!いつの話してんの?」


 声を荒らげる男子高校生に向かって、ゆいちゃんは珍しく、強めの口調でそう言い放った。


「あ〜、つまんね。お前ら帰るぞ!」


 涼とゆいちゃんに圧倒された集団は、逃げるように帰っていった。


「おい、待てよ!」


「いいよ、涼。ありがとう。」


「あ?良くねぇだろ。この旅行は、まだあと二日あんだぞ?あいつらを野放しにして楽しめるかよ!」


 涼は心配そうな顔で私を見ると、声を荒らげながらそう言った。


「そうだよ?夏乃ちゃん、過去に何があったのかは私には分からないけど、今は私たちがいるんだよ?」


「う……うん。」


 私の事をとても心配してくれて、私のために怒ってくれる。そんな二人と友達で入れることが、私はとても嬉しかった。


「帰るか……。」


 息を整えた涼がそう言うと、私たちは涼の家に向かって歩き始めた。

 道はすでに人がほとんどいなくなっていて、視界も月明かりだけが頼りだった。


――帰宅後


「ただいまー。」


「おかえり。お祭りは楽しかった?」


「……ああ。」


 涼は視線を少し落としながら、おばあちゃんに返した。

 しかし、私はおばあちゃんに「おかえり。」と言われた時、少しだけ心がホッとした。


「もうご飯できてるから、食べちゃいなさい。」


――寝室


 私たちはご飯を食べたあと、一人ずつお風呂に入り、寝室に来た。


「うっし。布団敷くか。」


「そうだね。」


 涼が音頭をとり、布団を敷こうと押し入れを開けようとした時、涼の母が部屋に来た。


「みんな、布団の場所分かったかしら?」


「はい!大丈夫です!」


 ゆいちゃんは、いつもの元気な声色で返した。


「でも、三人とも同じ部屋でいいの?男の子と女の子でしょ?ゆいちゃんは気にならないの?」


「大丈夫です!私たちはマブダチですから、三人揃って一つなんです!」


「あら、いい子ねー。じゃあ、おやすみ。」


「はーい!」


――数分後。


 部屋の電気は消され、私たちは布団に入っていた。


「ねぇ。あの人たちって何だったの?」


「……。」


「俺、ちょっと水飲んでくるわ。」


 私がゆいちゃんに何も返せずにいると、涼はそう言って寝室を出て行った。

 そしてだんだん眠くなり、私は眠りについた。

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