〜17限〜
――帰り道
「あー!楽しかったねー!」
「そうだな。」
人々が祭り会場を去り始め、だんだんと空気が軽くなり、息が吸いやすくなった。
「あ!まだやってる屋台があるよー!お土産買ってこ!」
「まだ買うのかよ。」
この楽しい祭りの余韻を少しも残らず味わうように、まだ私たちからは浮かれた雰囲気が抜けなかった。
そんな時間を過ごしていた時だった。
「痛って……あれ?ダニじゃん。」
屋台で買い物をするゆいちゃんと、それに付き添う涼をいい気分で見ていると、ぶつかって来た人から息が詰まるほど聞きたくない声が聞こえた。
「え、マージじゃーん。てか、祭り来てんのウケるっしょー!」
「ダニが浴衣着て、祭りに来るとかせっかくの楽しい雰囲気が台無しじゃんー。」
何も声が出なかった。
「てか、なんでこっち来てんの?旅行?」
「ダニと一緒に来るような人いないでしょー。」
笑いながらそう言うと、彼らはスタスタと歩いて去ろうとした。
その時だった。
「おい!てめーら、言うだけ言って帰んのかよ。もうちょい遊んでけや。」
涼は去ろうとする男子高校生の肩を掴んでそう言った。
「そうだよ!君たち、夏乃ちゃんに何するの?」
それに続いてゆいちゃんも女子高生の手を掴んで、自分より十数センチも高い位置にある顔を睨んだ。
「チッ……。てめぇ、ボディガード付けてんのかよ。」
「は?ちげぇよ。俺らは友達だぞ。」
悪態をついた男子高校生に、涼はそう返した。
「いやいや。こいつに友達なんていねぇし。」
「君たち!いつの話してんの?」
声を荒らげる男子高校生に向かって、ゆいちゃんは珍しく、強めの口調でそう言い放った。
「あ〜、つまんね。お前ら帰るぞ!」
涼とゆいちゃんに圧倒された集団は、逃げるように帰っていった。
「おい、待てよ!」
「いいよ、涼。ありがとう。」
「あ?良くねぇだろ。この旅行は、まだあと二日あんだぞ?あいつらを野放しにして楽しめるかよ!」
涼は心配そうな顔で私を見ると、声を荒らげながらそう言った。
「そうだよ?夏乃ちゃん、過去に何があったのかは私には分からないけど、今は私たちがいるんだよ?」
「う……うん。」
私の事をとても心配してくれて、私のために怒ってくれる。そんな二人と友達で入れることが、私はとても嬉しかった。
「帰るか……。」
息を整えた涼がそう言うと、私たちは涼の家に向かって歩き始めた。
道はすでに人がほとんどいなくなっていて、視界も月明かりだけが頼りだった。
――帰宅後
「ただいまー。」
「おかえり。お祭りは楽しかった?」
「……ああ。」
涼は視線を少し落としながら、おばあちゃんに返した。
しかし、私はおばあちゃんに「おかえり。」と言われた時、少しだけ心がホッとした。
「もうご飯できてるから、食べちゃいなさい。」
――寝室
私たちはご飯を食べたあと、一人ずつお風呂に入り、寝室に来た。
「うっし。布団敷くか。」
「そうだね。」
涼が音頭をとり、布団を敷こうと押し入れを開けようとした時、涼の母が部屋に来た。
「みんな、布団の場所分かったかしら?」
「はい!大丈夫です!」
ゆいちゃんは、いつもの元気な声色で返した。
「でも、三人とも同じ部屋でいいの?男の子と女の子でしょ?ゆいちゃんは気にならないの?」
「大丈夫です!私たちはマブダチですから、三人揃って一つなんです!」
「あら、いい子ねー。じゃあ、おやすみ。」
「はーい!」
――数分後。
部屋の電気は消され、私たちは布団に入っていた。
「ねぇ。あの人たちって何だったの?」
「……。」
「俺、ちょっと水飲んでくるわ。」
私がゆいちゃんに何も返せずにいると、涼はそう言って寝室を出て行った。
そしてだんだん眠くなり、私は眠りについた。




