〜16限〜
空は薄暗くなってきていて、太鼓の音、屋台や提灯の明かりが祭りの雰囲気にほんのりと彩りを加えていた。
「人、多いねー!」
「昔はこんなに人いなかったんだけどな。」
はしゃぎながら、辺りを見渡すゆいちゃんに、涼は微笑を浮かべながらそう言った。
「ちょっと前、雑誌に載ったからじゃない?」
「あ!もしかして、おすすめの移住先が載ってるやつー?」
「そうそう。」
「へー。そんなのがあんのか。」
涼は関心しながらそう言った。
「もう少し暗くなったら、花火が始まんぞ。」
「そうだったね。場所取っとく?」
「その前に屋台でいろいろ買っていきたーい!」
花火の話をしていると、両手いっぱいに屋台で買った食べ物を持ちながら、そう言った。
「ったく。まだ食うのかよ。」
「屋台だったらいくらでも食べれるよ!」
そうして、私たちは花火の場所取りをする前に、屋台でいろいろ買うことになった。
「流石にこれくらいでいいんじゃない?」
次から次へと屋台を巡っていくゆいちゃんを見て、私は少し落ち着きを取り戻しながら声をかけた。
「そうだぞ、中野。」
「いやいやー。涼くんだって夢中だったじゃん!」
「そうだったか?」
ゆいちゃんに言われた涼は、少し誤魔化しながら、にやけた顔でそう言った。
そして落ち着いた頃、場所取りに向かった。
「あっぶねー。」
「あと少しで場所が無くなるところだったね。」
混雑していて、良さげな場所がほとんど取られてしまっていた。
しかし、少し歩いてみると、まだ空いている場所が一箇所だけあった。
「こんなに平らな場所、なんで空いてたんだろーねー。」
ゆいちゃんがレジャーシートを敷きながら、軽い口調でそう言った。
「うーん。穴場だったのかな?」
「まぁ、ここ。上から見ると木で隠れて、見えねぇもんな。」
そう言って敷き終わったレジャーシートでくつろぎながら、涼は土手の上を見上げた。
「っていうか、早く屋台で買ったやつ食べよー。」
ゆいちゃんがお腹を鳴らしながらそう言った。
「そうだな。食うか。」
袋から出した焼きそばやお好み焼きを食べ始め、少しすると花火打ち上げの開始の放送が流れた。
「おっ!もう始まるよー!」
口いっぱいに食べ物を詰め込んだゆいちゃんは、放送を聞くと、更にテンションを上げた。
そうして、話をしながら楽しんでいると、「ピュイー」と音がし、夜空に花が咲いた。
「うわー!きれいー!」
「うん。綺麗。」
この祭りの会場にいる全員の顔が花火に向けられた。
そして、ゆいちゃんの顔も、涼の顔も、花火の光で輝いていた。
「すっげーな。」
何百人もいるこの会場。一人一人が色々な感情を持ちながら、大きな夜空を見上げている。
大きな音で花を咲かせたあと、パチパチと花びらを落としていく。
―――
それから、たくさんの花火が打ち上がり、花火の打ち上げは終わりを迎えた。
「ふぁー。きれいだったー!」
ゆいちゃんは花火が終わると、身体を伸ばしながら笑顔で言った。
「そうだなー!」
「ほんと。綺麗だった。」
「んじゃ、そろそろ帰るか。」
「うーん……。まだ人が多いし、もう少ししてから帰ろ。」
私は辺りを見渡しながら、涼にそう返した。
そして、花火の余韻が残っているこの空間に、帰ってく人々を気に留めず、浸っていた。
きっとこの夏は、十年先も百年先も、忘れられない。




