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彼と  作者: むーん


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15/24

〜15限〜

「あっちぃなー!」


「あっつーい!」


 涼に釣られてゆいちゃんもそう言った。

 そして涼と私が縁側で涼んでいる中、ゆいちゃんは部屋中を走りながら叫んでいた。


「ゆいちゃん、転ぶよ?」


「大丈夫ー!」


 そう言って間もなく、ゆいちゃんは畳に足を滑らせて背中から転んだ。


「あたっー!」


 そんな姿を見た涼は、冷静にツッコんだ。


「俺ですら、こうなると思った。」


「もう……ゆいちゃん大丈夫?」


 私も堪らず、ゆいちゃんに声を掛けた。


「だ……大丈夫……。」


 ゆいちゃんは、驚いたような表情を隠すように、照れ笑いをしながらそう言った。

 そうしてしばらく経った頃、スイカの乗った皿を持った涼の母が縁側に来た。


「みんなー。スイカ切ったわよー。」


 床に「コトンッ」と置くと転んだまま寝そべっているゆいちゃんを見て、微笑を浮かべながら声をかけた。


「ゆいちゃんも食べてねー。」


 そう言われたゆいちゃんは、「はーい!」と元気よく返事をしながら起き上がった。


 涼の母が戻ったあと、私たちはシャリシャリとスイカをかじっていた。


「つめてー!」


「ひんやりしてて美味しいねー!」


「そうだね。」


 太陽の暑さと、時々吹いてくる涼しい風に混じり、セミの音が聞こえてきていた。

 そして、私たちは過ぎていく夏を静かに噛み締めるように、青空を見上げながらスイカを味わった。


「そうだ。今日の夕方から祭り始まるぞ。」


「そういえば、終業式の時に言ってたね。行こっか。」


「行くー!」


 ――夕方


 私たちはお昼を食べてから、家の周辺で遊んでいた。

 しばらくすると、涼はスマホを見てから私たちに声をかけた。


「もう4時半だし、そろそろ祭り行こうぜ。5時から始まるから。」


「おっけー。」


 私が涼の声に返事をした時、ゆいちゃんは既にはしゃいでいた。


「ま、一旦うちに戻ってから行くか。」


「そうだね。」


 そうして私たちは、一度帰ってから祭りに行くことになった。

 涼の母の家に帰ると、私たちは涼の祖母に呼ばれた。

 私は昔から、涼の祖母の事をおばあちゃんと呼ぶくらい仲が良く、私が自分の祖母や家族と仲が良くなかった分、一緒にいる事が多かった。


「どうしたの?おばあちゃん。」


「夏乃ちゃん。お祭りに行くならこれを着ていってね。」


 おばあちゃんは優しい顔できれいな浴衣を渡してくれた。


「あ、ありがとう。すごく可愛いね。」


「そうでしょ?あ、ゆいちゃんの分もあるのよ。」


「え!ほんとですか?」


 ゆいちゃんも、とても嬉しそうな表情で浴衣を受け取った。


「私が若い頃、使っていた物だけど良かったら着てね。」


「ありがとうございます!」


 私とゆいちゃんは、お互いに手を貸しながら浴衣を着ることができた。

 涼は私たちの着替えの時だけ、隣の部屋で寝転がりながらテレビを見ていた。


「あら、二人ともよく似合ってる。」


 私とゆいちゃんの浴衣姿を見て、おばあちゃんはとても優しい声色でそう言ってくれた。

 そして、隣の部屋にいる涼を呼んだ。


「涼も男の子用の浴衣があるから着なさいな。」


「おっけ。」


 涼も嫌な顔をせず、浴衣に腕を通した。


「どうだ?」


「涼くん、すごい似合ってるよ!」


 ゆいちゃんは、涼の浴衣姿を見てそう言った。


「ふふっ……馬子にも衣装だね。」


 少し気恥しそうにしている涼を見て、私は冗談交じりに言った。

 すると、涼は「うるせぇ」と言いながら私の頭に軽くチョップをした。


「痛いなー。」


 今日の私は柄にもなく、少しはしゃいでいた。

 いつもより、気分が舞い上がっていて、目に映る景色がとても明るく見えていた。


「んじゃ、着替えたことだし祭り行こーぜ。」


「そうだねー!」


 涼の言葉にゆいちゃん返事をし、「行ってきます。」と言いながら祭りに向かった。


「屋台で何買おっかなー。」


「あんま無駄遣いすんなよー。」


 二人もいつも以上に上気分な様子だった。

 こんな気持ちになるのもきっと、夏のいたずらのせい。

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