〜15限〜
「あっちぃなー!」
「あっつーい!」
涼に釣られてゆいちゃんもそう言った。
そして涼と私が縁側で涼んでいる中、ゆいちゃんは部屋中を走りながら叫んでいた。
「ゆいちゃん、転ぶよ?」
「大丈夫ー!」
そう言って間もなく、ゆいちゃんは畳に足を滑らせて背中から転んだ。
「あたっー!」
そんな姿を見た涼は、冷静にツッコんだ。
「俺ですら、こうなると思った。」
「もう……ゆいちゃん大丈夫?」
私も堪らず、ゆいちゃんに声を掛けた。
「だ……大丈夫……。」
ゆいちゃんは、驚いたような表情を隠すように、照れ笑いをしながらそう言った。
そうしてしばらく経った頃、スイカの乗った皿を持った涼の母が縁側に来た。
「みんなー。スイカ切ったわよー。」
床に「コトンッ」と置くと転んだまま寝そべっているゆいちゃんを見て、微笑を浮かべながら声をかけた。
「ゆいちゃんも食べてねー。」
そう言われたゆいちゃんは、「はーい!」と元気よく返事をしながら起き上がった。
涼の母が戻ったあと、私たちはシャリシャリとスイカをかじっていた。
「つめてー!」
「ひんやりしてて美味しいねー!」
「そうだね。」
太陽の暑さと、時々吹いてくる涼しい風に混じり、セミの音が聞こえてきていた。
そして、私たちは過ぎていく夏を静かに噛み締めるように、青空を見上げながらスイカを味わった。
「そうだ。今日の夕方から祭り始まるぞ。」
「そういえば、終業式の時に言ってたね。行こっか。」
「行くー!」
――夕方
私たちはお昼を食べてから、家の周辺で遊んでいた。
しばらくすると、涼はスマホを見てから私たちに声をかけた。
「もう4時半だし、そろそろ祭り行こうぜ。5時から始まるから。」
「おっけー。」
私が涼の声に返事をした時、ゆいちゃんは既にはしゃいでいた。
「ま、一旦うちに戻ってから行くか。」
「そうだね。」
そうして私たちは、一度帰ってから祭りに行くことになった。
涼の母の家に帰ると、私たちは涼の祖母に呼ばれた。
私は昔から、涼の祖母の事をおばあちゃんと呼ぶくらい仲が良く、私が自分の祖母や家族と仲が良くなかった分、一緒にいる事が多かった。
「どうしたの?おばあちゃん。」
「夏乃ちゃん。お祭りに行くならこれを着ていってね。」
おばあちゃんは優しい顔できれいな浴衣を渡してくれた。
「あ、ありがとう。すごく可愛いね。」
「そうでしょ?あ、ゆいちゃんの分もあるのよ。」
「え!ほんとですか?」
ゆいちゃんも、とても嬉しそうな表情で浴衣を受け取った。
「私が若い頃、使っていた物だけど良かったら着てね。」
「ありがとうございます!」
私とゆいちゃんは、お互いに手を貸しながら浴衣を着ることができた。
涼は私たちの着替えの時だけ、隣の部屋で寝転がりながらテレビを見ていた。
「あら、二人ともよく似合ってる。」
私とゆいちゃんの浴衣姿を見て、おばあちゃんはとても優しい声色でそう言ってくれた。
そして、隣の部屋にいる涼を呼んだ。
「涼も男の子用の浴衣があるから着なさいな。」
「おっけ。」
涼も嫌な顔をせず、浴衣に腕を通した。
「どうだ?」
「涼くん、すごい似合ってるよ!」
ゆいちゃんは、涼の浴衣姿を見てそう言った。
「ふふっ……馬子にも衣装だね。」
少し気恥しそうにしている涼を見て、私は冗談交じりに言った。
すると、涼は「うるせぇ」と言いながら私の頭に軽くチョップをした。
「痛いなー。」
今日の私は柄にもなく、少しはしゃいでいた。
いつもより、気分が舞い上がっていて、目に映る景色がとても明るく見えていた。
「んじゃ、着替えたことだし祭り行こーぜ。」
「そうだねー!」
涼の言葉にゆいちゃん返事をし、「行ってきます。」と言いながら祭りに向かった。
「屋台で何買おっかなー。」
「あんま無駄遣いすんなよー。」
二人もいつも以上に上気分な様子だった。
こんな気持ちになるのもきっと、夏のいたずらのせい。




