〜14限〜
「おはよ。涼。」
「よう。一番乗りは夏乃だったのか。てっきり中野が一番に来ると思ってたわ。」
「あはは。確かに。」
まだ少し涼しめの時間帯、私たちは涼の家に集合していた。
――ピンポーン
「やっほー、涼くん!」
「涼、おはよ。」
「おお、来たか。待ってろ、すぐ行く。」
数十秒も待たない間に「ガチャリ」と、開いた玄関からあくびをしている涼が出てきた。
「おはよう。待たせたな。」
「大丈夫だよ。」
「私も大丈夫だよー!」
「そろそろ母さんも来るから、待っとこーぜ。」
それから私たちは外で、涼の母が来るのを明日からの事を話しながら待った。
――ガチャッ
「はい、お待たせ。二人ともおはよう。そちらの子は初めて会うわね。」
涼の母は優しそうな声であいさつをしながら、にこやかに出てきた。
「あ、初めまして。中野ゆいと言います。」
ゆいちゃんは爽やかな笑顔で、涼の母にあいさつをした。
「あら、ゆいちゃんって言うのね。これからも、涼と仲良くしてあげてね。」
「はい!」
それから私たちは車に乗りこみ、涼の家に向けて出発した。
――車内
1時間弱、団欒しながら車に乗っていると景色にだんだんと青と緑が足されていった。
席順は左に私、真ん中にゆいちゃん、右に涼が座っていた。
助手席に座らないのは、ゆいちゃんが全員で同じ席に座りたいと半ば強引に決めたからだった。
「なんか懐かしいね。」
「まぁ、夏乃は数年ぶりだもんな。帰るの。」
「行くのは涼のおばあちゃん家とはいえ、確かに久しぶりだね。」
そんな会話を聞いていた涼の母は、嬉しそうに話しかけてきた。
「夏乃ちゃんはうちの母と仲が良かったものねー。きっと、夏乃ちゃんの顔を見たら喜ぶわよ。」
少し気恥ずかしくなった私は、外の景色を見ながら、「そうかな。」と返した。
「つか、中野はどうしたんだ?」
私と反対の窓側に座っていた涼がそう言った。
そして、思い出したように私は、涼と私の間に座っているはずのゆいちゃんを見た。
すると、ゆいちゃんは「ぐぇ……。」と声を漏らしながら、青い顔をしていた。
「……ゆいちゃん、大丈夫?」
「うぅ……。大丈夫……だよ……。酔った……だけ。」
「ったく……。ガム噛むか?」
ゆいちゃんは車に酔ってしまい、ぐったりした様子で涼からガムを受け取った。
そして、涼の母からも心配されていた。
「あら、ゆいちゃん大丈夫?ちょっと休憩する?」
「い、いえ……。お構いなく……。」
「あら、そう?少し寝ていたらすぐ着くから、ゆっくりしていてね。」
ゆいちゃんは涼の母の言葉に「あい……。そうしましゅ……。」と返すと、軽く目をつぶり、私の肩に頭を預けた。
――数十分後
ゆいちゃんが眠りにつき、二十分弱が経った頃、車は既に高速道路を降りていて、のどかな町並みを走っていた。
「……なんか、この景色を見ると、帰ってきたって感じ。」
「確かにな。」
そんなことを話していると、ゆいちゃんが気付いた。
「……あれ?ここは?」
「あ、ゆいちゃん、おはよう。もうすぐ着くよ。」
「……っうわ!綺麗!」
ゆいちゃんは虚ろな目を窓の外に向けると、緑豊かな景色に、ようやく目を覚ました様子だった。
「起きたばっかなのに、元気だな。」
涼にそう言われるとゆいちゃんは、「へへへ……。」と気恥しそうに笑った。
そして少し経った頃、涼の母が私たちに声をかけた。
「はい、到着!みんな、降りて良いわよー。」
私と涼はドアを開けてそっと降りた。
ゆいちゃんは涼の母の言葉に「はーい!」と元気に返事をしながら車から降りた。
「うわー!広ーい!」
「走ると危ねぇぞー!」
広い家にはしゃぐゆいちゃんを見て涼は、声を掛けた。
「私も少し、テンション上がってるかも。」
「夏乃は無理もねぇよな。まあ、とりあえず行こうぜ。」
青が広がる空と明るい緑。
のんびりとした空気を大きく吸い込みながら進んだ。
その爽やかな空気に夏の嬉しさと切なさを感じた。




