〜10限〜
――ガチャッ
「行ってきます。」
前よりも少し元気な声でそう言って、学校へ向かった。
みんなと仲良くなる前より、心が晴れているように感じた。
「おはよー。」
「あ、夏乃ちゃん!おはよー。」
ゆいちゃんは、いつも通りあいさつを返してくれた。
「ゆいちゃん。昨日はありがとね。」
そう言うと、「こっちこそ、楽しかったよー。」と、笑顔で返してきた。
普段通り授業を受けて、数学の授業が終わった時、涼が「ようっ。」と話しかけてきた。
「あ、涼。学校来てたんだねー。」
「まぁ、出席日数が危ういし……。」
まるで何も気にしていないかのように、ボーッとしたような目で答えた。
「そっか。」
私と涼の会話は、いつもどこか気だるげで適当だった。けど、それが心地よかった。
「でも、学校休んで何してたの?」
「俺?いや、別になんも。」
眠そうな顔でそう言った。
「まぁ……。こんなんだから、入学式ん時も寝坊すんだよな。」
「あっ、あの時遅れて来たの、涼だったんだ。」
「なんだ、見てたのか。」
涼は軽めの笑みを浮かべながら冗談交じりに言った。
そう思っていたのも束の間、涼の顔からは冗談っぽさがすっと消えた。
「……で。」
「……? なに?」
「最近、あいつらと会ったらしいじゃん?面倒くせぇ事になってねぇよな?」
涼は中学の時から、「面倒くさい」と言いながら私の異変に一番に気が付いて、手助けをしてくれる。
涼に甘えず何とかしたいとは思ってはいるけど、結局私は甘えてしまっている。
そして、涼が言うことはいつも決まっている。
「ま、何かあったら手貸してやるけどよ。」
それは私が困っている時、いつもかけてくれる言葉だった。
「ありがと。でも大丈夫だよ。」
「そっか。」
涼は私の異変に気が付いている。けど、微笑みながら何も知らないフリをしてくれる。
それはきっと、これからもずっと変わらない。
――放課後
「夏乃ちゃーん!一緒に帰ろー!」
帰りのホームルームが終わり、教室から出ると、ゆいちゃんは走りながら私の方へ来た。
「うん。そういえば、今日は朝以来、会ってなかったね。」
「あー。だって、今日はただでさえ、移動教室が多いのに昼はなぜか仕事を頼まれるしさー。災難だったよ……。」
今にも「トホホ。」とでも言いそうな顔だった。
そんな表情に私も思わず「フッ……」と笑ってしまった。
「ぐっ……! 笑うなー!」
「あはは!」
そんなゆいちゃんを見ていると、再び笑いが込み上げてきた。
「じゃ、帰ろっか。」
私は笑いが収まってくると、ゆいちゃんにそう言って二人で歩き出した。
こんな何でもない日々がずっと続けばいい。




