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噂の怪 その伍  あかりさま────新時代の幻


 見えているのに見えない話を一つした。あちらは意識、概念的なものである。


 だが、現代では物理的、科学的に見えない世界が存在することを知っているだろうか。


 ……見えないもの、触れられないものとして今の時代にも起こる現象の一つに蜃気楼現象がある。


 ちょうど今頃の季節なら見る事は出来るだろう。昼間の熱い陽射し、アスファルトに浮かぶ陽炎だ。


 冬の海の漁火が蜃気楼となって、不知火などの妖怪や、龍灯などの神様にまつわる神聖なものになった例もある。


 その多くは光の屈折による大気現象とわかり、いまでは恐れも畏れもなく美しい幻想風景として楽しまれている。


 ────しかし現代の光の現象から誕生した「あかりさま」は違う。はじめはシュリーレン現象による錯覚と考えられた。


 光の屈折率の違いによる見え方の違いだ。LEDライトの発達した昨今、夜闇を照らす光の届く範囲や明るさは、照らされた対象を一瞬消してしまうくらい強力になった。


 まさにいるのに見えない状態による事故を、不注意のせいにするのが偲びない。そこで怪奇的にとらえて「あかりさま」のせいにされるようになった。


 単純に目を焼くほどに眩しい車のライトで暗闇や幻覚を生じるのも、「あかりさま」を生むきっかけにはなったことだろう。


 「あかりさま」の由来は灯りから来ているのが一般的だが、朱理などシュリーレン現象の宛字とも言われている。


 「あかりさま」はその輝きでもって、人々の真の姿をさらけ出すと言われる。


 月光の加護のない、夏の夜はとくに注意した方がよいという噂を聞いた。「あかりさま」に見つかると、隠し覆っていた全てが見えるようになるからだ。


 シュリーレン現象は水の中で砂糖を溶かすなど、透明な媒質の中で確認しやすい。しかし光の屈折率が違うときに見えるものであるため、大気中でも日中でも確認出来る。


 「あかりさま」の本質は光だ。のっぺらぼうや口裂け女すら、この「あかりさま」の登場により駆逐されてしまった。 


 見えない顔や裂けた口もが、「あかりさま」の力により、顔が映し出され、裂けた口が消えたせいだ。


 増強された肉や厚いおしろい、削り歪めた骨まで晒してしまう恐ろしさは、現代人にとって恐怖でしかないのではないか。


 どうせならば悪事を重ねる罪人達の闇も明るみに晒してほしいものである。

 

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