目次にないお話
祖父が亡くなり、父親と一緒に離れの倉庫の整理をしていた時の事だった。古い雑誌の束が出てきた。父親が集めていた漫画の雑誌だ。
父親は懐かしいと言いながら片付けを中断し束になった雑誌の紐を解く。
気がついたのはいつだったか。隅から隅まで読んでいて、作者の一コマといまの呟きのようなメッセージまで楽しんでいて……あれ? ってなった。
ギリギリまで掲載が間に合うかわからない連載が落ちた時に、新人の漫画と差し替えられて起きる現象など……そんな噂を耳にした。
今の時代と違って原稿を書くのも届けるのも、それに読むことも全て紙媒体だったため、制限時間はシビアだったのだろう。
すっかり忘れていたけれど、昔の雑誌にはわりとあった事らしい。手違いやミスで原稿が消えることもあったようだ。
現代では多少のミスも、機器の進歩がフォローしてくれる。いずれ成りすましやゴーストライターなどではなく、本人データを集積したAIか身代わりに……動くようになるかもしれない。
ミスのない効率的で完璧なプログラム同士のやり取りに、非効率でミスを誘発する当人達はいらなくなってしまうだろう。
技術の進歩が人を殺す事は、機械化による大量生産の現場で見られる現象だ。勤続形態や健康状態など人の環境に左右されなくなった機械化による安定した供給は、多大な利をもたらした。
その革新の波が芸術面にも及ぶとは、思いもしなかった。対岸の火事のように我々記者は思っていた。
予兆はあった。数字稼ぎ、金稼ぎのために、音を奏でること、文字を書くことすら効率を求め出した。世間も完全さを求め、些細なミスも認めず許せなくなった。
全てを代わりにやれるものがあるというのに、誰が失敗の多いオリジナルを求めるだろうか。
世界が滅ぶには、何も大災害や未知の病気や巨大隕石の衝突である必要はないのだ。進化する事で存在価値を失う、それも滅びに向かう。
消える、失うという事は……逆に増える、見つかる事もあるわけだが。欠点を愛せない世界には未来が見えない。
失われた文明が滅んだのも、そんな理由かもしれない。
話が大きくなったが、この目次にない記事はホラー(法螺) な面が含まれている。話半分の間に挿し込まれているので、話半分に読んで欲しい。
この目次に記載のない記事がある……を可視化すると、こうなる。この話はサイバーホラーに属する。
存在の失われた死後の世界の話であり、存在する事で掲載順に少し意味を持たせる話になる。
奇しくも次の話数は伍。「ご」は誤で砂でもある。砂のように消えた話と扱うにはちょうどいい。
お読みいただきありがとうございます。
このお話は目次には載っていません。理由は必要なのだけど、必要のない遊びだからです。
ホラー要素も薄々ですが、ホラー話の閑話に法螺話で息抜きをどうぞ。