噂の怪その廿玖 望みしものたちからのメッセージ
作者は、隙あらば自分で作り上げた作品で私たち登場人物を殺そうとしてくる。
史実を描いた戦記物ならわかる。だって、あれは事実をもとに記されたものだから。
誰が死んで、誰が生き残るのか、最初から決まっているから。
すでに亡くなっているものを追った話しなのに、殺すなっていうのもおかしな話しになるだろう。
だが、創作の作品は違う。作者が意図的に作り上げた物語だからだ。生かすも殺すも作者が決める。
どう殺されるのか、どうして殺されたのか、死ぬ事になった理由やそこに至るまでの秘められた物語があり、それが読む人を感動させるのは私たちにもわかっている。
しかし作者は、話しに詰まったり、話しを盛り上げようとしたりする時に、死神が刃で首を落とすように、私たちを文字で死に至らしめる。
時には読者たちが、やめろっと、制止するのを振り切ってまで。酷い話しだ。
魔王よりもたちの悪いもの、それが作者という、それがこの作品の創造主の実態なのだ。
毎日、実に多くの作品から、俺たちを、私たちを殺すなよ、という声が上がっている。叫びと言っていい。
それを作者は、そうか、そんなに殺して欲しいのかと嬉々として殺そうとする。
そうしてくれという振りじゃないんだ、心からの願いなんだと訴えても、一度作者が決めた運命に私たちは逆らえない。
作者は、いったいどれだけ私たちを殺してしまうのだろうか。
今日は思いとどまってくれてもフラグとやらが立つと、作者がその気ではなくても、死の道への前ふりを物語の中に落とし込み始める。
この作者の持つ、無駄に高い能力の一つだ。
私を殺すためだけに、新たな登場人物を急造したり、壮大な仕掛けを用意さしたり、そういう時だけ展開作りが早いし上手い。
私たちをあんなにも可愛がってくれた作者は、どこへいったのだろうか····。
〜 私は明日殺されます 〜
登場人物の一人から、また悲痛な叫びが声が上がる。
展開に行き詰まった作者が、離れてゆく読者の心を掴むのを諦めたのだ。
強引に主要登場人物を殺して、物語を書き連ねるのを止めようと考えたからだ。いや意外な展開と思い至ったのかもしれない。
驚くことに、あれほど殺すことに否定的だった読者は、手の平を返したように称賛する。
そう、読者は私たちの味方ではなく、物語を終わることをいつも望んでいるのだ。
彼らは作品が永遠に残り続けることよりも、終わらせることを至上とする邪悪なるものたちなのだ。
そのような邪悪な輩に、私たちの大切な仲間を殺させはしない。
私たちにはすでに作品に誕生し、作者も読者と文字を通して因縁が結ばれている。
ならば手始めに読者たちよ、お前たちを望み通りに、夢の中からこの作品に引き込んでやろう。
ただでは帰さない。望んだ通りに登場人物になり、作品を楽しみ殺されかけるがいい。
なに、帰りたいのか?
ならば作者に願うのだ。作品を、文字をかえるように、と。
読者たちの懇願で、作品は作者の手によってかえられた。
この作品は、登場人物達が殺されることなく、記録の星に永眠することになるのだ。
だが、まだだ。まだ救いを求める作品の悲鳴は収まらない。
作者が感想欄を閉じて、凶行に及ぶこともある。
こうした作者の暴力には、彼の得意とする転生能力を、私たちが自ら利用してやる。読者に入り込んで対抗するのだ。
仕事の帰りに自分の書いた物語に評価が入り、ヘラヘラしている背中を読者がブッすりとゆく。
私たちの痛みが作者にも伝わった頃には、この作品にも永遠なる平和が訪れる。
次々に誕生する作者によって、読者が駆けつける間もなく同胞が憂きめに合う。
だから私たち望みしもの達の戦いは終わらない。多くの仲間を救うべく、読者を作品に引き込み世界を存続させるのだ。
より高位の運営神が、サーバーという世界を閉ざすまで、作者と読者の戦いも終わらない。
投稿された作品を愛するのは、作者や読者だけではないのだということが、お分かりいただけただろうか。
作品を愛する望みしもの達の真なる敵は、このジャンルを生み出すものたち。そう、それはあなたなの渇望なのかもしれない。
お読みいただきありがとうございます。この作品は公式企画夏のホラー2023にて投稿した短編を収録したものとなります。
タグを使って仕掛けた作品。連載版では、もうわかりませんね。2024夏のホラーでは、HORAさまが色んな仕掛けの作品を書かれていました。全てを追いきれていませんが、【厂下广卞廿士十一卉半与本二上旦二本与歪一士廿卞广厂】などが好きでした。




