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新説 怪奇佰談  作者: モモル24号


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噂の怪その拾弐 噂の隣人 〜 ホラーおばさんと腐った肉じゃが 〜


 子供の頃の話になる。私の家の周りの畑が売られて、住宅が建ち始めた。その頃はまだ隣家に何かを感じる事はなく、新しい友達が出来ればいいな‥‥くらいに思っていた。


 しかし、やって来たのは両親より一回り上の夫婦だった。旦那さんはタクシーの運転手らしく、帰りが遅いためあまり知らない。


 おばさんの方は地声が大きく、良く言えば面倒見の良い世話焼き、悪く言えば無神経でお節介。私はその近所に越してきたおばさんはあまり好きな方ではなかった。


 嫌味な物言いで、両親を侮辱するような喋り方をするからだ。声が大きいので近所で噂話をしているとすぐわかった。


 子供ながらに大好きな両親がいじめられるような気持ちになって、居た堪れない気持ちもあったと思う。


 決定的に嫌う理由は、勝手に家へあがり込んで来て、自分の家族が食べ残した物を押し付けて来るからだった。鍵をかけると呼び鈴を鳴らしまくり、ガチャガチャとドアノブを壊すくらい回す。


「いるんでしょー、開けてー」


「お裾分け持って来たから、子供にあげてー」


 二階の部屋に居ても聞こえるくらいの声で、騒ぎ立てる。庭に入り込んで、居間のガラス戸から中を覗きバンバン叩くこともあった。


 まるで出来の悪いホラー‥‥恐怖の時間だ。放っておくと近所迷惑になるので開けざるを得ない。


 善意の気持ちからなのかもしれないが、痩せている私を見てあの家は子供にろくにご飯も食べさせていないんだよ‥‥そうおばさんが噂を流しているのを私は知っていた。


 ────腐りかけの残飯のようなもの。いや臭いから腐っていたし、食べかけも混ざって凄く気持ち悪かった覚えがある。


 冷凍庫に何年放置されていたのか分からないデカい箱のアイス。霜がおりて冷凍庫の嫌な匂いを吸いまくった中身の殆どないアイス。


 黴の浮いた腐臭がする肉じゃがのような煮物を食えと、押し付けられた時の笑顔が不気味で背筋に怖気が走った。


 人が良い母親の困った表情をみた時に、私はホラーおばさんを退治したいと思った。


 新しく引っ越して来た人達は、この町に評判が良いのに、噂にならない病院のある事を知らない。


 評判だけは聞く事はあっても、どういう病院かまでは知らないはずだ。一度入院すれば二度と戻れない病院。私はいつも屯するおばさん達の屯する場所で機会をまった。


 そして夏バテで体調が悪いのだと話しているおばさんに、評判の良い病院で検査してもらうといいよ、そう教えた。他のおばさん達も評判は知っていたので、一緒になって進めていた。子供の私が言うより信憑性が高まり、隣のおばさんは検査入院をしてみる事になった。


 たとえ検査して悪い所がなくても、入院は入院。噂にならない病院は、おばさんを簡単に退院させる事はなかった。


 それから一月後、おばさんは病院で亡くなった。ハッキリした病状は分からない。病院の評判は変わらず良く、悪い噂は耳にしない。


 しかし隣家のおばさんの噂は聞いた。糖尿病の悪化で片足をなくし、結局見つけきれなかった癌が身体のあちらこちらに転移し亡くなったという。


 隣家のおばさんに苛まされる事がなくなって、私の家は以前のような平穏を取り戻していた。


 私には腐臭に異様に忌避反応が残されたまま。病院の噂はあい変わらず何もない。いつものように屯するおばさん達も、私の家の悪い噂をする事はなくなり、妙に晴れやかな顔に見えた。



 いつかこの町には住まない方が良いという噂がたつのかもしれない。


 静かに暮らしたいだけの私のような人達は、その噂を甘んじて受け入れるつもりだ。


 後を追うように隣家の旦那さんはタクシーで事故を起こして亡くなった。空き家となった隣家は売りに出されて、また新たな隣人がやって来るのだろう。

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