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暗雲の壁  作者: 三音 光
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再会~敵対

再会~敵対


寝室の扉がノックされ、龍輔が返事をすると、薄いピンクのニット素材のカーディガンに、黒のフレアスカートの美奈萌がドアから入ってきた。

「おはようございます、龍輔さま」

胸元の柔らかなリボンが彼女をより可憐に見せていた。

「おはようございます、ミナモさん」

龍輔はベッドから降りて、ミナモに微笑む。

「昨日の疲れは御座いませんか?」

ミナモが訊ねる。

 昨日は、ミナモと数人の戦士と共に、ウインガル公国の兵士達が潜んでいた場所に乗り込んだ。しかし、建物の中には誰もいなかった。その付近を捜索したが、何も発見する事は出来なかった。

「ミナモさんこそお疲れになってはいませんか?」

「わたしくしは大丈夫です、あ、朝食の用意が出来ていますのでいらしてください」

と、龍輔の問いかけに少し頬を染め、一礼すると部屋を出て行った。

 着替えを済ませ、リビングのソファーに腰を下ろして煙草をくわえた。

突然テーブルのインターホンのランプが赤く光り、

「リュウさま、至急指令室までおいで下さい」

クロガ司令官の声がリビングに響いた。

制服に着替えた龍輔とミナモが指令室に入ると、すでに集まっていた戦士たちが敬礼で迎えた。

「リュウさま、ウインガル公国の者達を発見したとの報告が入りました」

クロガ司令官は、龍輔の事を最初から『リュウさま』と呼んでいた。

「わかりました、直ちに現場に向かいましょう」

まだ、龍輔の記憶は戻っていないのだが、昨日もずっと呼ばれていた所為か差ほど違和感はなく会話をしていた。


 龍輔達の部隊は工場の跡地に散開していた。司令官のクロガは、通信機から次々と入る情報をまとめ、的確な指示を伝えていた。

「クロガ司令!敵のアジトの入り口を発見致しました」

偵察していた戦士からの報告が入った。そのまま監視を続ける事をクロガが伝えると、龍輔を見て頷いた。

龍輔は、ミナモ、クロガ、数人の戦士たちと報告のあった場所に到着し、森の中で偵察をしていた戦士の報告を聞いた。目の前にある倉庫の入り口から数人が出入りしているのを確認した、とのことである。しかし今の場所から倉庫までは身を隠せる物が何もなかった。近づけばすぐに発見されてしまう。クロガと数人の戦士たちはこれからの作戦を話し合っていた。

 すると、上空から微かに音が聞こえた。龍輔は空を見上げると黒い点を発見した。隣にいたミナモが龍輔に双眼鏡を差し出した。龍輔はそれを受け取り、空を見た。黒い点は、ヘリコプターだった。近づくにつれエンジン音が大きくなり爆音と共に、倉庫の前にそれは着陸した。数十名は乗れるのではないかという大型のヘリだった。ヘリのドアが開き、中から階段が現れ、黒いスーツ姿にサングラスを掛けた男が二人降りてきた。一人はヘリのドアの前に待機し辺りを警戒していた。もう一人は倉庫の扉の前で立ち止まると、左腕を口元に近づけ何かを話していた。通信機のような物が手首にあるようだ。暫くすると、倉庫の扉が開いて黒い軍服のような服を着た二人の男が現れドアの左右に分かれると向かい合って頭を下げた。その間から白い軍服に身を包んだ者が現れる。

「リュウさま、あの女性がウインガル公国の姫、ミナミリアです」

振り返ると、いつの間にか龍輔の後ろに双眼鏡をのぞくクロガがいた。龍輔は再び双眼鏡をのぞき、その顔を確認した。

「!?…みなみ…」

驚きのあまり声を漏らす龍輔。彼の眼に映ったのはウインガル公国の姫、ミナミリアではなく、鈴元南美だった。

(どうしてこんなところに…)

ミナモもその顔に覚えがあるらしく、驚いた顔で言葉を失っていた。

「あの者たちを捕えるのだ、必ず生きたまま捕えるのだぞ」

戦士たちは無言のまま頷き、戦闘態勢に入った。

「狙撃班以外は、正面から突っ込む、続けぇ!」

クロガと数名の戦士が勢いよく森を抜けだす。それに気付いた敵の兵士が銃を構えたが、狙撃班の攻撃に倒れた。慌てて、龍輔とミナモが走り出す。ヘリから数人の兵士が飛び出してくる。スーツの二人の男に護られたウインガル公国の姫は、ヘリに向かっている。龍輔は敵味方をすり抜けながら、ヘリに向かう。そしてそれを援護するミナモ。 「みなみーー!」

龍輔は剣を抜き、叫びながらヘリに近づく。姫を護っていた二人が狙撃され倒れる。向かい合う龍輔とミナミリア。

「みなみ…」

近づこうとした瞬間、ミナミリアが剣を構える。

「みなみ!?」

愕きのあまりに立ちすくむ龍輔に、ミナミリアの剣が振り下ろされる。

「!?」

ミナモの剣がそれを受け止める。

「リュウさま、お下がりください」

ミナモの声も届かず立ち竦む龍輔。

「お前がミレニアルのリュウか、これ以上の邪魔は許さん」

そこにいたのは龍輔が知る南美ではなかった。必死でミナミリアの攻撃を受けるミナモだが防ぐだけで精一杯だった。ミナミリアの蹴りがミナモの腹部に入り、後ろに倒れる。ミナミリアの剣は龍輔に向かった。辛うじて剣で受け止める龍輔。目の前にミナミリアの顔が近づく。

「みなみ、俺だ!龍輔だ!」

「何を言っておる、貴様など知らん」

ミナミリアは剣を押しつけ後ろに飛んだ。その後ろから敵の兵士が龍輔に襲いかかる。身体が覚えているのか龍輔は華麗な剣さばきで、敵を倒す。

「リュウ王子、覚悟!」

剣を横から振り払うミナミリア…しかし、何かがその剣を受け止めた。

「ミナモさん…!」

剣を縦に受けたミナモだったが、受け切れずにミナミリアの剣はミナモの脇腹に食い込んでいた。剣を引き抜き下がるミナミリア。ミナモの脇腹が赤く染まり片膝をつくミナモ。

「うっ…」

しかし、剣はミナミリアに真っすぐ伸びている。そこへ現れた敵の兵士がミナミリアの前に立ち、

「ミナミリアさま、へりにお乗りください」

と、ミナモの剣をけん制する。兵士の言葉にヘリに乗り込むミナミリア。龍輔がミナモの前に出て剣を構える。その兵士がミナモを見て驚く。

「ミナモさま…」

へりに乗り込もうとしたミナミリアが振り返る。龍輔が兵士に剣を振り下ろすと、兵士は後ろに飛び、ヘリの入口にいたミナミリアを中に入れると、ドアを閉めた。

龍輔は振り返りミナモに駆け寄った。

「ミナモさん…誰か!ミナモさんの手当を…」

その声をかき消すように、爆音とともに舞い上がるヘリ。


 ヘリの中のミナミリアは、一人の兵士に訊ねた。

「カムロイ隊長、そなたはリュウ王子のそばにいた女性を知っているのか?」

「いえ、人違いかと…」

ミナミリアの問いかけに頭を下げたまま答える。

「そなたは、あの者の名前を呼んだのではないか?何を知っておる、話せ!」

カムロイは静かに頭を上げ答えた。

「…ミナミリアさまのお姉さまである、ミナモさまに…」

再び頭を下げ、言葉を詰まらせた。ミナミリアは椅子から立ち上がり、窓から下を見下ろした。横になって動かないミナモとそばに寄り添うリュウ王子が見えた。

「なぜだ…なぜ、姉上がリュウ王子のそばにいるのだ!」

兵士の襟を掴んで訊ねるミナミリア。

「すぐにヘリを降ろせ、姉上を助けるのだ!」

涙ながらに訴えるミナミリア。

「申し訳ありません、これ以上姫様を危険な目には…」

俯きながら答える兵士に泣き崩れるミナミリアであった。


 「倉庫の中には数人の兵士がいましたが、すべて取り押さえました。また、兵器を製造するための設備があり、この世界の人々が囚われておりましたが、ここでの記憶を消し解放いたしました」

「そうか、ご苦労だった」

兵士の報告にクロガ司令が答えた。

「ところで、ミナモさまの容態はどうなのだ?」

「傷が深く、出血も多いとのことですが、リュウさまが輸血に協力して頂き、只今治療中でございます」

そう答えると敬礼をして指令室を出ていった。

 龍輔は輸血を終わり、手術室の前の廊下の椅子に腰かけていた。目を閉じると浮かんでくるのは、変わり果てた南美の姿だった。

(なぜ、南美さんは…全く俺を覚えていなかった…いったい何があったのだ…それに、あの敵の兵士が、ミナモさんの名前を呼んだのはなぜだ?…)

手術室のドアが開き、ストレッチャーに乗せられたミナモが出てきた。

「ミナモさんは、どうなのですか?」

「暫くは安静にしなければなりませんが、大丈夫です、リュウさまの輸血のおかげで手術は成功いたしました」

微笑みながら医療班の主任が答えた。

「有難うございました」

龍輔は頭を下げた。



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