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そして私は駐妻になった  作者: 寅さんちの三毛
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旅立ち……の前

何年も前の話。


いつかは行くかもしれない。

そんなことを夫さんから言われ続けていた私が聞かされたのは、アメリカ赴任。


「あ、アメリカなんだ」


意外。アジアだと思っていた。うちの夫さんのお仕事、アジアが多いって聞いていたんだけど。

アメリカかぁ。英語なんて一切わからないのに。そうかぁ、アメリカかぁ。


「へぇ、ロサンゼルス? へぇ、西なんだ。へぇ」


知らんがな。


「すごく羨ましがられてる? え? 住みやすいの?」


知らんがな。

日本語通じないんでしょ? それなら、どこでも住みにくいわ。


で、駐妻になるためには何したらいいの?


パスポート切れてんじゃん。子供と一緒に取りに行くか。あ、ビザも取るのね。オーケーオーケー、行くよ大使館。


え? 夫さん、先にアメリカ行くの? 

引っ越しとか全部私がすんの? うわぁ、無理じゃん? 

引っ越しの日程、電気、ガス、電話の契約。住所変更に、不用品の処分。全部私やんの? 知ってると思うけど、私めっちゃ頼れない女だよ? 適当だよ? 知ってるよね?

あ、仕方ない? そりゃそうだね。夫さん、先にアメリカ行っちゃうもんね。


え? アメリカって、日本と電圧違うの? 家電壊れるって? 仕方ないから、全部、誰かにあげちゃうか。


引っ越しってさ、時間があっても、できることって少ないんだよね。だって、引っ越す寸前まで生活はしてるんだから。

そんで、結局ギリギリでバタバタする。仕方ないよね。


でも、ソワソワするから、なにかやっているんだわ。本当に落ち着かないの。

アメリカに送るもの、日本の倉庫に預けるもの、誰かにあげるもの、捨てるもの。


あ、子供の英語ってどうなるの? 日本の勉強とかどうしているんだろ? え? 帰国子女財団なんてあるの? いろんなこと教えてくれるんだ。よし行ってみよう。


とりあえず、子供の役に立ちそうな本を何冊か買って、職員の人に、そりゃそうだねってことやら、へぇーそうなのって感じの話を聞いて、神妙な顔して頷いてたわ。


車の運転免許証は更新して、国際免許も取った。これ一年有効なんだって。へぇ。それはいいね。英語で免許とか取れる気しないし、一年はこれで乗り切れるんだ。いいじゃん。


家は売ってくよ。だって、管理が大変て聞くし、いつ帰ってくるかわからないからね。お、意外と高く売れた。ラッキー。


私がアメリカかぁ。いやぁー、意外すぎて他人事だわー。


あー、なんか足りてない気がする。何か忘れているような。ま、いっか。

よし、行くぞ、アメリカ!


こんな感じでアメリカに旅立った。

それはそれは、不安しかない適当なスタートだった。


後日、子供の給食費が未納との連絡が……。

いや、それについては小学校まで行って確認したけど、大丈夫ですって言ってたよね? なんでアメリカ着いてからそんなことを言う?

すみません、お義母さん。払っておいてくれますか? 本当にすみません……。


いや、幸先わるっ!



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