6 湖で魚釣り
「ねえ、メローリ」
「なに、お母さん」
「なんだか、いつの間にかお空の上にハート型の何かが浮いているみたいなんだけど、あれ、何なのかしら?」
「私よくわかんなーい」
「そうよねえ。落ちたりしてきたら怖いわねえ」
「きっと大丈夫だよ!」
よし。大人たちにはバレてるんだけどバレてない。主に犯人とか。
「今日は湖に住む魚を捕まえてこようー!」
「おー!」
「うさー!」
「ということで、マジツヨ、カゼツヨ。どっか池か川につれてって」
「わかりました」
「それなら良いところを知っている。俺様に任せろ」
「何、我の方が知っている。ここは我が案内する」
「何?」
「なんだと?」
「ちょっと待って。二人共。家来の痴話喧嘩なんて見たくない」
「はっ」
「まずはどんな魚をとるかやね。んー。大きすぎても困るし、小さいのでいいか。ええと、小さいのでいいよね?」
「私おっきいのが良いー!」
「いきなりスイーリアとレトリアの意見が割れたー!」
「どうしよー!」
「いや、どうもせんわ。時間はいっぱいあるし、まずは大きい魚を狙ってもいいよ」
「ありがとうレトリアー!」
「うーむ。レトリア、大人である」
「マジツヨとカゼツヨは、大きい魚のいる場所を知っている?」
「魚なんてどれも同じだろう」
「俺様はもちろん知っているぞ!」
「じゃあここはカゼツヨに任せよう」
「そんなバカな!」
「うん。マジツヨ。さっきの反応で結果は決まったようなものだよ」
「ぐううっ」
「じゃあ次は、魚を運ぶケースやね」
「おおなるほどー。レトリアあったまいー!」
「さすがレトリア、賢い!」
「褒めるのはケースが用意できてからにして。それで、マジツヨはどんな物でも生み出せるんだよね。なら、用意してくれないかなー?」
「よかろう。どんなケースだ?」
「スマホで検索して。透明なやつがいいんだけど」
「なるほど。ここでスマホを使うのか。どれどれ」
「ほう。スマホとは便利なものだな」
マジツヨとカゼツヨがスマホを使う。
「あと、釣り竿も作ってほしいんだよなー」
「ああ、釣りね。確かに、それが無難かな」
「私も、釣りしてみたい!」
「よし。それじゃあ釣り竿も、マジツヨに作ってもらおう!」
「おー!」
数分後。
「ふむ。こんなものでいいか」
マジツヨがケースと釣り竿を用意した。
けれど、そのケースがドラゴンが運ぶようなビッグサイズだった。
「マジツヨ、そのケース大きすぎじゃない?」
「そうか、たくさん運ぶならこの方が良いと思うが」
「マジツヨが運べるんなら、これでもいいんじゃない?」
「うーん、スイーリアの言う通りか。それじゃあ魚を釣りに出発だー!」
「おー!」
マジツヨがドラゴンモードになり、ケースを持つ。
すると。
ガシャーン!
マジツヨの力でケースが壊れた。
「あー」
「そんな、ケースが壊れちゃった!」
「マジツヨ、あたりに破片があったら危ないから、周囲にディスペルして!」
「うう、わかった。すまない」
「まったく。マジツヨは不器用だなあ」
「そう言うならカゼツヨ。お前が作れ」
「俺様はお前程魔法が達者ではない」
「やっぱりマジツヨ。もっと小さいケースの方が良いんじゃない?」
「そうかもしれぬ。すまぬ、メローリ様。世話をかける」
「まあ全部マジツヨ任せだから、責めはしないけど。あ、そうだ。マジツヨ。私から魔力を与えれば、その分丈夫なケースを作れる?」
「うむ。やってみよう」
試したところ、今度こそ丈夫なケースが作れ、その後カゼツヨの先導で魚釣りに向かった。
やって来たのは、大きな湖。
「ここに大きな魚がいる」
「そのカゼツヨの一言で不安になった。カゼツヨ、いったいどれくらい大きいの?」
「それは見てからのお楽しみだ」
「不安だ」
「レトリア、そんな不安にならなくてもいいじゃない。心配しすぎよ」
「そうよ。これから釣りを楽しもう!」
俺はそう言って、釣りを始めた。
「それー!」
「私も、それー!」
「まあ、釣れてから考えればいいか。それ!」
三人で釣りを始める。
数分後。
「ねえ、まだ釣れないのお?」
スイーリアがそう言った。
「こういうのは運だからなあ。私達、テクニックとかないし」
レトリアがまったりしながら言う。
「テクニックがあれば釣れるの?」
「いやいやスイーリア。そう簡単なものじゃない。なにせ、水中を相手にすることだからね」
俺がそう言う。第一、釣りのテクニックがどういうものかもわかってない。
「でもこのままじゃ全然魚が釣れないわよ。どうにかして釣れないかしら?」
「では、我が魚をとってこようか?」
「む。それくらい、俺様もできるぞ」
ここでマジツヨとカゼツヨがそう言った。
「そうかあ。うーんじゃあ、二人に頼もっかな」
その方が早いなら、頼むのもありだろう。
「よしわかった。ではとってくる」
「俺様は、マジツヨより大きいのをとってくる」
「ふ、お前にできるかな」
「できるさ。俺様の方が凄いからな。それ!」
こうしてマジツヨとカゼツヨが湖の中にとびこんだ。
「あいつら、勢いよく入ってったなあ」
「これだけ騒がしくしたら、魚も寄り付かないだろうね。メローリ、スイーリア、一旦釣りやめよう。もしくは、ポイント変えるよ」
「はーい」
「でもあの二人をおいて場所を変えるのもなんだから、しばらく休憩してよっか」
俺たちは釣り竿を地面に起き、裸足で湖をバシャバシャけったりしながら遊んだ。
するとすぐに、マジツヨとカゼツヨが帰ってくる。
ザッバーン!
「メローリ様、今帰ったぞ!」
「どうだ、俺様の方が大きいだろう!」
そう言って二人が見せたのは、どちらもギリギリケースに入りそうなサイズのビッグフィッシュ。
「でかすぎ!」
「わー凄い、とっても大きいお魚!」
「こんなの絶対釣れんわ!」
「さあメローリ様、ほめてください。スイーリアとレトリアも賛美をおくってよいですよ」
「これだけ大きければ満足だろう」
「たしかに満足だけど、ケースが足りない。マジツヨ、もう一個ケースを作って!」
「ああ、わかった」
「お待ちなさい!」
なぜかここでそんな声が響いて、湖からおば、げふんげふん、お姉さんが現れた。
「私はこの湖の精霊。あなた方。その湖の主とナンバー2を持っていくのはどうかおやめください」
「なんで。別にいいけど。そんなに大切な魚だった?」
「ええ。そう言えばそうです。そのツートップ魚がいなくなれば、湖の中はまた魚乱世に逆戻り。湖の平和のためにも、そちらの魚がいなければならないのです」
「なるほど。キング的存在だったか。じゃあここは返した方が良いかな」
「ですがメローリ様。この魚は我らがとったものだ。生殺与奪の権利は我らにある」
「そうだそうだ」
「もし返してくれたら、おわびに金の魚と銀の魚をあげます」
「やったー私そっちの方が良いー!」
「よし。では魚を返すぞ」
「それ!」
マジツヨとカゼツヨはあっという間に魚を湖に返した。
「それではどうぞ、金の魚と銀の魚です」
そして普通のサイズのゴールドフィッシュ、シルバーフィッシュをもらう。
「きれー。でもなんだか小さいわね」
「いやいやスイーリア、これが普通くらいなんよ。まあ、こっちの方が珍しいかもね」
「じゃあこれを持って帰ろう。精霊さんありがとー!」
俺たちは湖の精霊に手を振って、魚が入ったケースと共にマジツヨとカゼツヨの力で飛び立った。
釣りは失敗したけど、まあ結果オーライだ。
「湖は大きいけれど、魚はこれだけでいいかな?」
「なんか二匹だけでいいって言ってますよ。この魚達」
「マジツヨ、魚の言葉がわかるの?」
「はい」
「俺様もわかりますよ。湖を二匹じめしたいそうです」
「独り占めならぬ、かあ。まあ、別にそれでもいいかな」
「なんか贅沢な魚をもらったみたいね」
「他の魚とケンカしてしまうかもしれないなら、たしかにこれ以上魚を入れられないわね」
「餌は何がいいかな」
「水草とかでいいんじゃないですか。我が適当に生やしときます」
「あ、じゃあ頼む」
ひとまずこれで、秘密基地島は魚も完備されて、より完璧になったって感じかな。
ひとまずここまでで投稿を止めます。
よければベストキュンキュン、イメージボールも読んでください。