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第28話 ウリス湖の壊れ桟橋

 ウリス湖は見渡す限り水面下に緑色の水草が生えていて、小魚やエビなどが至るところにいた。水深は浅いようで、遠浅で急に水深が深くなるようだ。道なりに行ったところにある壊れた桟橋からは霊峰が見えている。


「水草の妖精でもいそうね」

「昔は稀に現れたらしいけど、最近は現れないと聞きます」

「オスカー様は妖精って見たことあるの?」

「夜に現れる松明みたいなのくらいかな」

「会話はできないよね?」

「無理」


 オスカー君が笑ったので、私もつられ笑いで意味もなく微笑んでしまう。

 それにしても、私は新入り二人を守り通せるのだろうか。


 落ち着かない気持ちはやがて不安に置き換わる。

 私は壊れた桟橋の先端に座りこみ、靴を脱いで静かに指先を湖につけた。

 考えるほど不安は増してしまう。


 ふと足元を見るとソフィーと水龍が水草を交わしながら泳いでいた。

 すっかり忘れていたら、勝手に泳いでいたのだ。


 マイペースさが羨ましいよ。



 双子といえば真面目に辺りを警戒している。ビエレッテは双子を眺めながら、思い出したかのように剣を振っている。訓練なのか少女観察なのかはっきりしない。


 オスカー君は私の隣に立って、採って来たキノコや季節の果物等を指さした。砂地に籠が置いてあり、地味なキノコが多数、水中には果物が籐籠に入れられて冷やされている。


「今の季節は少ないけど、秋になるともっと多くの果実が実るからね」

「それでもたくさん!」

「子供のころから山歩き好きだったし、単なる慣れだよ……」

「秋か、確か紅葉がきれいだって侍女が言ってた」

「一度見に来たら? 母や弟たちが喜んで歓迎すると思うよ」

「そうね。ところでオスカー様は歓迎してくれないの?」

「いや、その、僕は……」


 恥ずかしそうにして壊れた桟橋の先端まで行ってしまう。何故かちょっとイラっとした。

 期待した答えじゃなかったよ……。


 私は少しだけ桟橋の先に移動して、また腰を下ろして湖を見つめる。

 オスカー君が隣に腰を下ろした。


「カーラ様、何か隠し事してないですか? 僕でよければ話していただけると」

「うん、いつか話そうと思ってたし、聞いてくれると助かる」


 私は転生のことを除外して、強制的に秘密組織に参加させられて、敵対勢力に付け狙われていることを説明した。守護勇者のこと黒の手帳なども話した。


 そういえば、守護勇者のことモザイカに聞かないと。

 質問をやっと思いだした。


「カーラ様、敵対勢力と所属組織のこと詳しく知ってますか? ボクは聞いたこともないので」

「そういえば、カルト組織ときいて引いたし、興味なかったから」

「その黒い手帳は魔道具なら、使って確認したほうがいいですよ。命にかかわることなら知るべきです」

「興味がないものは無頓着だから反省しないと。早めに確認するよ」

「カーラ様、守護勇者で思い出しましたよ。西辺境伯には守護の獣騎士の伝承があるらしいと」

「なんだか、毛深そうな騎士ね」


 オスカー君は噴き出した。


「どんなに騎士か知らないですけど西辺境伯を訪れることがあれば聞いてみるといいですよ」

「守護勇者と守護の獣騎士ね。確かに興味がわいてきたわ。情報ありがとう」


 私が礼を言っていると何者かが駆けてきて叫んだ。


「私も仲間に入れてよ。抜け駆けは許さない!」


 ビエレッテがジャンプしてこちらに飛んでくる。桟橋に着地した途端、足場が崩壊した。

 私は湖に転落。ビエレッテとオスカー君も水の中だ。


 私は泳げないのでオスカー君に力の限り抱き着いた。

 オスカー君はこともなげに私を抱えながら岸を目指して泳いでいる。


「アハハハ! 久しぶりの水泳、いいわね。それにオスカー役得よね!」

「冗談はほどほどに、カーラ様が怖がってるじゃないですか」

「いいじゃないの、人の距離はこういう時に縮むのよ。よく覚えておきなさい!」


 泳ぎながら早口でしゃべるビエレッテ。

 ほんと怖かったんだから……。


 岸に上って私はビエレッテに連れられて木陰で着替えをさせられることになる。


「貴方って着痩せするタイプね。こらこっち向く」

「ちょっと! どさくさに紛れてあっちこっち揉まないで」

「熟れ切る前の女体は好物なのよ。丁寧に拭いてあげるから」

「くすぐったいっ!」


 私はビエレッテの玩具にされ、双子が監視という名のお遊戯に励んでいた。

着替え終わった私は荷車の近くにいる上半身裸のオスカー君を見て鼻血が出た。


 それも盛大に。


 私はトリステの勧めもあり、鼻栓をしながらこっそり観察する。オスカー君は案外筋肉質で均整がとれている。肩幅広いし足はすらっと長い。

 熊伯とは違う彫像だった。

 間違いなく親子よね。疑って悪かったよ。


 後ろでビエレッテが大笑いして、仰向けに寝かせてくれる。


「とっても初心ね。おとなしくしてなさい。じゃあ、夕食の準備するから」


 ビエレッテは手を挙げて森の中に消えていった。双子は私の周りに寄ってきて心配そうにしている。

 私がのぼせただけといったけど意味が分からないらしい。


 ちょっと鼻血の理由を説明できないし。


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