第24話 シスターローズ
私たちは名の知れぬ者の眠る石棺の間に閉じ込められたようだ。フレイアは何を思ってこんなことをしたのだろう。
「フレイア! 貴方はなぜこんなことを? 出てきて説明して」
「ボクが誰だかわからないのかい? 間抜けだね」
実在感のない影が入り口の扉前に浮かび上がってくる。まるでホログラムのような姿。
影は形を鮮明にして分身フレイアが姿を現す。
「さて、種明かしをしようかな。創作忍法! 七変化!!」
冒険衣装から黒装束の黒マント姿に女は七変化? 魔法で着替えたみたいだ。
なんと無駄な女子力の高さ。
「ところで、あなた誰ですか?」
「ちょっと! 覚えてないの」
少女はプロレスラーのようにマントを投げ捨てた。
色白美少女なのに産毛のような頭髪。
無理して頭髪から視線を外すと忍び装束を颯爽と着こなしている。
もしかしてモデルなのかと、二度見してしまうほどの抜群プロポーション。
少女はクノイチ顔負けのエロ衣装。下着モデルのような妖艶さ。
頭髪さえ見なければ……。
「お坊さんですか?」
「拙者はメフューザスだ。このバカ!」
私は、なにそれ!状態に陥ってしまった。
「待ちくたびれたぞ。だから、はるばる町まで案内役として迎えに行ってやったんだから、ねっ!」
「なんで連れてきてくれたの? 町でさっくり殺せたでしょうに」
「ボクはこう見えて慎重なんだ! うっかりばれて、お仕置きされて死亡はやだよ」
「見かけによらないわね。頭薄いのに」
「おい、薄いっていうなよ。やっと生えてきたんだぞ!」
ホログラムに映りだされるメフューザスは怒りに任せて飛び跳ねている。
いつものやつね。
「そうだカーラ。お土産に石棺あげるよ。あとで開けてみな。さて、ボクはそろそろ退散する!」
「逃げるの!」
「残念ながら今のボクの実力では君の取り巻きを倒せない。極秘の修業で君たちに打ち勝つんだ!」
「あなた達も守護勇者連れてくればいいでしょ!」
「そんなのがいるのはね。お前だけだつうの。A級組合員の僕でも今まで一度も見たことがない」
「へ?」
「ほんとにナメクジ多いから。退散するぞ!!」
メフューザスはナメクジまみれで、高笑いしながら消え去った。
そういえば、かなり色白だったから初見の真っ黒女と同一人物とは思えなかったわ。
洗い落とすの苦労したでしょうね。
ちょっと笑えてきた。
それにしても閉じ込められたし、ナメクジがまた沸き始めている。
今度は通常版だけど。
扉を調べても外からしか開けることができず。よくあるゲームの転移陣なども存在しない。エリシャにお願いして壁の破壊を試みたが魔法や物理攻撃でどうにかできるような強度ではなかった。
はっきり言って詰んでいた。
最後の手段は例の石碑の前にある石棺である。
敵の罠の可能性が高く、できれば避けたいところであるが、他に脱出の手段がない。
このままいても飢え死にすることは目に見えている。
「あなた達、石棺を開けることにしたわ。何かいい方法はない?」
「魔法で壊す?」
「ちょっと物騒ね。他にはないかしら」
「……」
三人して首を傾げて悩み始めた。無い知恵絞っても妙案は浮かぶわけがない。
どう考えてもピンチ、まずいよね。
このとき、私はすっかり油断していた。
「キャッキャツ・キャ!」
「あ!」
私が振り向くと石棺を怪力ソフィーが開けたところだった。
「ちょっと! 何やってるのこっち来なさい!!」
石棺が開いて白煙が噴き出している。
反省を仕草で示しながらも、ソフィーは笑顔を張り付けたまま戻って来た。
いつかやると思っていたけどこんなところで……。
最悪よソフィー!
白煙が薄れてくると二人の人影が見えてきだした。
「まあ、皆様こんにちわ。わたくしたち待ちくたびれていたのよ。もう!」
「そうよー、石棺のなかで抱き合ってたの長かったしねー」
白煙が晴れると見たくない二人組が現れた。
女装をした大男と中性的な地味服の小男。
何者よ!
「あなた達は敵対者なのね?」
男たちは目をパチクリしながらナヨナヨと話し出す。特に大男が気持ち悪い。
「あたしたちはシスターローズよ! メフューザス様の右腕と左腕と呼ばれてるの」
「メフューザスの両腕って、もう本人じゃない!」
ハモってクネクネするのやめてほしい。
「あら凄いわ! いいとこに気づいたわね。可愛がってあげなくっちゃ。ねっ!」
「そう、ねー!」
ただのゲイボーイズで始終イチャイチャしている。そして社交ダンスのように絡みつき、果てにはアルゼンチンタンゴなのかと疑うぐらい密着して腰をくねらせる。
「溺愛よねっ」
「そう、溺愛よねー。あたしたち!」
怪しいおネエ様は叫びながら抱き着く。もう見ていられない。
「ところで何しに来たのかしら?」
シスターローズは二人して私の顔を見て歪に笑った。
「もちろん、この石棺に入ってもらうのよ。永遠におやすみなさい!」
二人はハモってこちらに向かって来る。
顔は真剣そのものだった。
「私たちの経験値となるといいわ! 死ね!!」
いきなり、投斧を取り出して投げてくる。
「姫様は守護勇者の私たちが守る。スキリアは攻撃!」
スキリアが小男の投げた斧をたたき落とし攻撃に向かう。エリシャは大男の斧をキャッチして、小男にむけて回転を加えながら投げつける。
小男は回避するが頬を切り、刈られた髪が斧と飛んでいく。
魔法を唱える大男。
「守護勇者って何よ! でも弱点はある」
シスターローズは魔法の武器合成をもちい、見事な連携で斧を作っては投げてくる。
狙いは私だ。
エリシャは盾や石壁などを駆使して防御を固める。
スキリアは大男にフェイントをかけては小男を付け回す。
シスターローズは体術で双子の攻撃をいなし、タイミングを計り斧を投げてくる。
スキリアは剣を振りぬくと見せて、手首を返して軌道を変える。
迫りくるスキリアの剣を回避した大男。
「そんな攻撃見切っているわっ!」
投げては回避されると理解した小男は、スキリアの間合いに入るため接近を開始する。
エリシャはクイックモーションで何かを飛ばした。
油断していた大男はエリシャの礫を喰らい仰け反る。
「うっ!」
足が止まった大男にスキリアが小魚を呼び出し凍らせてしまう。
大男は斧を振り上げたまま凍っていた。
魔法操作のため、スキリアの動きが一瞬止まる。
チャンスとばかりに小男が叫ぶ。
「隙ありよ!」
小男は隙ありとばかりにスキリアに迫るが、エリシャが炎の壁を設置して妨害。
「こざかしいわね!」
小男が回避した隙にエリシャとスキリアで凍結中の大男を焼き殺す。
「よくもやってくれたわね! 絶対許さない!!」
小男は私めがけて魔法を受けてもお構いなしに突進してくる。
エリシャが大きな石盾を地面に突き刺して構え、スキリアは剣をもって小男に体当たりする。
エリシャが私を突き飛ばして、石盾の形状がスパイク付きの盾に変化する。
私は後ろに転がって立ち上がった。
「なんでお前は、守護勇者に守られてる。チートだ!」
盾に貫かれた小男は残念そうに私を睨んで自爆する。楯のおかげで私は被害を免れることができたのだ。
双子は回避していたようで警戒しながら私のほうに駆けてきた。
我々はどうにかシスターローズを討ち取った。
それにしても、私の実力アップよりも敵のレベル上昇が早すぎる。
不安が加速的に増していく。
石棺を調べるとこの部屋の開放具が出てきて、古代霊廟から無事に脱出することができた。
疲れ果てた私は天を見上げる。
運だけが私を味方する。




