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第15話 マーメイド頬擦り

 朝になりマーメイドのことを思い出す。干からびていたらまずい。どこに置いてきたかしら。

 私は探し回るが思い出せない。

 スカートのポケットに入れたのは覚えているけど……。


「あーっ、洗濯されたかも!」

「何事ですかお嬢様」

「ちょうどよかったわ。昨日の探検服って洗濯に出したのかしら」

「皆様のものと一緒に洗濯婦が洗っているはずですが。なにかお困りのことでも?」

「あわわわ」


 私は下着姿で駆け出して洗濯婦のいる洗い場を目指す。

 エレナも焦ってついてくる。


 洗濯婦たちは水場で作業していて、外れにポツンと不自然に泡立つバケツみたいな桶。


 洗い桶をのぞくと泡だらけの小魚。


「見つけた。やっぱりね」


 私は迷子のマーメイドの尻尾をつまんで傍にあった水で洗い流して様子をうかがう。


「キャッキャツ・キャ!」

「こら、暴れないの……死んでなくてよかったけど。あなた大丈夫なの?」

「ムー」

「この子と会話できるのかしら?」

「キャッキャツ・キャ!」

「喜んでるのはわかるけど、会話は無理そうね……」

「キャツ・キャ!」


 コミュニケーションは諦めて部屋に戻った私は、とりあえずエレナにガラスのボウルを持ってこさせることにした。マーメイドは陸でも問題なさそうに感じるが、用心して水槽みたいな金魚鉢を用意することにしたのだ。


 ボウルに入れたマーメイドは外に出たいようで、ガラス壁を登ろうとしてはずり落ちる。

 落ちては上がり、また落ちて溺れかける。

 息できるのになぜ!


 マーメイドをしげしげと観察すると上半身は3歳児くらい成長していて……ぷにぷにして気持ちいい。下半身は魚で不健康な青白さ。青い髪をおさげにして、なんとも可愛らしいが、サイズは掌より少し大きいくらい。


 小さすぎるでしょ。




 朝食後の散歩でお魚をぶら下げて歩いていると庭園の池が見えてきた。マーメイドがジタバタするのでなんだろうと池を見ていると、手足の回復した水龍が頭をもたげて現れる。

 そういえばお持ち帰りしたことを忘れていた。

 なんか小さくない?

 ペットに相応しいサイズになっていることを後でエリシャに問いたださないといけない。


 それにしても、水龍とマーメイドは険悪な雰囲気だ。

 一緒に連れ歩くのは無理かも。


 水龍は池の主のように我が物顔で泳いでいる。戦力として使えそうだけど、これでも大きすぎるよね。

 私が思案していると水龍が寄ってきて私を見つめて震えだす。


 なによ? どうしたの。


 あっという間に水龍はマーメイドと同じサイズに縮んでしまう。なるほど、サイズの謎は解けた。

 納得していると、水龍とマーメイドが戯れている。

 微笑ましいというより殺気だってるぞ。


 なんとなく水龍はマーメイドと張り合っているように感じる。

 一緒に冒険したいのかもしれない。




 朝からドタバタしたこともあり疲れは溜まる一方、どうしたものかと思っているとローラが手紙を持ってやってきた。受け取って確認すると辺境伯家のオスカー君からだった。はて、心当たりはまったくない謎の手紙。私は躊躇せず開けてみた。


 手紙の内容は父親の辺境伯のお供として王都に来たのでお礼を渡したいそうだ。断る理由もないので了承する手紙を書いてローラに渡した。


 まあ、田舎土産だろうから期待はしてない。魔物の干物、不気味な珍味、泥だらけの野菜や手榴弾のような果物ってところだろう。


 トリステの土産がだいたいそんな感じ。


 そういえばもうすぐ収穫祭が開催される時期だ。タイミングが合えばオスカー君、トリステ、双子と小魚を連れなってお祭りを見に行ってもいいかも。トリステ以外は初めてだろうし。


 祭りの起源を思い出そうとするが、高位令嬢にありがちな興味のないことは綺麗さっぱり忘れていた。たしか、昔は夜に松明を投げ合っていた野蛮な祭りから、赤の花束を窓から投げるようになった収穫祭。もともと何の収穫を祝っていたのか謎ながら、今は恋する者たちの行事に様変わりしている。


 蛮族の火祭りから恋のさや当て収穫祭。恋の焔が燃え上がる?

 笑ってしまうよ。




 時は流れて今日は収穫祭の前日なり、日が暮れるころから前夜祭が開催される。まあ、今日がメインみたいなもので、日本のクリスマスイブと同じかんじでラバーズは盛り上がる日でもある。私には関係ないけど。


 私はいつもより少しおめかしして、ソワソワ落ち着かずマーメイドのマッサージをしている。いや、気持ちいからやっているだけでマッサージでもないけど、マーメイドが喜ぶからやめられない。気持ちいいよね?


 マーメイドの気持ちは知らないけど……やめたくない。

 止めないんだから。


 すべてを忘れてマーメイドに頬擦りしていた私はローラに現実に戻されてしまった。オスカー君が到着して迎賓用の小部屋に通されたらしい。小さい部屋といってもだだっ広いのだけど。


 興味津々で私を見つめるユリアにマーメイドを手渡して世話を頼むことにした。


 部屋を出ようとしてちょっと振り向くと、ユリアもマーメイド頬擦りを楽しんでいる。



 微笑ましいけど気にせず行こう。

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