第95話 ミリア・ハイルデートはミリアである16
私はおばちゃんが持ってきてくれた、お見舞いの品の中にあったお米を使って、お粥を作る事にした。
お米を研いだら、お鍋の中に、お水と一緒に入れて──〝赤の結晶〟で加熱していけば完成する、お母さんに教わったお米を使った料理だ。
コトコトコトコト。
出来上がるまでの待ち時間に、これもおばちゃんからのお見舞いの品であるリンゴの皮を剥く。
剥き方は、お母さんに教わったウサギ剥きだ。
コトコトコトコト。
「もう少しかな?」
まだ、お粥は時間がかかりそうなので、ミリアはそれまでの間に、お粥を装うお皿を用意する。
ミリアとミトリ、そしてトアへのお供えの分だ。
父親が亡くなってから、毎日ミリアは晩御飯を小皿に少しだけ盛り、トアのお墓にお供えをしている。
ちなみに、何故晩御飯なのかと言うと……
『死んじゃった人は、何か、朝とか、お昼とか苦手そうだから、夜の晩御飯が一番いいかなって思って……』
という、6歳のミリアの豊かな提案からである。
コトコトコトコト。
(あと、ちょっとかな?)
ミリアは、料理中の待ち時間が嫌いじゃ無い。
むしろ、このコトコトする音は聞いていると、何だか心地が良くなって来るので、この音は大好きだ。
『でも、煮過ぎ、焼き過ぎ、炒め過ぎ等は注意しなさい。料理は美味しく作るのが基本よ』と、ミトリから教わっているので、ミリアは鑑賞も程々にする。
「あ、これぐらい!」
ミリアはピタッと火を止める。
そして、後は塩を振ればお粥の完成だ。
ちなみにお粥は多めに作ってあるので、ミリア自身の分もちゃんとある。勿論、リンゴも完備だ。
お供えの分のお粥を先に供えた後──
ミリアは、ミトリの分と自分の分のお粥も器に装い、ミトリの寝ている寝室へとミリアは食事を運ぶ。
「──お母さん、食事だよ。食べれる?」
寝ているミトリの体を軽く揺らして起こす。
体に触れてみると、大分まだ熱があるようだ。
「……ん……ミリア……食事……?」
ミリアに優しく起こされたミトリは、まだ具合悪そうに、ゆっくりと目を開ける。
「うん。おばちゃんがお米とか持ってきてくれたから、お粥とリンゴ持ってきたよ。一緒に食べよ?」
「……そうだったのね……ありがとう……いただくわ」
ミトリは体をゆっくりと起こし、ミリアから食事を受け取ると、とても嬉しそうに微笑む。
「凄いわ……ミリア、とっても美味しそう……」
「ほんと! ──よかった。召し上がれ」
そんなミトリの反応にミリアも嬉しそうだ。
そしてミリアもベッドの横の椅子に座り、2人で──〝いただきます〟をして食事を取る。
「お母さん。後ね、おばちゃんがお団子もいっぱい持ってきてくれたんだけど……」
そして食事の途中、ミリアは食べる手を少し止め、先のお団子の件を、恐る恐る話し始める──
「ご……ごめんなさい! わ、私、気づいたら、お団子全部食べちゃった! その、お供えの分も全部……!」
顔を真っ赤にして、ミトリに正直に謝る。
「──!」
突然の娘の告白に、ミトリもお粥を食べる手を止め、僅かに目を見開き──
「……ふふ。それは本当にいっぱい食べたみたいね? でも、おばさんは喜ぶわね! 美味しかった?」
そして、直ぐにミトリはクスクスと熱も忘れて楽しそうに笑い始める。
「うん……美味しかった……」
そんな素直なミリアの姿を見てミトリはまた笑う。
「そう──じゃあ、私の熱が下がったら、おばさんにお見舞いのお礼を言いながら、トアの分のお団子を買いに街まで行きましょ?」
再びお粥を口に運びながら、ミトリは楽しそうにミリアに微笑み掛ける。
「う、うん! 行きたい!」
コクコクと頷くミリア。
「ふふ。じゃあ、私は早く具合を治さないと、ミリアにもトアにも怒られちゃうわね……」
これまた楽しそうに微笑みながら、ミトリはウサギの形に切られたリンゴを自分の口へと運ぶ。
──そして食事が終わると、お母さんはポーションを飲んで、また寝てしまった。
それと私が軽い〝魔力枯渇〟を起こした事を伝えると、かなり真剣に、そして心配そうに叱られ──『今度、もっと厳しく特訓とお勉強ね』と言われた後に、最後にはコツンと優しい拳骨と、この件のお許しの撫で撫でを貰った。
体調が悪い中、泣きそうなまでに私の心配をしてくれるお母さんの姿を見ると、ズキンッと胸が痛んだ。
(……もっと、魔法が上手くなりたい……)
お母さんに心配をかけず、お母さんの助けになる──そして、いつかお母さんの病気を治したい。
お父さんは昔、お母さんの病気は治ると言っていた。それならば何かしらの方法が必ずある筈だ。
〝お母さんの病気を治す〟
でも、これは半分以上が、私自身の為だ。
私がお母さんと一緒に居たいから。
もう、お父さんみたいな急なお別れは嫌だから。
そんな思いを──私が明確に胸に抱き始めたのは、確かこの日からだったと思う。
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