表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/858

第84話 ミリア・ハイルデートはミリアである5



「ミトリさん。俺達から説明を……」


 トアの冒険者仲間の1人がミトリに話しかける。


「簡潔に聞かせてちょうだい。トアを殺して、()()を抜き去ったって事は──〝()()()()〟の仕業ね?」

「……はい。俺達が、いつも通り、魔物を倒したり、動物を狩ったりした依頼の帰りです。突如、現れた〝魔王信仰〟の()()により2名が負傷しました。その後、俺達も応戦したのですが、向こうの人数は20名を越えていました。対するこちらは10名。しかも、相手には手練れも多く……俺達は負傷した仲間を担いで逃げるのが精一杯でした」


 そう話す、この男性も大分怪我を負っており、話の所々で、苦痛により顔を(ゆが)ませている。


「でも、トアは『このまま逃げても、追い付かれる。それに街にコイツらを連れてくわけに行かない。私が残るから援軍を呼んできてくれ』と言ったのですが、俺達も、その場にトアだけを残していくわけにいきませんから──最終的には、負傷者2人と付き添い3人を街へ救援を呼びに行かせ、そしてトアを含む5人が()()()にその場に残り〝魔王信仰〟と戦いました」


「……続けてもらえる?」


 ミトリは歯軋りしながら、その話を聞いている。


「街に救援を呼びに行く途中で、別の冒険者パーティーと遭遇しました。それがそちらにいるラックさん達です。俺達より規模の大きなパーティーの方々なので、俺は街に戻るよりも()()と考えて、直ぐにラックさんに救援を求めました」


「横からすまない。俺が、今紹介のあったラックだ。トアさんとは別の冒険者パーティーのリーダーをやっている。救援要請を受けた俺達は直ぐに現場に向かったんだが……俺達が到着した頃には──既に、残ったトアさんを含む5人は()()だった。そして、その5人全員が()()を抜かれていた……」


 そう話しながら、ラックは横たわる、亡くなった冒険者達の遺体に視線を落とす。


 トアの他に、亡くなった冒険者達の周りには、その家族達が、悲痛な声を上げて叫んでいる。


「今、俺の仲間が〝エルクステン〟のギルドへ〝魔王信仰〟の出現情報と共に、ギルドの騎士隊に援軍要請を頼んでいる。この〝ルスサルペの街〟には、今は()()()の者がいないからな〝精神疎通(テレパス)〟で、すぐに救援を呼ぶ事もできない」

「……そう。それだけ聞ければ十分だわ。ありがとうございました」


 ミトリはトアの遺体を抱き締め「少しだけ待っててね」と呟き、顔と胴体に布を掛け直すと、怒りと悲しみで、最早、表情の消えた顔で体を(ひるがえ)す。


「み、ミトリさん、どちらに! 危ないから街に残っていた方がッ!」

「心配は無用よ。少しだけトアをお願いできる?」


 そう言うとミトリはミリアの方に歩き出す。


「──お、お母さんッ! お、お父さんはッ!?」


 がしッとミリアが抱きついてくる。


 ミトリはミリアを優しく抱き締め、ゆっくり喋る。


「ミリア、話しがあるの。とっても大事なお話よ。でも、もう少しだけ待っててくれるかしら? すぐに戻って来るから」


「み、ミトリちゃん……」


 すると、おばさんが話しかけてくる。(ひたい)には汗がびっしょりだ。よほど心配してくれたのだろう。


「おばさん。もう少しだけ、ミリアをお願いできますか? ()()()()()()()──」


 この時。初めて、ミリアも、団子屋のおばさんも、ミトリのこんな()()ような冷たい声を聞いた。


「ミトリちゃん。貴方、まさか……いえ……私じゃミトリちゃんを止められないわね。分かったわ。ミリアちゃんは私が責任持って見てるわ──でも、()()無事に帰ってきなさい。いいわね? もう貴方の命は貴方だけの物じゃないのよ」


「お、お母さん、何処か行くの? なら、私も行く! 危ない所? 私もお母さんに教わった魔法なら使えるよ! 私も連れてって!」

「ごめんね。それは()()なの。ミリアは連れてけないわ。でも、必ず直ぐに帰ってくるから。お願い……今は我慢してくれる?」


 ぎゅっとミトリはミリアを更に抱き締める。


「……っ」


 その言葉にミリアは衝撃を受ける。今まで、ミトリがミリアのお願いを、こんな風に()()()()と断った事は一度もない。


「……どれぐらい? どれぐらいで帰って来る?」


 寂しげな顔でミリアが問いかける。

 その目にはうっすらと涙も浮かんでいる。


「そうね。1時間以内には帰ってくるわ」

「分かった。約束だよ?」


 小さな手でミリアが小指を向けてくる。


「ええ、約束よ」


 その手にミトリは自身の小指を優しく絡ませる。


「じゃあ、ミリアちゃんは、おばさんのお団子屋で待ってましょうね? ミトリちゃん、呉々(くれぐれ)も気をつけるのよ?」

「ええ。おばさん、ありがとう」


 お礼を言うとミトリは自身の足に()()を込め、

 空気を()()()()、空を駆け上がっていく──!


「──タケシ! 力を貸してちょうだい!」


 そうミトリが叫ぶと、湖の方角から〝空竜〟の〝変異種(ヴァルタリス)〟である、青い鱗と青い翼を持った()()()が、まるで、その言葉を待っていたかのように「ガウッ!」と直ぐに現れ、その背にミトリが乗る。


「このまま、西に向かってちょうだい! トアの心臓を取り返しに行くわ。送迎を頼めるかしら?」

 と、ミトリがタケシに問いかけると、

「ガウッ!!」

 力強い返事が帰ってくる。


 そして次にゆっくりと目を閉じて……

 ミトリはスキル──〝()()〟を使う。


 ──探索系の高位スキルだ。

 これで〝魔王信仰〟の居場所を探る。


 今のミトリには、手に取るように、ここら一帯の、人も、魔物も、動物も、そして()()()()といった、あらゆる物の全ての情報が、頭の中へ流れ込んで来る。その情報を()にして、怪しい場所をしらみ潰しにして、更に細かくミトリは居場所を探る。


(これも違う……これは魔物ね……)


(これは()かしら? でも、単独。奴等じゃない)


(ここは何かしら……結界? その中に人が隠れてわね……数は10……20……30……それに嫌な気配がする──見つけた! 聞いてた数よりも、少し人数が多いけど、これが〝魔王信仰〟の奴等で間違いないわ!)


「──タケシ! 見つけたわ! あの山の上よ! 正面突破で行くわ! 思いっきり突っ込みなさいッ!」




 ★★★★★★作者からのお願い★★★★★★


 作品を読んで下さり本当にありがとうございます!


・面白い

・続きが気になる

・異世界が好きだ


 などと少しでも思って下さった方は、画面下の☆☆☆☆☆から評価やブックマークを下さると凄く嬉しいです!

 (また、既に評価、ブックマーク、感想をいただいてる皆様、本当にありがとうございます! 大変、励みになっております!)


 ★5つだと泣いて喜びますが、勿論感じた評価で大丈夫です!


 長々と失礼しました!

 何卒よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ