第837話 シンカ村
*
翌日、朝からカレーを食べ、次の街を目指す。
「カレー美味しかったね!」
「はい、何か昨日よりも美味しかった気がします」
「お、分かるか? 桜はグルメだな」
そんな会話をしながら俺達は歩を進める。
「早ければ午後にでも〝シンカ村〟に着くよ」
「そうか。でも、村なんだな。人口少ないのか」
まあ、でも異世界の村だ。楽しみだな。
*
クレハの言うとおり午後には目的の村に着いた。
「思ったより広いな〝ルスサルペの街〟ぐらいあるんじゃないか?」
入り口には見張りが二人ほどいた。
「止まれ。見ない顔だが、冒険者か?」
「まあ、そんな所だ」
と、するとだ。もう一人の見張りが俺を見て顔を青ざめさせる。
「ひ、稗月倖真!?」
やべ、バレた。何でだ?
「ユキマサ君、フード、フード!」
あ、イケね。フード付きマント被り忘れてたよ! 指名手配犯が顔むき出しで何やってんだバカ、俺。
「ひぃぃぃ、すいません。すいません。私には年老いた孫と5人の母が……どうか命だけは」
「居て堪るか! 怖ぇよ異世界!」
「ユキマサ君、異世界は関係ないよぅ!」
悲痛なクレハの叫びが近くに響いた。
「一つ言っておくが、俺達はこの村に一切危害を加えるつもりは無い」
もうバレてるので素顔で俺は告げる。
ちなみに俺の言葉に見張りは半信半疑と言った様子だ。まあ、予想どおりだ。
「はぁ……ならイイですが……どうぞ、お通り下さい」
「イイのかよ!? まあ、助かるが。お邪魔するぜ」
というワケで無事〝シンカ村〟に入る。
*
「思ったより優しそうだったな稗月倖真」
「な。あ、でも一応あの方に報告しておくか。今丁度帰省してるだろ」
「そうだな。その方が安心だ」
*
「ここが〝シンカ村〟か。何か村感はあんまりないな」
さっきも思ったが〝ルスサルペの街〟ぐらいあり、村中は賑わっている。
少し進むと大きな建物が見えた。
他でもない〝ギルド〟だ。もうさっきバレたので素顔のままギルドに入ると視線が俺に集まる。
「こ、これはこれは稗月倖真様。こんな辺鄙な村に何かご用ですかな……」
恐る恐ると言った様子で、このギルドのギルドマスターだろうか、初老の中年太りの男性が話しかけて来る。
「ああ、驚かして悪いな。別に何か用と言うワケじゃないんだ」
するとドバン! と、ギルドにあったテーブルを蹴飛ばす男がいる。
年は40代前後で青紫の鎧を纏い。長い長髪を一本結びで束ねている。
酷く酒に酔った様子でその鋭い目付きの視線の先は俺だ。
早速、目だっちまったよ……
フード付きマントは必須アイテムだな。
流石だよ、アルテナ。
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