第797話 忘れない
現在〝アーデルハイト王国〟寝室前廊下
「う、寝ちまったか……」
時計を見るともう午前三ノ刻を過ぎた所だ。
流石に部屋の中のクレハたちも寝ているらしく小さく寝息が聞こえる。
(何だか懐かしい夢を見ていた気がするな)
夢で会えたら何て素敵なことを言うわけじゃないが、夢で会えたな。婆ちゃん、母さん、親父。
『胸張って生きろよ!』
親父、俺異世界で賞金首になっちまったけど、その言葉は忘れてないぜ。
これからも絶対に忘れない。
すると誰かがこちらに歩いてくる気配がある。この気配、カタギじゃねぇな。俺じゃなきゃ気づかなかっただろう。
で、誰だ……って!?
「ここに居ったか主様よ」
「黒芒か気配を消して来るなよ。敵かと思ったろ」
「やはり主様には気づかれたか。そこそこ自信があったんじゃがのう」
「フィップはどうした? 一緒に飲んでたんじゃないのか?」
「精神的に疲労が溜まってたんじゃろう。十杯目で寝落ちした」
精神的なものは俺の〝回復魔法〟でも、回復できないからな。今回の魔王襲撃は相当堪えたんだろう。それでも十杯飲んだんだなあいつ……
「で、黒芒も寝に来たのか。影なら空いてるぞ」
「主様が寝てれば妾も寝るつもりじゃったが、起きてるなら一杯付きおうてくれ」
「まあ、夜はまだ長いしな。いいぞ」
俺がそう言うと嬉しそうな顔をして「♪」と、俺の隣に座ってきた。
既に片手に酒ビンと杯を持っている黒芒に合わせ、俺も〝アイテムストレージ〟から杯を取り出すと、黒芒が美人顔で尺をしてくれる。
「ここは良い国じゃのう」
「そうだな。トップが良いからだろ」
そう言いながら俺は酒を口に運ぶ。
「いつの世も善と悪は存在するもんじゃ」
そしていつも善人は損をする。と、黒芒は続けた。
「主様も損な性格じゃの」
「生憎、損得勘定で動くほど酔狂じゃない」
「そう言うところが酔狂と言うもんじゃ」
黒芒も酒を口に運ぶ。
その後もポツポツと会話をしながら気づくと朝まで飲んでいた。
黒芒って話しやすいんだよな。クレハとは別のベクトルで。
朝日に照らされ目を覚ますと、肩に毛布が掛けられていた。クレハはまだ寝てるようだし黒芒か。当の本人は俺の影の中でぐっすりだが。
「あ、ユキマサ君、おはよう!」
「クレハか、よく寝れたか?」
「うん、お陰でぐっすり。ちなみにアリスちゃんと桜ちゃんはまだ寝てるよ」
「そうか、寝かしといてやれ。疲れてるだろ」
アリスは気づかれ、桜も旅の疲れがあるだろうしな寝れる時は寝かしといてやろう。
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