第796話 稗月ノ眠リ唄16
*
「木枯、ユキマサ、理沙、こっちじゃこっち!」
短冊を六枚持った爺ちゃんたちが、キッチンカーのフードスペースから戻った俺たちに声をかける。
「おかーさん! お婆ちゃん」
理沙が母さんと婆ちゃんにボフッと抱きつく。
「理沙ちゃん、おかえり。何か食べた?」
「うん! おとーさんとラーメン半分こした」
「それは良かったわね。あ、理沙ちゃん短冊、お願い事を書きましょ?」
「うん! 書く!」
ほれと爺ちゃんが1枚短冊を渡す。
「ユキマサも書け。縁起もんじゃ」
「はいよ」
とは言え、何を書くか。普通の小学生ならゲーム機が欲しいとか書くんだろうが、生憎ゲーム機は欲しくない。親父は欲しがりそうだが。
まあ、家内安全とかでいいか。
今が幸せだよ。俺はさ。
爺ちゃん、婆ちゃん、親父、母さん、理沙もマジックでお願い事を書いていく。
「おかーさん、書けた!」
「偉いわ、でもね、お願い事は人に見せちゃダメなのよ」
「そうなの?」
「うん。でも書けたのはおとーさんに渡して高いところに飾ってもらいましょ。あなたー!」
「吹雪と理沙とユキマサも書けたか。親父とお袋のはもう預かった!」
そう言う親父に短冊を渡す。
「おし、一番目立つ所に飾ってくるぜ」
意気込む親父はさっさかと短冊を飾りに行く。
「飾ってきたぜ。言葉は違えど願いは一緒さ」
「何だ親父。短冊見たのか?」
「なあに、見なくても分かるさ」
親父は明るく笑ってそう言った。
*
今日は俺たち祭り大好き家族にしては早めの帰宅だった。
晩飯はファミレスで済ませた。理沙がチーズハンバーグに感激してたのを覚えている。気に入ったのかな? チーズ。
家に帰ると母さんと理沙が風呂に入った。
その間に親父が俺を「ユキマサ、コンビニ行くから付き合え」と、誘ってきた。
コンビニでアイスを人数分買って帰る。
「ユキマサ、好きな人は出来たか?」
ぶっ! 帰り道で唐突に投げかけられた質問に俺は吹き出す。
「いねぇよ! つーか、よく分からないんだよ。そう言うの。苦手分野なんだ」
「いいか? ユキマサ……男ってのはいつか必ず大切なものを守りたい、この人と一緒にいたいって時が来る。それは1年後かもしれないし、10年、20年先かもしれない。まあ、まだ良く分からないだろうがでもその時まで──胸張って生きろよ!」
親父はくしゃくしゃと何がそんなに嬉しいのか満面な笑みで俺の頭を撫でて来た。
少し恥ずかしかったが、嬉しかった。
そんな大好きな親父の笑顔を俺は今でも鮮明に覚えている。
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