第786話 稗月ノ眠リ唄6
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公園はいつもと違い、人がたくさん集まっていた。
場所もいつもと雰囲気がまるで違う。
盆踊りの会場のようになった公園には矢倉が立ち、紅白の暗幕に彩られたステージ何かもある。
他には金魚すくい、ゲーム機の並ぶくじ引き屋、わたあめ等もあった。
そして白テントの張られた一角に〝出張版和菓子屋・稗月〟が店を展開する。お隣は子供用プールに氷を入れて冷したジュースや缶ビールを売っている活気のあるおじさんがいた。てか、売り物のビール飲んでるし。さっそく酔っぱらいが一人いるよ。
饅頭、栗モナカ、どらやきと言った家の看板商品たちをテキパキと並べていく。
祭りとかだとお祭り価格で値段を吊り上げる店もあるが、家の店はそんなことはしない。
饅頭が100円、栗モナカが150円、どらやきが200円~種類により350円と通常価格だ。
「栗モナカ1つ」
「いらっしゃい……って、牧野じゃねぇか。来てたのか?」
こんな場所でもスーツに身を包んだ、紫髪のアシメヘヤーの女性、牧野がそこにいた。
「このイベントのスポンサーは家の会社だ。来て当たり前だろ?」
「え、そうなの? 150円」
財布から出すこともなく、あらかじめ手に用意していたと思われる150円をピッタリと渡して来る牧野。
「ま、楽しんでいけ。何なら今からステージの出し物に参加してもいいぞ?」
「止めとくよ。人様に見せれる特技も無いしな」
「ふふ、それは残念。お前なら瓦割りとかでギネスに載れるだろうに。存在自体が特技だろお前は」
嬉しそうに栗モナカを食べながら牧野は言った。
そんな牧野の背中を見送ると家の出店の前には少しばかりの人だかりが出来ていた。
「饅頭1つ」
「饅頭と栗モナカを2つずつ」
「どらやき全種類ください」
「お兄さん、カッコいいですね!」
次々と注文の来る中、女子高生がうちの親父にときめいている。親父は実の子供の俺から見てもイケメンだからなぁ。
「おっ、嬉しいこと言ってくれるね」
「あ、あの携帯の番号とか教えてもらえませんか!」
この期を逃すことはないとばかりに、女子高生が親父の電話番号を聞く。逆ナンだろこれ。
「携帯の番号か、って、痛っ!」
「ごめんなさいね。夫は仕事中なの」
ぐりぐりと親父の足を潰しながら母さんが答えた。母さん嫉妬深いからなぁ。
「ご、ごめんなさい。奥さん居たんですね……」
涙声の女子高生は母さんの覇気に当てられ、その場をそそくさと去っていった。
「おい、吹雪。そろそろ足を……」
「つーん、女子高生に鼻の下を伸ばしてる人なんて知りません」
言い訳をしなかっただけ親父は立派だろう。
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